Story
長男の幸一夫婦(佐田啓二・岡田茉莉子)は共稼ぎながら団地に住んで無事に暮しているし、家には娘の路子(岩下志麻)と次男の和夫(三上真一郎)がいて、今のところ平山(笠智衆)にはこれという不平も不満もない。細君と死別して以来、今が一番幸せな時だといえるかもしれない。わけても中学時代から仲のよかった河合や堀江と時折呑む酒の味は文字どおりに天の美禄だった。その席でも24になる路子を嫁にやれと急がされるが、平山としてはまだ手放す気になれなかった。(goo映画より)
1962年/日本/小津安二郎監督作品
評価 ★★★★☆
小津安二郎監督がメガホンを撮った最後の作品!
この映画は、今月の1日に「第11回小津安二郎記念・蓼科高原映画祭」で上映された作品で、昨年に引き続き、wancoと一緒に鑑賞してきました!
娘の路子役を演じた若い頃の岩下志麻が、清純な役柄のせいか、とても品があって可愛かったです。岩下志麻と言えば、「極道の妻たち」の凄みのある姐さん役のイメージが強いですが、この頃の彼女は同一人物とは思えないくらい、雰囲気が全然違いましたね。
小津作品でおなじみの笠智衆も、妻に先立たれたことで、家族の世話に追われてなかなか結婚しない娘・路子を心配する、心優しい父親役を好演していました。彼の温かみのある喋り方は、なんだか観る者を安心させるというか、彼が画面に登場する度にほのぼのとした気持ちにさせてくれる、不思議な魅力を持った役者さんですね。
この時代の女性の結婚適齢期がだいたい23~25歳くらいのようで、てっきりもっと早いのかと思っていたら、私の親たちの世代とあまり変わらなかったのが意外でした。
でも、なかなか結婚しない娘を心配するあまり、お見合いをしきりに進める親心には、時代がどれだけ変わっても現代と共通する部分がありますね。
小津監督は、そういった家族のどこにでもあるような風景を描かせたら、本当に上手いので、物語を楽しみながら共感して観る事ができました。
それにしても、この映画にはお酒を飲むシーンが数多く登場します。ということは、サントリー、もしくはサッポロのお酒の会社がスポンサーについていたのかな?なんて思ったりしました。
同じ小津作品の、完成度の高かった「東京物語」と比べてしまうと、この作品の評価は下がってしまいますが、「秋刀魚の味」というこの映画のタイトルどおり、味わい深い魅力のある、なかなか良い作品に仕上がっていたと思います。
評価 ★★★★☆
この映画を一言で表現すれば、” 時代は変わる ” といったところでしょうか。
終戦から高度経済成長へ。精神性の時代から消費社会へ。といった言葉で語られる時の流れが映画のそこかしこでさりげなく描かれています。
佐田啓二と岡田茉莉子の夫婦は、愛情よりも物欲が支配している印象を受けます。お互いの関心事と言えば、家電製品やゴルフクラブを買う事ばかり。終始、不満顔の岡田茉莉子。だけど若い頃の岡田茉莉子は怒ってても可愛いですね。
笠智衆演じる平山の妻は既に亡くなっている訳ですが、想い出でしか語られない彼女の事が、過ぎ去った時代への憧憬の念を強くさせます。
この映画が作られたのが1962年。日本では61年に国民皆年金が成立したりして、人の一生がほぼシステム化された時期と言えます。生活は確かに良くなったのだけど、何か寂しい。といった時代の雰囲気が伝わってくるようでした。
娘を嫁がせるという物語は、先に観た「秋日和」と同じテーマですが、「秋刀魚の味」では、社会の変化という概念が色濃く出ていたと思います。
小津安二郎生誕100年記念 The Yasujiro Ozu 100th Anniversary
(「秋刀魚の味」2008年11月 長野 蓼科高原映画祭・茅野市民館にて鑑賞)
長男の幸一夫婦(佐田啓二・岡田茉莉子)は共稼ぎながら団地に住んで無事に暮しているし、家には娘の路子(岩下志麻)と次男の和夫(三上真一郎)がいて、今のところ平山(笠智衆)にはこれという不平も不満もない。細君と死別して以来、今が一番幸せな時だといえるかもしれない。わけても中学時代から仲のよかった河合や堀江と時折呑む酒の味は文字どおりに天の美禄だった。その席でも24になる路子を嫁にやれと急がされるが、平山としてはまだ手放す気になれなかった。(goo映画より)
1962年/日本/小津安二郎監督作品
評価 ★★★★☆
小津安二郎監督がメガホンを撮った最後の作品!
