放射線治療と医学物理

放射線治療、特に医学物理に関する個人的記録

IMRT検証:線量許容値の決定方法

2008年08月10日 | QA for IMRT
放射線治療と医学物理 第33号

Parminder S. Basran, et al.: An analysis of tolerance levels in IMRT quality assurance procedures, Med Phys, 35, 2008

IMRTにおけるQAガイドラインの思想および方法論はAAPMよりレポートとして報告されています。このIMRTにおける独立したMUの計算として、各々のセグメント毎にチェックをすることは現実的に困難であるため、歴史的に電離箱およびフィルムを用いて絶対測定および線量分布の検証がなされてきました。ICRUのレポート24では線量計算の精度を5%と定めており、IMRTのプランが現実的に照射可能であるならば本規定値は考慮されるべきです。しかし、実際にはより優れたアルゴリズムの開発、より複雑なフルエンスパターンにともない、高線量および傾斜の少ない領域において2%-3%、高線量および急な傾斜の領域において4%程度の値が可能となってきています。結果的により少ない許容値が適用されるようになってきていますが、国際的なstandardとなりうる指標は存在せず、また上記のようなわずかな値を採用する根拠も十分に記載されていない状況にあります。ゆえに本論文は許容値を提案する上での状況を報告することにあります。
筆者が目的としているのは下記です。
1. 2つの異なるIMRT-QAプロセスの結果の解析(独立したMU計算および2次元ダイオードアレイの測定)
2. IMRT-QAとして実施された異なる方法論間の関係が得られるか。
3. より効果的なIMRT-QAプロセスが可能かどうかを判定するためのdecision tree。
これらの目的はIMRTプランニング、独立したMU計算、ダイオードアレイ測定によって記録される乖離の統計的評価(片側および両側t検定、Fisher’s F検定)によって行われています。
(本報告では使用すべき許容値を報告するのではなく、IMRT-QA結果の解析が実際の臨床現場において適切な許容値を選択する際に役立つよう、ガイドラインを提供することを目的としている)

解析は過去3ヶ月のデータであり、前立腺、頭頚部、肺に区分し、全MU値、光子ビーム、処方線量値、fraction毎の計画線量が記録された。

本報告はカナダからのものですが、非常に興味深いIMRT-QA decision treeが示されています(論文後半において改定されます)。
1. 全てのIMRTプランは、まず別の独立したMU計算(IMSURE)にてチェック。
2. もし治療部位が前立腺の場合、上記のMU計算による結果の乖離が個々のビームにおいて5%以内、全てのビームの合算で3%以内の場合、測定は行わずQAは終了(ただし、1回の処方線量が3Gyを超える場合は除く)。
3. 上記許容値が超えた場合、および前立腺以外の場合はダイオードアレイによる2次元測定行う。
4. 各々のビームをsolid phantom(30 x 30 x 30cm)に置き換え、ガントリ角度およびコリメータ角度を0とし、アイソセンターを10cm深(3 x 3mmのresolution)に設定。この10cm深における平面の線量分布をダイオードアレイ(MapCheck)と比較。γ indexのCriteriaは3%-3mm、10%以下の線量はカット。個々および全てのビームの線量の乖離、γ値、(MapCheckの校正は測定前に22cm X 22cmの照射野を用いてなされている)
 
結果は以下である。
1. 独立したMU計算(IMSURE)とTPSの比較。前立腺および頭頚部照射ビームにおいて個々および全てのビーム線量の乖離は統計的に有意でない(治療部位による差はない)。しかし、肺は上記2種類に比較し有意な差が見られる。(Fisher’s F test)
2. ダイオードアレイとTPSの比較。全ての測定結果(乖離)は測定誤差内に存在し、非常に良好な結果となっている。γ分析におけるγ値の平均は前立腺と頭頚部、前立腺と肺、頭頚部と肺で有意差が認められた(片側t検定)。(IMRTの複雑さに起因)
3. ダイオードアレイと独立計算ソフト(IMSURE)の比較。総線量および個々のビームの線量の乖離に関連性はない。しかし、個々のビームにおいて25%の乖離も観察されている。これは小さな線量投与の場合に生じている。これを除けば10%程度である。
上記データを利用した統計的解析(95%信頼区間)から導かれた改定許容値は以下である。
独立した線量計算:total. 3%, Beam. 5%
ダイオードアレイによる測定(頭頚部以外) total. 2%, Beam. 3%, Gamma 95%
ダイオードアレイによる測定(頭頚部以外) total. 2%, Beam. 3%, Gamma 88%

結論および勧告は以下である。
1. MUの妥当性確認における総線量の乖離は照射部位に依存しない。
2. 独立したMUの検証結果の良否はダイオードアレイの測定結果の良否と関与しない。
3. 個々のビームのMU計算による検証を行う際乖離値が大きくなることがあるが、新しい線量ポイントを再選択することで少々利益がある。
4. 照射するに安全と考えられるIMRTプランのQA結果の統計的解析は、IMRT-QAにおける洗練された許容値の設定に用いることができる。

 個々の施設は自身のQAプロセス、使用する装置や必要度に応じて許容値を作成すべきである。QAテストの通過許容値はIMRTの計画が安全であることを暗に示すものではなく、責任ある認定医学物理士によってIMRTの計画が安全かどうかは判断される必要がある。

