放射線治療と医学物理 第23号
Simon J. Thomas.: A modified power-law formula for inhomogeneity corrections in beams of higher-energy x rays, Med Phys, (18), 1991
治療計画における線量計算において肺等の不均質な領域が存在する際には、不均質部分の線量の補正が必要となります。この線量補正ファクター(CF)は単純に以下に示されます。
CF = (補正をした線量) / (補正されていない線量)
アルゴリズムの作成および普及には計算結果の正確性も重要ですが、同時に計算時間も考慮されます。ゆえに、普及している方法には以下の方法があります。
1. 実効深アルゴリズム (effective depth algorithm)
2. べき乗アルゴリズム (power-law algorithm)
1の方法としては、
CF = TMR(d’, S) / TMR(d, S)
d: 線量計算対象の深さ、d’: 実効深、S: 深さdにおける照射野
TMRの代わりにTARを用いることもできます。
2の方法としては、
水→不均質→水 の物質において
不均質においては、
CF = [TAR(d1, S)]^(ρ-1) → TMRは成り立たない。
2回目の水においては、
CF = [TMR(d2, S) / TMR(d2+B, S)]^(1-ρ)
B: 不均質物質の深さ, d1: 不均質内の深さ(水境界面との距離), d2: 不均質物質境界からの距離, S: dにおける照射野, ρ: 不均質物質の電子密度
上記式は伝統的に低いエネルギーに(Co-60のような)おいて使用されてきました。しかし比較的高いエネルギーになると、CFを低く見積る傾向にあります。また、側方荷電粒子平衡が無くなるような領域においては過大評価となる傾向にあります。一方でdがビルドアップの領域に入るようだと上記式の適用は難しくなります。
Cassel等により提案されたビルドアップの領域を計算に入れるための方法は組織境界における線量とビルドアップよりも深い領域の線量をinterpolateするもので、これにより上記power-law式が使用可能となるものの、測定結果との乖離はまた存在する。
不均質物資と水境界面においては、同じCFが予想されるために、次式が成り立つ。
[TMR(B, S)]^(ρ-1) = [TMR(0, S) / TMR(B, S)]^(1-ρ)
この式により、TMR(0, S) = 1.0となる。
たとえば8MV X線、10x10cm照射野の場合のビルドアップ領域におけるCFを考えると、深部TMRからextrapolateされたTMR(0, S) = 1.10となり、ρ=0.4であればCFは6%程度となる。この計算結果も測定結果とは乖離が存在する。そこで、本論分では
TMR(d, S) = TMR (d + db, S) db: ビルドアップ深
としてCFを計算するという、”Modified Batho-Power-Law”の提案である。dが0の場合、TMR(db, S) は全てのSにおいて1.0となり、深さ0における TMR(0, S) = TMR(db, S) = 1.0も成り立つ。
本論分では、上記実効深アルゴリズム (effective depth algorithm)、べき乗アルゴリズム (power-law algorithm)、そして上記のModified Batho power law法の比較を行っています。
CFを測定した結果により、筆者は以下を示しています。
1. 8MV X線, 10cm x 10cm field → Modified Batho Power Lawが最適
→ effective depth algorithmは数%過大評価
→ Batho power lawは数%過小評価
2. 8MV X線, 16cm x 16cm field → Modified Batho Power Lawは1%以内の差
3. 16MV X線, 10cm x 10cm field → 測定されたCFはModified Batho Power Lawとeffective depth algorithmの間に存在する。Modified Batho Power Lawは1.5%以内。
4. 16MV X線, 16cm x 16cm field →effective depth algorithmが最適。Modified Batho Power Lawは1.8%以内。
5. Co-60 γ線, 10cm x 10cm field →effective depth algorithmは3.5%以内の過大評価。Batho Power Lawが最適。Modified Batho Power Lawは最悪点において2%を超えない。
6. 16MV X線, 5cm x 5cm field →全てのアルゴリズムにおいて過大評価。
上記結果より以下がまとめられます。
1. 測定に使用したエネルギー(Co, 8MV-X線および16MV X線)および照射野においては、Modified Batho Power Lawは2%以内の精度を有す。
2. Standard Batho Power Lawは低いエネルギーで最良の結果を示すが、高エネルギーになるとかなり過小評価する。
3. コバルトのような低エネルギー: Standard Batho Power Law、中エネルギー: Modified Batho Power Law、16MVのような高エネルギー: effective depth algorithmが最良。
4. 最適な計算結果のために、上記3つのアルゴリズムは側方荷電粒子平衡が必須である。ゆえに、これが存在しない小照射野での結果は妥当ではない。
各施設において、どのアルゴリズムをどのような状況下において使用するのかは討論の上に決定すべきであり、また決定は尊重されるべきである。しかしながら、一般論としてどのアルゴリズムがより正確な線量計算に向いているかは各施設において検証すべきであり、TPSの性能を把握しておくことは有用と思われる。
