夫婦でシネマ

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アシスタント

2023年09月15日 | あ行の映画
Story
名門大学を卒業したばかりのジェーン(ジュリア・ガーナー)は、映画プロデューサーという夢を抱いて激しい競争を勝ち抜き、有名エンターテインメント企業に就職した。業界の大物である会長のもと、ジュニア・アシスタントとして働き始めたが、そこは華やかさとは無縁の殺風景なオフィス。早朝から深夜まで平凡な事務作業に追われる毎日。常態化しているハラスメントの積み重ね……。しかし、彼女は自分が即座に交換可能な下働きでしかないということも、将来大きなチャンスを掴むためには、会社にしがみついてキャリアを積むしかないこともわかっている。ある日、会長の許されない行為を知ったジェーンは、この問題に立ち上がることを決意するが……。(MOVIE WARKER PRESSより)
2019年/アメリカ/キティ・グリーン監督作品






評価 ★★★★

映画業界に憧れて念願の有名な制作会社に就職できたのに、実際は単調な事務作業と会長からのクレームに対応する日々。この映画はそんなジェーンの会社での1日を描いた物語です。
朝早くから夜遅くまで仕事して、食事もゆっくり取る暇もなく、会長からの理不尽なクレームにも悩まされるジェーン。おまけに職場の同僚もあまり頼りにならず、事務的な電話の取り次ぎはしてくれないのに、なぜかクレーム対応のメールにだけ毎回、書き方を伝授する同僚がいたりと、何事にも我慢してひたすら単調な作業をこなす日々を送っていました。

こうやって見ると、アメリカも日本も制作会社の実態というのはあまり変わらないんですね。私も20代当時はwebの制作会社に勤めていたんですが、サイトのリニューアル時はページ制作からディレクション、そして事務作業まで幅広く対応しないといけなくて、毎晩、11時過ぎまで会社で残業をしたりと、本当にジェーンの働き方と一緒で、すごく共感できました。

私の場合は、仕事仲間との飲み会が唯一の癒しというか楽しみだったんですが、ジェーンの場合はこの会社に友人らしい人や仕事の悩みを相談できる感じの人もいなくて、仕事のモヤモヤを発散させる場がないのが本当に可哀想でしたね。会長から女性スタッフへのセクハラ行為に気づいて、意を決して人事部に相談しても、ひどい言われ方で軽くあしらわれてしまう始末。
この辺りは夫のwancoが詳しくレビューで書いているので割愛しますが、ジェーンは真面目で正義感の強い女性でもあるので、これからも会社で働くためにセクハラ行為に目を瞑るというのはものすごく葛藤があったと思います。これは性暴力で告発された元映画プロデューサーのワインスタインをモデルに描かれているシーンだと思うのですが、今のジャニーズ問題にも通ずる出来事で色々考えさせられました。

ジェーンは優秀な娘ということで親からの期待も背負っていて、思っていた仕事と違っていても親に愚痴を言ったりできない。果たしてクリエィティブな仕事ができるまで我慢して今の毎日を続けることができるのか、この映画のラストに仕事が終わって、ニューヨークのカフェでマフィンを齧りながら(今日やっと、ちゃんとした食事でこれもまた泣ける。。)やっと一息つけるシーンがあるのですが、その表情は暗く思い詰めた感じで、これからのジェーンの不安な気持ちが伝わってくるようでした。

この映画、ジェーンの心情をセリフでの説明も一切なくて、ただジェーンの淡々と仕事をこなすシーンが続いていくだけなのですが、本当に色々なことを考えさせられるとても良質な作品でした。
映像の色彩も、女性監督らしいグレーとピンクで表現されていて、とてもお洒落でしたね。私もすぐ影響を受けやすくて、この映画を見終わったら、立川にあるカフェでマフィンを食べながら、wancoと一緒に映画について語り合いました。






評価 ★★★★

映画制作会社が舞台ではあるのですが、華やかさのかけらも無い事務仕事が延々と続くのが異色。
しかし、実際の映画の企画・制作のお仕事はこんなものかもしれないですね。
そんな憧れの会社に希望に燃えて飛び込んだであろうジェーンが過酷な業務にひたすら耐える物語でした。

ジェーンは会長から公私混同のパワハラを受ける一方で、彼が女優志望の女性に対してセクハラを行なっているのではないかと疑念を募らせる。
そして会長の悪行を看過できなくなったジェーンが、人事部に相談に行くのですが、そこの担当者から「君は大丈夫だ。会長の好みじゃ無いから。」と放たれるのには呆然としてしまった。
善意を纏った人物が悪意なく放つその言葉に、理解の無い救いのなさが凝縮されているようで、ジェーン共々観客達も絶望感を募らせることになります。

ジェーンが夜のニューヨークのカフェに佇む場面では彼女の孤独感がひしひしと迫ってきます。
映画は何の解決策も示さず終わるのですが、私たちはこの後怒涛のように湧き上がる#Mee Tooムーブメントを目撃しているわけで、彼女のような声なき声がその原動力となったんだなと思ったのでした。




映画『アシスタント』公式サイト


(「アシスタント」2023年 6月 kino cinéma立川髙島屋S.C.館 にて鑑賞。)

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