
Story
ニューヨークでストリップダンサーをしながら暮らすロシア系アメリカ人のアニーことアノーラ(マイキー・マディソン)は、職場のクラブでロシア人の御曹司イヴァン(マーク・エイデルシュテイン)と出会い、彼がロシアに帰るまでの7日間、1万5000ドルの報酬で「契約彼女」になる。パーティにショッピングにと贅沢三昧の日々を過ごした2人は、休暇の締めくくりにラスベガスの教会で衝動的に結婚する。幸せ絶頂の2人だったが、ロシアにいるイヴァンの両親は、息子が娼婦と結婚したとの噂を聞いて猛反発し、結婚を阻止すべく、屈強な男たちを2人のもとへ送り込んでくる。ほどなくして、イヴァンの両親もロシアから到着するが……。(映画.comより)
2024年/アメリカ/ショーン・ベイカー監督作品

評価 ★★★★☆
アノーラがキャーキャー騒ぐだけの騒々しい映画だと思って気が進まずに観に行ったのですが、意外に深い内容でアカデミー賞をとったのも頷きでした。
全体的なお話の流れはnyancoが書いてるので、私は脚本的によく出来てるところをピックアップしてみました。
映画の開始早々、かなりエッチなストリップシーンが映されて、舞台で踊った後はお客一人一人に声をかけ、個室に誘って特別サービス、といった彼女たちの生態が丹念に描かれてました。そこで出会った富豪の道楽息子に気に入られてパーティー三昧の生活をして、ベガスで騒いだ勢いで結婚まで突入するのですが、結局は個室サービスの延長線の生活でしかなかったのですね。冒頭のアノーラのお仕事の描写が活かされてました。やはり、そんな薔薇色の生活の夢はバカ息子の気まぐれであえなく潰えてしまうのでした。
失踪したバカ息子を探すドタバタ劇がちょっと長すぎるのは困りましたが、息子が逃げ込んだストリップ劇場で、個室のドアが次々と開け放たれるのは(お客は迷惑ですが)、狭い世界に閉じこもっていたアノーラの解放を暗示しているようで、息子もクズなりに役目があったということですね。
そして一転してシリアスになる終盤は脚本の秀逸さが効いてきます。大富豪の用心棒のイゴールがアノーラに好意を抱いているのは前々からほのめかされていました。豪邸での最後の夜を一緒に過ごしている時、そんな彼がボソッと「昨日は俺の誕生日だった」と言うのですが、誕生日というキーワードは、過去の名作映画でも主人公の再生を促す時によく使われてました。
その後、離婚処理なんかが全て片付いて、イゴールがアノーラをアパートに送る場面。アパート前に車を停めてもアノーラが降りようとしない。アパートにルームメイトが居るからというのもありますが、彼女が心を開きつつあるのを感じさせます。
この後、車の中でのラブシーンになるのですが、ここは映画冒頭の個室ストリップと対になった構成ですね。雪が降りしきり、みるみる車が雪に覆われていく中、イゴールに拒絶されたアノーラが泣き崩れる場面で映画は終わります。
このシーンでずっとワイパーの音が耳障りだったのが気になったのですが、これはきっと雪に閉じ込められた閉塞感の中でも前方の視界は開けていることを表しているんですね。一見救いようのない終わり方ですが、愛することの本当の痛みを知ったアノーラに対する優しい眼差しが感じられるエンディングでした。
無駄に長いところもありましたが、2時間20分を一気に見せる力技はお見事だと思います。

評価 ★★★★☆
この映画はストリップダンサーのヒロインが主役なので、お色気シーンが満載の刺激の強い作品のせいか、カップルや家族連れは観に行きづらいのかな?アカデミー賞をとった割には思ったより上映館や上映数が少なくて、上映が終わらないうちに急いで観に行ってきました。
