放射線治療と医学物理

放射線治療、特に医学物理に関する個人的記録

大照射野におけるファントムサイズと散乱の関係

2008年07月01日 | TBI
第20号

E.B. Podgorsak, et al.: The influence of phantom size on output, peak scatter factor, and percentage depth dose in large-field photon irradiation, Med Phys, 12, 1985

TBIの基礎データを測定する際に巨大な水ファントムがあればよいのですが、実際にはそれを用意することは困難であり、多くの場では日常使用する大きさのファントムを使用して基礎データ取得が行われます(large field / small phantom)。しかし、このデータはAAPM report No. 17でも記載されているように、十分な散乱を加味したものではなく、full scatterを反映した水ファントムのデータに変換する必要があります。

本論分ではコバルトによるγ線、6MV-X線、10MV-X線の3種類の線質における出力係数およびPDDを利用して、日常使用するファントムから無限大の大きさのファントムへの換算係数を与えてくれます。

TBI測定環境における後方散乱係数の増減は重要なファクターのひとつですが、一般的にビームエネルギーの増加に伴い後方散乱の効果は少なくなります。本論分では拡張SSD(およそ4m)におけるデータとして、壁から線量計までの距離を70cmとしたと記載されています。

実際のPDD測定における換算係数の例として
照射野全開、コリメータ45度の10MV-X線、ファントムサイズ 30 x 30 cm2にてPDDを測定した際、50 x 50 cm2のファントム時の10 cmおよび20 cm深における値を推定する。
① 出力係数比: 0.997 / 0.985 =1.012
② PDD比: 84.5 / 83.8 = 1.008 (10 cm), 63.0 / 61.3 = 1.028 (20 cm)
① x ②により10cm深における換算値は1.021、20cmにおける換算値は1.040となる。

 同様に、照射野全開、コリメータ45度の10MV-X線、ファントムサイズ30 x 30cm2にてPDDを測定した際、75 x 75 cm2のファントム時の10 cmおよび20 cm深における値を推定する。
① 出力係数比: 1.000 / 0.985 =1.015
② PDD比: 84.6 / 83.8 = 1.010 (10 cm), 63.1 / 61.3 = 1.029 (20 cm)
① x ②により10cm深における換算値は1.025、20cmにおける換算値は1.045となる。

10MV-X線においては、75 x 75 cm2のファントムと無限大の大きさを持つファントムでは出力係数およびPDD値は同一であることが示されている。ゆえに、本データを使用すれば比較的大きなファントムを用意することなく測定が簡易的に行えると思われる。

詳細は論文で。