放射線治療と医学物理

放射線治療、特に医学物理に関する個人的記録

DMLCのQA

2008年11月28日 | QA for IMRT
放射線治療と医学物理 第50号

Chen-Shou Chui, et al.: Testing of dynamic multileaf collimation, Med Phys, 23, 1996

IMRTのフィールドではターゲットへ均一な照射を保ちつつ、決定臓器の線量を低下させることができる。方法は種々提案されているが、dynamic MLCを使用したIMRTではビーム中の適切なリーフのコントロールにより、さまざまな強度の分布を作成することができるのみではなく、フィールド毎部屋に入る必要もなく、照射に有する時間を大幅に削減することができる。
しかし、あるセグメントから次までリーフが動く際の加速および減速、およびリーフの位置正確性は照射された強度分布に好ましくないアーチファクトを引き起こすかもしれないため、テスト方法の考案は重要である。
本論分では、これらのdynamic MLCの機械的状況を調査するために5種類のテストをデザインし、下記の内容をより詳しく調べている。
1. リーフスピードの安定性
2. リーフ移動と垂直の方向の線量プロファイルにおける側方不平衡の効果
3. リーフの加速および減速の効果
4. 位置の正確性とリーフ端の効果
5. QAの基礎となる単純なテストパターンの作成

リーフスピードの安定性
0.14cm/MU(最低)から1.0cm/MU(最高)移動速度のMLCにて速度を9種類選択し、同スピードにて対抗するMLCを動かし、最終的に作成される線量分布を得る。スピードの差異が認められれば線量分布に不備が見られるはずである。本論文ではわずかな線量の差(±1%)は見られたものの、これはフィルム測定に起因するものであると帰結している。

リーフ移動と垂直の方向の線量プロファイルにおける側方不平衡の効果
リーフスピードの安定性にて評価されるように、各々のリーフ幅内の強度は均一と想定される。しかし、リーフの移動方向に垂直な方向では線量プロファイルが均一となることはなく、ステップ様に線量分布が描かれる。ここではリーフスピードの安定性にて作成したフィルムにおいて、リーフ移動方向の垂直方向に分布を得ることで評価している。二次電子および散乱光子のためにリーフの幅内にも均一な線量の領域は存在しない。

リーフの加速および減速の効果
Dynamic MLCの照射中、リーフは通常セグメントからセグメントまで異なったスピードで動き、目的とする強度の分布を作成する。このテストはリーフスピードの安定性試験にて行うリーフ移動を故意に中断し、再開した場合の線量の差を見ることにより行う。もしも加速およびリーフ減速時にリーフの停止位置が不正確であったりすると、均一な線量のプロファイルは得られない。

位置の正確性とリーフ端の効果
通常の照射の場合、JAW, ブロック、リーフの位置精度の低下は照射野境界の線量不確実性が増すのみであるが、Dynamic MLCでは線量の分布全てに影響が発生する。停止位置の正確性をテストするためにここでは左右のリーフの移動パターンを同一とし、停止のタイムラグを使用して調査している。左から右に動くリーフ試験の場合、左のリーフが規定場所に届かなかったり、右のリーフが規定場所を過ぎたりすると、ホットスポットとして認識され、逆の場合はコールドスポットとして認識される。このホットおよびコールドスポットの幅が位置の不正確性を示す。もしも位置の不正確性が系統だったものでない場合、ホットスポットとコールドスポットが混在するかもしれない。また、ホットスポットはリーフ端からのextra leakageによっても発生する。実際のテストでは異なった場所でリーフを止めることでペアを作成し、種々のポイントにおける位置の正確性を判定している(半値幅)。
結果において4つのペアが示されている。これらは全てホットスポットであり、線量において5%、半値幅において4mmであった。このホットスポットは機械的なキャリブレーションのエラーかリーフ端の効果によって発生する。前者は光照射野の動きによって判定ができ、これよりリーフ端の効果であることが結論付けられた。

QAの基礎となる単純なテストパターンの作成
実際の臨床で行うQAとしては単純かつ短時間で行えることが必須である。このために、テストに必要な特徴としてデジタル化して評価するのではなく、視覚的に検疫でき、また全てのペアを連続的に評価できなくてはならない。この評価のため、位置の正確性とリーフ端の効果試験にて使用した方法を少し変更し、複数のペアを作成するようにプログラミングが行われています。これによりリーフ位置の正確性に問題がない場合は同じ黒化がなされ、なんらかの問題がある場合には視覚的に評価できる。このテストは毎日か、dynamic MLCを使用する日のみ、セラピストによって行うことができ、また重力の効果を考慮したい場合はガントリーを90度傾けて行う(約10分で全て行うことができる)。このフィルムの配置はここでは5cm深に設定している。またあらかじめエラーを故意におこし、黒化の度合い(視覚的検疫が可能か)を調査している。

Dynamic MLCを使用した治療における線量分布の重要な誤差要因として、位置精度やモータの問題に加え、MLC移動の垂直方向のプロファイルや、リーフ端のプロファイルも重要である。


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Dynamic MLCの品質管理はIMRTでは必須である。実際に行う際の参考としたい。

詳細は論文で。