内容はというと、物語の前半はストリップダンサーのアノーラがロシアの大富豪の息子と知り合って、夢のような生活を送り、勢いで結婚してしまうシンデレラストーリーのような描かれ方をしていますが、ロシアの大富豪の両親に2人の結婚がバレて、結婚を阻止しようと大富豪の手下の男たちが送り込まれると、後半は一転して、逃げた大富豪のバカ息子を捜すドタバタ珍道劇に変わってしまうんですね。同じ映画なのに物語の前半と後半では作品のティストが全く変わってしまうのが面白かったです。
最初はお金目当てで恋人役を引き受けたアノーラも、ロマンチックなプロポーズに情を絆されてしまったのか、娼婦のような自分の立場も忘れて、玉の輿の結婚に夢見てしまうところが純真な乙女という一面もあって可愛かったです。
また、結婚を阻止しようとチンピラのような男たちに襲われそうになっても、絶対に離婚しないと自分の意志を曲げないところに、プライドを持った戦うヒロインという感じで好感が持てました。ただ、自分で幸せになる努力をしないで、男の人に養ってもらって幸せになろうとするところは、やはり女性から見て応援はできても共感はできないかな。
大富豪の手下の男たちの一人がバカ息子に振り回された可哀想なアノーラに同情して、色々と助けてくれるようになり、最後には味方になってくれるのですが、この彼とアノーラのやり取りがとても素敵でした。
詳しくはwancoが書いているので割愛しますが、この最後のやり取りのシーンがアノーラの本当の心情を表現しており、アノーラが本当に欲しかったものが理解できるようになっていて、この作品に深みを与えていたように思います。
娼婦と大富豪の恋愛を描いたジュリア・ロバーツのプリティウーマンに比べると、この映画はシンデレラストーリーのその後が描かれていて、夢も希望もないところがとてもリアルで現代的な感じがしました。
映画『ANORA アノーラ』公式サイト
(「ANORA アノーラ」2025年 3月 kino cinéma立川髙島屋S.C.館 にて鑑賞。)
ニューヨークでストリップダンサーをしながら暮らすロシア系アメリカ人のアニーことアノーラ(マイキー・マディソン)は、職場のクラブでロシア人の御曹司イヴァン(マーク・エイデルシュテイン)と出会い、彼がロシアに帰るまでの7日間、1万5000ドルの報酬で「契約彼女」になる。パーティにショッピングにと贅沢三昧の日々を過ごした2人は、休暇の締めくくりにラスベガスの教会で衝動的に結婚する。幸せ絶頂の2人だったが、ロシアにいるイヴァンの両親は、息子が娼婦と結婚したとの噂を聞いて猛反発し、結婚を阻止すべく、屈強な男たちを2人のもとへ送り込んでくる。ほどなくして、イヴァンの両親もロシアから到着するが……。(映画.comより)
2024年/アメリカ/ショーン・ベイカー監督作品

評価 ★★★★☆
アノーラがキャーキャー騒ぐだけの騒々しい映画だと思って気が進まずに観に行ったのですが、意外に深い内容でアカデミー賞をとったのも頷きでした。
全体的なお話の流れはnyancoが書いてるので、私は脚本的によく出来てるところをピックアップしてみました。
映画の開始早々、かなりエッチなストリップシーンが映されて、舞台で踊った後はお客一人一人に声をかけ、個室に誘って特別サービス、といった彼女たちの生態が丹念に描かれてました。そこで出会った富豪の道楽息子に気に入られてパーティー三昧の生活をして、ベガスで騒いだ勢いで結婚まで突入するのですが、結局は個室サービスの延長線の生活でしかなかったのですね。冒頭のアノーラのお仕事の描写が活かされてました。やはり、そんな薔薇色の生活の夢はバカ息子の気まぐれであえなく潰えてしまうのでした。
失踪したバカ息子を探すドタバタ劇がちょっと長すぎるのは困りましたが、息子が逃げ込んだストリップ劇場で、個室のドアが次々と開け放たれるのは(お客は迷惑ですが)、狭い世界に閉じこもっていたアノーラの解放を暗示しているようで、息子もクズなりに役目があったということですね。
