放射線治療と医学物理

放射線治療、特に医学物理に関する個人的記録

立位ポジションでのTBI

2008年08月21日 | TBI
放射線治療と医学物理 第35号

S V Harden, et al.: Total body irradiation using a modified standing technique: a single institution 7 year experience, Br J Radiol, 74, 2001

Long SSD法を用いた全身照射法を立位ポジションで行った場合、setupに時間がかからず、他の患者に対する通常の治療に迷惑をかけることなく行うことができることを示した論文です。

TBIの照射方法は種々提案されていますが、線量の均一性、正確な照射、再現性、setupの容易さ、照射野の限界、部屋の大きさ、使用する装置がTBI専用装置であるか否かが重要な項目となります。この施設では1991より前、側方向ビーム(臥位)にて治療がなされていたようですが、setupに時間がかかり、ボーラスバッグが必要、線量の均一性のために注意深いポジショニングが必要であり、また肺の線量を正確に測定することが難しいという難点を抱えていました。そこで照射をAP方向とすることで肺の正確な測定が可能となり、また線量の均一性も向上したと記しています。

 治療装置はスウェーデン製の直線加速器(Asea Brown Boveri LA20)、アイソセンターにて40cm x 40cmの照射野を作成することができ、患者のポジショニング位置(5m)にておよそ2.0m x 2.0mの照射野を得ることができます。治療エネルギーは16MV、線量率は300cGy/min at 1m、5mにて12cGy/minとなっています。

 患者のポジショニング位置の前には2cmのPMMA衝立、肺には鉛の補償体、首の前側にボーラスを配置する以外には、特に目立った工夫は行われていません。肺の補償体は0.5mm厚の鉛シートを重ね合わせることで作成され、ポータブルフィルムを参考に補償体の大きさを決定しています。その際、患者の動き、心臓や腹部の吸収効果を加味しつつ、最も必要な部分で7mm程度、その外側は4.5mmの鉛で作成されています。その後照射時にTLDを貼り付けることで線量を把握し、処方量の確認と鉛の量を調整しています。

 この方法によるSetup時間はおよそ10分、全ての工程が25分で終了すると記載されています。また、TLDによる様々な位置の測定から頭部および体幹部において処方線量の±6%以内、踵の領域において処方線量の10%増、首の部分において5%増、肺は処方線量の±5%で照射されていることを確認しています。

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 容易なsetupにて正確な線量が把握でき、またそれが良好な再現性、均一性の優れた照射ができるのであればその方法に切り替えることを躊躇うことはないのですが、いずれにしても自施設での確認は不可欠であると思います。照射時の参考としたい。

詳細は論文で。