放射線治療と医学物理

放射線治療、特に医学物理に関する個人的記録

IMRT MatriXXの臨床線量評価

2008年06月05日 | QA for IMRT
第13号

J Herzen, et al.: Dosimetric evaluation of a 2D pixel ionization chamber for implementation in clinical routine, Phys. Med Biol, 52, 2007

臨床現場でQAするときに使用する2次元電離箱アレイ(IMRT MatriXX)の線量評価です。一般的に治療計画によって計算されたIMRTの3次元線量分布を線量測定として評価、検証することは不可欠であり、主にこれらの行為は治療計画によって計算される2次元線量分布と測定データを比較することによって行われます。従来から行われてきたフィルムは時間が非常にかかるため、これらの2D電離箱は大きな期待が寄せられています。

トリノ大学によってデザインされたIMRT MatriXXは、1020個の平行平板型電離箱から成っており、高さ0.55cm, 直径0.4cm、線量計中央間距離0.76cm、有感体積0.07ccmで最大24cm x 24cmのfieldを測定することができます。また、2つのカウンターが設置されており、dead timeなしで測定することができます。最小読取時間は20msであり、ダイナミック照射の検証にも使用できると解説されています。

実効測定点の測定には、PDDが用いられています。Solid Phantomおよび0.6cc電離箱を使用してPDDを取得し、さらにMatriXXを用いて同様の測定を行うことによって実効測定点を得ており、3.6mm±0.1mmという値が導かれています。

線量、エネルギー依存性の確認として、10cm x 10cmのfieldかつ4MV, 6MV, 15MVのエネルギーにて実験が行われており、全てのエネルギーにおいて線量の直線性、エネルギー非依存性が確認されています。

ウォームアップ時間調査として、100MU, 10cm x 10cm field size, 6MV X線を用いて20回照射し、線量計の振る舞いが調査されています(製造メーカからは電源ONしてから15分以降に照射することが推奨されています)。電源をOFFしてしまえば再度照射してウォームアップしなくてはならないが、電源を切らなければ測定値は安定していると報告されています。ここからMatriXXが安定化するためには10Gy程度のpre-irradiationが必要であろうと記載されています。

MatirXX内電離箱1つの側方レスポンス関数および空間分解能
タングステンで作成された細いスリット(1mm)を利用してLSF(line-spread function)を取得し、側方レスポンスを評価しています。ここではdiagonal方向、cross plane方向各々で値がほとんど変わらないことが示されています。

XiOにて計算された線量分布とMatriXX測定値との比較
上側に5cm, 下側に10cmのsolid waterにてMatriXXを挟み込み、CTを撮影し、そのCTデータに基づき、20 x 20, 15 x 15, 10 x 10, 5 x 5, 4 x 4, 3 x 3, 2 x 2, 1 x 1cm2、各々のフィールドで50MU照射するプランを作成し、ピラミッド型の線量分布で評価しています。測定値および補正された計算プロファイルは最大偏差1%であり非常に良い一致を示しています。
また、IMRTの7つのフィールドでも検証されていますが、ここではガントリー角度0度にて行われています。補正されたプロファイルにおいて、最大の偏差は傾斜のきつい領域において8.4%、傾斜の少ない領域において4.5%であったと報告されています(Gamma indexでの評価はなし)。

 本報告には含まれていないものの、呼吸同期照射の際にはスタートアップの性能評価が不可欠であり、このIMRT MatriXXが有効である可能性が示されています。

MatriXXのような2D 検出器はフィルムでの検証作業の一部に置き換わりつつあります。線量計自体が大きいため自由性は少ないものの、時間浪費の観点から非常に魅力的な線量計であり今後の普及が期待されます。

詳細は論文で。