そして一転してシリアスになる終盤は脚本の秀逸さが効いてきます。大富豪の用心棒のイゴールがアノーラに好意を抱いているのは前々からほのめかされていました。豪邸での最後の夜を一緒に過ごしている時、そんな彼がボソッと「昨日は俺の誕生日だった」と言うのですが、誕生日というキーワードは、過去の名作映画でも主人公の再生を促す時によく使われてました。
その後、離婚処理なんかが全て片付いて、イゴールがアノーラをアパートに送る場面。アパート前に車を停めてもアノーラが降りようとしない。アパートにルームメイトが居るからというのもありますが、彼女が心を開きつつあるのを感じさせます。
この後、車の中でのラブシーンになるのですが、ここは映画冒頭の個室ストリップと対になった構成ですね。雪が降りしきり、みるみる車が雪に覆われていく中、イゴールに拒絶されたアノーラが泣き崩れる場面で映画は終わります。
このシーンでずっとワイパーの音が耳障りだったのが気になったのですが、これはきっと雪に閉じ込められた閉塞感の中でも前方の視界は開けていることを表しているんですね。一見救いようのない終わり方ですが、愛することの本当の痛みを知ったアノーラに対する優しい眼差しが感じられるエンディングでした。
無駄に長いところもありましたが、2時間20分を一気に見せる力技はお見事だと思います。

評価 ★★★★☆
この映画はストリップダンサーのヒロインが主役なので、お色気シーンが満載の刺激の強い作品のせいか、カップルや家族連れは観に行きづらいのかな?アカデミー賞をとった割には思ったより上映館や上映数が少なくて、上映が終わらないうちに急いで観に行ってきました。
内容はというと、物語の前半はストリップダンサーのアノーラがロシアの大富豪の息子と知り合って、夢のような生活を送り、勢いで結婚してしまうシンデレラストーリーのような描かれ方をしていますが、ロシアの大富豪の両親に2人の結婚がバレて、結婚を阻止しようと大富豪の手下の男たちが送り込まれると、後半は一転して、逃げた大富豪のバカ息子を捜すドタバタ珍道劇に変わってしまうんですね。同じ映画なのに物語の前半と後半では作品のティストが全く変わってしまうのが面白かったです。
最初はお金目当てで恋人役を引き受けたアノーラも、ロマンチックなプロポーズに情を絆されてしまったのか、娼婦のような自分の立場も忘れて、玉の輿の結婚に夢見てしまうところが純真な乙女という一面もあって可愛かったです。
また、結婚を阻止しようとチンピラのような男たちに襲われそうになっても、絶対に離婚しないと自分の意志を曲げないところに、プライドを持った戦うヒロインという感じで好感が持てました。ただ、自分で幸せになる努力をしないで、男の人に養ってもらって幸せになろうとするところは、やはり女性から見て応援はできても共感はできないかな。
大富豪の手下の男たちの一人がバカ息子に振り回された可哀想なアノーラに同情して、色々と助けてくれるようになり、最後には味方になってくれるのですが、この彼とアノーラのやり取りがとても素敵でした。
詳しくはwancoが書いているので割愛しますが、この最後のやり取りのシーンがアノーラの本当の心情を表現しており、アノーラが本当に欲しかったものが理解できるようになっていて、この作品に深みを与えていたように思います。
娼婦と大富豪の恋愛を描いたジュリア・ロバーツのプリティウーマンに比べると、この映画はシンデレラストーリーのその後が描かれていて、夢も希望もないところがとてもリアルで現代的な感じがしました。
映画『ANORA アノーラ』公式サイト
(「ANORA アノーラ」2025年 3月 kino cinéma立川髙島屋S.C.館 にて鑑賞。)
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