放射線治療と医学物理

放射線治療、特に医学物理に関する個人的記録

郵送用IMRT線量検証ファントムの作成

2008年08月11日 | QA for IMRT
放射線治療と医学物理 第34号

Youngyih Han, et al.: Dosimetry in an IMRT phantom designed for a remote monitoring program, Med Phys, 35, 2008

IMRTの結果をclinical trial等で比較する際、その強度変調された処方を各施設で正確に実施する必要性があります。しかし、各々の施設で有する装置や環境が異なるため、施設間で照射の正確性に差がないことを確認することが重要です。本論文では韓国食料医薬品局(KFDA)がIMRTの質を調査するための頭頸部ファントムを作成し、その線量測定システムの妥当性を調査したものです。

 作成されたファントムは頭頸部治療を模擬して直径17cm、高さが25cm、PMMAで作成されています。上記ファントム(cylinder)にはTLDと小容積電離箱が設置できる4つのROI(ターゲット、OARとして唾液腺2カ所、脊髄1カ所)、空気の穴(気管を模擬)、骨組織(テフロン)も作成されています。この空気の穴と骨組織は均一ファントムでの測定を可能とするため、均一物質と入れ替えられるようになっています。また、フィルムも挟めるようになっており、線量分布の評価も可能です。

 線量測定は上記の電離箱(0.03cc)、TLDを用いて4つのプランを測定しています。また、同プランにおいてモンテカルロ(BEAMnrc, DOSXYZnrc6.0)も評価しています。4つのプランは以下です。
1. 均一ファントム使用。AP方向の照射。照射野20cm X 20cm。SAD.100cm
2. 不均一ファントム使用。AP方向の照射。照射野20cm X 20cm。SAD.100cm
3. 均一ファントム使用。AP, RPO, LPO方向の照射。照射野10cm X 10cm SAD.100cm
4. 均一ファントム使用。7 field IMRT。SAD.100cm
不確かさを減少させるために、TLDの測定は16回の測定を4日間で、電離箱の測定は3回測定を1日で行っている。

結果
上記1-3のプランにおいて、モンテカルロ、治療計画、測定は±2%以内であった。電離箱の値は常にモンテカルロの値よりも低い値となり、TLDの値は治療計画よりも大、またTLDの値は電離箱の値よりも2%-3%大きい。不均一による測定線量の不確かさは増加しない。
IMRTのプランにおいて、TLDの値は電離箱の値に2%程度の乖離、治療計画と電離箱の値は3%以内で一致している。しかしOARは線量の勾配がきつい部分が多いため、測定結果に5-7%の差が生じている。
電離箱値の標準偏差はかなり小さいが、TLD値は大きい。
ガフクロミックフィルムでのγ評価は良好。しかし、EBTフィルムでは処方線量(100%)領域および低線量(-30%)領域にノイズが認められた。

この結果は単純なものであり、またターゲットやOARのポイント線量を確立させるため、今後韓国では数施設でのpilot studyが開始されると記載されている。

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IMRTの精度確保において、同一のファントムを用いてプランニングを行い、systematic errorを把握する試みは、特にclinical trial等の場合に有用であると考えられる。

詳細は論文で。