放射線治療と医学物理

放射線治療、特に医学物理に関する個人的記録

3次元IMRT線量検証PRESAGEの紹介

2008年07月28日 | QA for IMRT
放射線治療と医学物理 第29号

Mark Oldham, et al.: An investigation of the accuracy of an IMRT dose distribution using two- and three-dimensional dosimetry techniques, Med Phys, 35, 2008

複雑な線量分布を作成することのできるIMRTは線量分布および吸収線量の検証が必須である。この線量検証は分布測定のためにフィルムやダイオード線量計を用いて2次元的に行われ、吸収線量の評価には極小照射野用電離箱を使用して測定がなされている。3次元的な線量分布の評価が可能であれば、その評価を行うことがより好ましいが2次元検出器を用いて3次元評価を行うのは現実的には困難である。

 従来3次元検出器といえば3D gelが使用されてきた。これは酸素に感度があり、特別な配慮を必要とする。そこで、最近開発されたPRESAGEはsolid polyurethane plasticで作成され、外部コンテナを必要としないことから使用が容易であり、放射線により緑色に変色することを利用している。本論分はこのPRESAGEの変色をOptical CT(He-Neレーザ)にてread outし、IMRTの線量検証を行うことについて記載した論文である。

 使用されたPRESAGEファントムは16cm直径、11cm高であり、実効原子番号が8.3、密度が1.07g/cm^3、CT値は200以下である。ファントムのread outは前述のOptical CTを使用し、1度ずつデータを収集、4時間(単一のスライスで7min)かけて全scanを行う。

 ファントムの使用方法は通常の患者の治療時と同様であり、PRESAGEを治療計画前にCT撮影し、治療計画を行う。このCTによる線量は1cGy以下であり実際の測定に問題ないことが過去の検討にて得られている。本論文ではこのPRESAGEファントムを4つ積み重ね、その間にガフクロミックフィルムEBT(3枚)を挟み、その3枚の位置で怒った顔、普通の顔、笑った顔のIMRT field(11 field, 6MV, PTV: 6Gy)をEclipse(PBC)にて作成し、その線量評価をしている。また、EBTおよびPRESAGEの両方について、線量評価の際に照射前後に計測を行い線量による変化を得ている。

 結果は以下である。
1. 光CTによるレーザの反射によるエッジアーチファクトが発生するため、PRESAGEによる検討においてファントムの外側3mmの評価は困難である(利用可能な線量計の領域は96%)。
2. EBTによる評価において、ノイズ領域を除けば概ね治療計画との一致が見られる。
3. PRESAGEによる利点は3D線量分布を作成することができる点であり、これによりSagital viewおよび計測によるDVHの評価が可能となっている。しかし、DVHにおいて線量20%以下の領域は上記エッジアーチファクトにより線量の一致が見られない。
4. Gamma indexによるpass rate評価として
PRESAGEとEclipseの3次元評価:γ<1.0 = 92% (外側3mmを除けは96.0%)1.0の領域はPRESAGEの外側3mmの領域およびビルドアップ領域に集中している。これはPRESAGEの線量描出能力およびTPSのビルドアップのモデリングの不正確さが関係している。

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複雑なIMRTの線量の検証は可能であれば3次元評価が望まれる。まだまだ使用するに当たってlimitationがあることは筆者も認めているが、使用が容易、安価での提供、と状況が整えば国内での臨床現場でも登場するかもしれない。AAPM2008では今年も発表されている。

詳細は論文で。