放射線治療と医学物理

放射線治療、特に医学物理に関する個人的記録

PCでのクラークソン積分計算法の開発

2008年07月08日 | QA for TPS
放射線治療と医学物理 第21号

K. D. Steidley, et al.: A Clarkson’s sector integration routine for personnel computers, Med Phys, 21, 1994

クラークソン積分をPC(quick basic)上で行い、irregular照射野における平均TARおよび平均SARを自動で計算するためのソフトを開発したという趣旨の論文です。

MLCにて形作られた照射野において点線量を計算する際にprimaryとsecondaryコンポーネントに分けて計算することは、Co-60 – 18MV X-rayのエネルギー領域においては正確かつ有用であると報告されています。このクラークソンにより提案されたセクター積分法は、平均SARを算出するのに有用な方法であると認識されています。

このソフトウェア開発において、下記の4項目が想定されています。
1. transverse planeにおけるprimary線量はフィールドに依存しない
2. Off-axis changeは考慮しない
3. 表面の凹凸は考慮しない
4. ブロックの透過はないものとする

 クラークソンのセクター積分法により算出される平均SARは
SARnet(d, rc – rb + ra) = SAR(d, rC) – SAR(d, rB) + SAR(d, rA) ・・・(1)
SARnetは全てのセクターにおいて合算されたSARの平均値である。
また、
TARave = TAR(d, 0x0) + SARnet ・・・(2)
の関係式が成り立ち、このTARaveを利用してTARテーブルから等価照射野を算出することもできます。

 この計算ソフトの中では、セクターとMLCの交差点を算出するためにpolygon clipping algorithmが用いられています。このアルゴリズムは2つの3次元の物体が互いに交差する点を決定するためのものですが、ここでは2次元計算に使用されています。

上記polygon clipping algorithmを用いて交差点が算出されれば、一次関数を使用して座標を得ることができます。交差点が判明すれば、交差点が照射野内かどうかを判定し、同時に評価点から交差点までの距離(半径)を求め、各々のSARを算出します。これらのSARを(1)式にて評価するとSARnetが導かれ、同様に(2)式によりTARnetが算出されます。

販売されているプログラムIRREGと比較した結果、差異は一般的なフィールドにおいて0.7%(最悪1.7%)であったと報告しており、この値であれば十分に臨床使用することができそうです。

 この考え方を利用すれば、エクセルベースでも簡易なクラークソンのセクター積分法が作成可能であると思います。

詳細は論文で。