この映画は、今月の1日に「第11回小津安二郎記念・蓼科高原映画祭」で上映された作品で、昨年に引き続き、wancoと一緒に鑑賞してきました!
娘の路子役を演じた若い頃の岩下志麻が、清純な役柄のせいか、とても品があって可愛かったです。岩下志麻と言えば、「極道の妻たち」の凄みのある姐さん役のイメージが強いですが、この頃の彼女は同一人物とは思えないくらい、雰囲気が全然違いましたね。
小津作品でおなじみの笠智衆も、妻に先立たれたことで、家族の世話に追われてなかなか結婚しない娘・路子を心配する、心優しい父親役を好演していました。彼の温かみのある喋り方は、なんだか観る者を安心させるというか、彼が画面に登場する度にほのぼのとした気持ちにさせてくれる、不思議な魅力を持った役者さんですね。
この時代の女性の結婚適齢期がだいたい23~25歳くらいのようで、てっきりもっと早いのかと思っていたら、私の親たちの世代とあまり変わらなかったのが意外でした。
でも、なかなか結婚しない娘を心配するあまり、お見合いをしきりに進める親心には、時代がどれだけ変わっても現代と共通する部分がありますね。
小津監督は、そういった家族のどこにでもあるような風景を描かせたら、本当に上手いので、物語を楽しみながら共感して観る事ができました。
それにしても、この映画にはお酒を飲むシーンが数多く登場します。ということは、サントリー、もしくはサッポロのお酒の会社がスポンサーについていたのかな?なんて思ったりしました。
同じ小津作品の、完成度の高かった「東京物語」と比べてしまうと、この作品の評価は下がってしまいますが、「秋刀魚の味」というこの映画のタイトルどおり、味わい深い魅力のある、なかなか良い作品に仕上がっていたと思います。
評価 ★★★★☆
この映画を一言で表現すれば、” 時代は変わる ” といったところでしょうか。
終戦から高度経済成長へ。精神性の時代から消費社会へ。といった言葉で語られる時の流れが映画のそこかしこでさりげなく描かれています。
佐田啓二と岡田茉莉子の夫婦は、愛情よりも物欲が支配している印象を受けます。お互いの関心事と言えば、家電製品やゴルフクラブを買う事ばかり。終始、不満顔の岡田茉莉子。だけど若い頃の岡田茉莉子は怒ってても可愛いですね。
笠智衆演じる平山の妻は既に亡くなっている訳ですが、想い出でしか語られない彼女の事が、過ぎ去った時代への憧憬の念を強くさせます。
この映画が作られたのが1962年。日本では61年に国民皆年金が成立したりして、人の一生がほぼシステム化された時期と言えます。生活は確かに良くなったのだけど、何か寂しい。といった時代の雰囲気が伝わってくるようでした。
娘を嫁がせるという物語は、先に観た「秋日和」と同じテーマですが、「秋刀魚の味」では、社会の変化という概念が色濃く出ていたと思います。
小津安二郎生誕100年記念 The Yasujiro Ozu 100th Anniversary
(「秋刀魚の味」2008年11月 長野 蓼科高原映画祭・茅野市民館にて鑑賞)
秋刀魚の味は見返すほどに味の出てくる映画です
とくに秀逸なのはラストシーン。
いるべき人のいなくなった二階の部屋へと続く階段を見上げる笠智衆。
するとカメラは無人の二階の部屋に移動し、写すべき主を失った姿見を写す。
「喪失感」というものをもっとも鮮明に打ち出した作品だったのかなと思います。笠智衆の見上げる先に、無人の部屋を写す姿見の向こうに、小津作品の新たな世界がのぞいているような気がすると、残念無念な小津の遺作でありました。
コメントありがとうございました。
今年の映画祭も会場は盛況でしたよ。
「秋刀魚の味」では、随所で笑いが起こったりして、DVDで観た時とは、異なった臨場感があって楽しく観る事ができました。
「喪失感」。ラストは、娘を嫁にやった父親の寂しさが伝わって来てしんみりしましたね。
これが小津監督の遺作になってしまったのは残念です。