放射線治療と医学物理

放射線治療、特に医学物理に関する個人的記録

AAPMによるTBIに関する勧告

2008年07月01日 | TBI
第19号

American Association of Physicists in Medicine. The physical aspects of total and half body photon irradiation. AAPM report No. 17. Colchester, VT: American Institute of Physics, c/o AIDC, 1986.

1986年に発刊されたTBIにおける諸問題解決のためのAAPMの報告書です。
ここでは照射方法、基本的なファントムでの測定、患者での測定、および勧告が示されています。最後に勧告されている内容は非常に吟味されたものですが、実行はかなり難しい面が多く施設内での十分な議論が求められます。

1. 照射方法の選択
 もっとも重要な決定項目は、①使用するエネルギー、②治療距離、③体位(AP、LAT、またはその複合)、④線量率である。
使用するエネルギー選択の際の一助として、より高いエネルギーがより線量分布の均一化に役立ち、体位がLATの場合は特に高エネルギーが線量分布の向上に役立つ。ここではビルドアップは考慮されていないが、ビームスポイラーや電子フィルタ等のcompensatorにより線量分布の向上が可能である。また、Pulmonary toxicityと線量率に因果関係があることは証明されており、注意が必要である。

2. 基本的なファントムでの測定
 測定対象は水とし、最小サイズは30 x 30 x 30cm3とする。このような小さなファントムは散乱の欠如のために補正が必要。一般的な線量測定は次の3ステップからなる。
① 大照射野、ファントム(通常使用するような大きさ)を用いてビームの吸収線量への校正を行う。
② 全ビームが十分にカバーできるようなファントムによって得られた線量、かつ十分な散乱が得られる深いファントムでの線量に①の線量を変換する。
③ 個々の患者において、患者の厚み等を加味して補正を行う。
すべての照射野の外側に5cmのマージン、測定器配置の最大深より下に10cmのファントムを考慮すると、およそ200 x 50 x 40 cm3(400kg)となり、実際にファントムを用意することは難しい。ゆえに②を測定しようとすると、①に換算係数を用いて②を算出することとなる。
 測定器はエネルギー依存性の少ない検出器、基本的にトレーサブルな電離箱を用いる。照射野が大きい場合、照射されるケーブルも長くなり、放射線誘発電流も多くなる。この割合は、1ccの電離箱において1mのケーブルが照射された場合に、電離電流の1-2%に相当する。これを考慮するためには、照射されるケーブルを最小とすること、ケーブル内の電子平衡を十分担保するためにケーブルをビルドアップ材質でカバーすること、なるべく小容積電離箱は使用しないことがあげられる。
 線量の校正においては、
① 距離および照射野サイズは大照射野に合致させる。
② 大照射野における線量計のfactorを使用する。
③ 最小でも30 x 30 x 30cm3の水ファントムを使用する。
④ 測定値は十分な散乱状況下の値に補正する。
⑤ 遮蔽のためのトレイやcompensator、ビームスポイラーを日常使用するのであればこれらを装着して線量校正を行うべきである。
 大照射野において距離の逆二乗テストは実施すべきであり、計算値からの乖離が2%を超えるようであれば線量の校正は多くの距離で行うべきである。
 
3. In vivo測定
 In vivoでの測定はTLD等を用いておこなうべきである。その際、十分なビルドアップ材質を確保することが重要である。

 一方でFaiz M. Khanが書籍The Physics of Radiation Therapyの中でTBIの計算式を示している。
D/MU = k x TMR(d, re) x Sc(rc) x Sp(re) x (f/f’)2 x OAR(d) x TF
D: dose in cGy, k: 1cGy/MU(基準点)
TMR(d, re): 深さd, 等価照射野サイズ(re)におけるTMR
Sc(rc): アイソセンターに投影された照射野サイズにおけるコリメータ散乱係数
Sp(re): 等価照射野サイズにおけるファントム散乱係数

もちろん、アイソセンターにて取得されたTMRのデータや距離(f)の逆二乗が利用可能かどうかは検証する必要があるが、ここでは誤差が2%以内であればTBIで用いられるかもしれないと記載している。

 測定を行う際の参考としたい。

詳細は論文で。