The Place

自分の言葉で、ゆっくり語ること

観察

2009-09-10 01:12:26 | 日記
「ホームズ、君の推理は複雑そうに見えて、実はいつも単純だ。それなら僕にもできそうだと思うけど、いざやってみると難しい。これはどういうことだろう?」ワトソンは、ホームズに尋ねる。

「君は、うちの階段が何段あるか、知っているかい?」と、ホームズ。

「え?えっと・・・」

「僕はちゃんと知っているよ。17段さ。ワトソン、君は、うちの階段を何千回と登っているけど、ただ見ていただけで、観察していなかったんだ。見ることと観察することは、違うんだよ」



「シャーロック・ホームズの冒険」の一節である。

僕は、今朝、千葉に向かう電車の中で、この一節を思い出していた。

長旅の退屈しのぎに、向かいに座っている乗客の人間観察をしていたのだ。

他愛のない遊び。


向いの席には、大柄な白人男性が座っていた。

膝の上に乗せたノートパソコン(IBM)のキーボードを、すごい勢いで叩いている。

すばやい指の動きの割にブラインドタッチはできないらしく、ときおり手元を見ている。

口にはマスクをして、いかにも体調が悪そうな顔色をしている。

結婚指輪は、右手の薬指にはめられている。

白いワイシャツを着ている。シャツはシワだらけ。

くたびれた黒い皮靴を履いている。

これらの条件から推理できる人物像はどんなものか?


1、結婚後かなり経っている(痩せたか太ったかして、左手の薬指に指輪が合わなくなった)

2、奥さんは服装に無頓着である。もしくは、家事をしている暇がない(アイロンをかけたり、靴を磨いたりできない)

3、本人は、他の人では代わりがきかないような仕事をしている(そうでなければ、病気なのに電車の中でノートパソコンまで持ち出して仕事をしない)

4、一定の責任感をもった性格である(苦手なパソコンを一生懸命叩いている)



人物象の核心には迫れてないけど、少しはその人が分かったような気がする。

少なくとも、ぼーっと眺めているよりはね。

観察すること、そして、ちょっとだけ想像力を膨らませること。

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