詳細は論文で。
Simon J. Thomas.: A modified power-law formula for inhomogeneity corrections in beams of higher-energy x rays, Med Phys, (18), 1991
治療計画における線量計算において肺等の不均質な領域が存在する際には、不均質部分の線量の補正が必要となります。この線量補正ファクター(CF)は単純に以下に示されます。
CF = (補正をした線量) / (補正されていない線量)
アルゴリズムの作成および普及には計算結果の正確性も重要ですが、同時に計算時間も考慮されます。ゆえに、普及している方法には以下の方法があります。
1. 実効深アルゴリズム (effective depth algorithm)
2. べき乗アルゴリズム (power-law algorithm)
1の方法としては、
CF = TMR(d’, S) / TMR(d, S)
d: 線量計算対象の深さ、d’: 実効深、S: 深さdにおける照射野
TMRの代わりにTARを用いることもできます。
2の方法としては、
水→不均質→水 の物質において
不均質においては、
CF = [TAR(d1, S)]^(ρ-1) → TMRは成り立たない。
2回目の水においては、
CF = [TMR(d2, S) / TMR(d2+B, S)]^(1-ρ)
B: 不均質物質の深さ, d1: 不均質内の深さ(水境界面との距離), d2: 不均質物質境界からの距離, S: dにおける照射野, ρ: 不均質物質の電子密度
上記式は伝統的に低いエネルギーに(Co-60のような)おいて使用されてきました。しかし比較的高いエネルギーになると、CFを低く見積る傾向にあります。また、側方荷電粒子平衡が無くなるような領域においては過大評価となる傾向にあります。一方でdがビルドアップの領域に入るようだと上記式の適用は難しくなります。
Cassel等により提案されたビルドアップの領域を計算に入れるための方法は組織境界における線量とビルドアップよりも深い領域の線量をinterpolateするもので、これにより上記power-law式が使用可能となるものの、測定結果との乖離はまた存在する。
不均質物資と水境界面においては、同じCFが予想されるために、次式が成り立つ。
[TMR(B, S)]^(ρ-1) = [TMR(0, S) / TMR(B, S)]^(1-ρ)
この式により、TMR(0, S) = 1.0となる。
たとえば8MV X線、10x10cm照射野の場合のビルドアップ領域におけるCFを考えると、深部TMRからextrapolateされたTMR(0, S) = 1.10となり、ρ=0.4であればCFは6%程度となる。この計算結果も測定結果とは乖離が存在する。そこで、本論分では
TMR(d, S) = TMR (d + db, S) db: ビルドアップ深
としてCFを計算するという、”Modified Batho-Power-Law”の提案である。dが0の場合、TMR(db, S) は全てのSにおいて1.0となり、深さ0における TMR(0, S) = TMR(db, S) = 1.0も成り立つ。
本論分では、上記実効深アルゴリズム (effective depth algorithm)、べき乗アルゴリズム (power-law algorithm)、そして上記のModified Batho power law法の比較を行っています。
CFを測定した結果により、筆者は以下を示しています。
1. 8MV X線, 10cm x 10cm field → Modified Batho Power Lawが最適
→ effective depth algorithmは数%過大評価
→ Batho power lawは数%過小評価
2. 8MV X線, 16cm x 16cm field → Modified Batho Power Lawは1%以内の差
3. 16MV X線, 10cm x 10cm field → 測定されたCFはModified Batho Power Lawとeffective depth algorithmの間に存在する。Modified Batho Power Lawは1.5%以内。
4. 16MV X線, 16cm x 16cm field →effective depth algorithmが最適。Modified Batho Power Lawは1.8%以内。
5. Co-60 γ線, 10cm x 10cm field →effective depth algorithmは3.5%以内の過大評価。Batho Power Lawが最適。Modified Batho Power Lawは最悪点において2%を超えない。
6. 16MV X線, 5cm x 5cm field →全てのアルゴリズムにおいて過大評価。
上記結果より以下がまとめられます。
1. 測定に使用したエネルギー(Co, 8MV-X線および16MV X線)および照射野においては、Modified Batho Power Lawは2%以内の精度を有す。
2. Standard Batho Power Lawは低いエネルギーで最良の結果を示すが、高エネルギーになるとかなり過小評価する。
3. コバルトのような低エネルギー: Standard Batho Power Law、中エネルギー: Modified Batho Power Law、16MVのような高エネルギー: effective depth algorithmが最良。
4. 最適な計算結果のために、上記3つのアルゴリズムは側方荷電粒子平衡が必須である。ゆえに、これが存在しない小照射野での結果は妥当ではない。
各施設において、どのアルゴリズムをどのような状況下において使用するのかは討論の上に決定すべきであり、また決定は尊重されるべきである。しかしながら、一般論としてどのアルゴリズムがより正確な線量計算に向いているかは各施設において検証すべきであり、TPSの性能を把握しておくことは有用と思われる。
詳細は論文で。