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筆者も記載しているように、IMRTの許容値の選択は使用している機器や必要性が異なるために各施設にて行うべきである。IMRTの許容値の設定方法が示されたことにより、現場でのcriteriaの設定が容易となった。設定の際に参考としたい。

詳細は論文で。



 




術中照射アプリケータ装着時のエネルギースペクトルの変化

2008年08月04日 | QA for TPS
放射線治療と医学物理 第32号

Peter Bjork, et al.: Comparative dosimetry of diode and diamond detectors in electron beams for intraoperative radiation therapy, Med Phys, 27, 2000

 シリコンダイオードおよびダイアモンド線量計を用いて、術中照射アプリケータ装着時の線量測定の特徴をまとめた論文です。水の実効原子番号は1-20MeVのエネルギー領域においておよそ3.3であり、ダイアモンド線量計の6、シリコンの14は水に比較的近いといえます。シリコンダイオードを用いた線量計は、有効体積が小さく空間分解能が高いため、一般的に電子線の比較測定に良く用いられており、また電子線測定におけるreferenceとしてダイアモンド線量計も有用視されています。
 水の吸収線量=検出器の実効点における吸収線量×平均制限質量衝突阻止能比(水と検出器)×擾乱係数 で表示されます。この擾乱は検出器の材質、容量、実効原子番号、密度、電子のエネルギー、測定深に依存します。ゆえに一般的に測定時に電子線のエネルギースペクトルや角度分布が認識されている必要がありますが、モンテカルロ法を除いてその状況を認識するのは不可能です。
 一方で術中照射装置を装着した際には通常のアプリケータとは異なり、低エネルギーの電子線が多く含まれ、結果的にその平均的な散乱角は大きく、エネルギースペクトルは変化します。この変化はビルドアップ領域に大きく現れ、術中照射用アプリケータを装着した際にはビルドアップが小さくなります。これらのことから、衝突阻止能比や補正パラメータが測定の環境に依存せずに一定であり、読値が直接水の吸収線量を反映していることが望まれます。
 本論分では、0-20MeVの電子エネルギーにおける水と炭素および水とシリコンの質量衝突阻止能比が示されています。ここでは、1-20MeVの領域において炭素/水はほぼ一定であり、シリコン/水は5MeV以下のエネルギーを除いてほぼ一定の結果が示されています。
 
 ここではp-typeシリコンダイオード、NACP平行平板型電離箱、ダイアモンド検出器が使用され、下記について調べています。
1. シリコンダイオードおよびダイアモンド線量計の方向依存性
2. シリコンダイオードおよびダイアモンド線量計の線量率依存性(NACPで規定)
3. 上記3種類の線量計におけるPDD, profile

 結果は下記です。
1. 方向依存性はシリコンダイオードに比較してダイアモンドが低く、6MeVの電子線において±140度の領域の方向依存性は96%-103%(ダイアモンド)、92-102%(シリコンダイオード)と報告されており、これはエネルギーが高くなるに従い小さくなる傾向にある(20MeV: 97%-101%(ダイアモンド)、96-100%(シリコンダイオード))。術中照射用アプリケータを装着した際の電子線エネルギーは浅い領域において、より低いエネルギーの電子を多く含んでいる。これらの領域では方向依存性が小さいことが特に望まれることから方向依存性は重要である。しかし、結果的には両方の線量計において小さな値であることが確認された。
2. NACPの再結合補正は2点電圧法で確認され、全てのエネルギー、高線量率において0.4%以下であることが確認された。そのNACPの電離値を基準とした、シリコンダイオードおよびダイアモンド線量計の線量率依存性は、ダイアモンド線量計において線量率が高くなるに従い感度が減少し、シリコンダイオードは線量率の増加に伴いわずかに増加していることが確認された(20MeVで最大1%)。(PDDやprofileの測定ではダイアモンドによるこの値は補正)
3. 3種類の測定器により比較された6MeVのPDDは、線量の低下領域において±1%、0.5mm以上の相違が生じている。これは20MeVになると±1%、0.5mm以内の相違となっている。これは水と炭素および水とシリコンの質量衝突阻止能比が低いエネルギーにおいて乖離していることに起因にしている。また、水の表面においては3種類の線量計で値が異なっているが、これは空間分解能の違いに起因すると記載されている。しかし吸収線量の比較測定において質量衝突阻止能比の違いによる影響は小さいと筆者は記している。

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 術中照射のアプリケータを使用する際、電子線のスペクトルの変化を理解することが重要である。この変化が線量計に及ぼす影響を考慮し、測定結果を理解することは重要と思われる。

詳細は論文で。

術中照射用アプリケータの線量の特徴

2008年07月31日 | QA for TPS
放射線治療と医学物理 第31号

Edwin C. McCullough, et al.: The dosimetric properties of an applicator system for intraoperative electron-beam therapy utilizing a Clinac-18 accelerator, Med Phys, 9, 1982

 術中照射用ツーブスを装着した際の電子線-線量測定の特徴をまとめた論文です。ここで使用されている直線加速器はVarian Clinac 18であり、6, 9, 12, 15, 18MeVの電子線が照射可能です。構成は以下の3つに分けることができ、カット面までの距離は100cm(FAD)。
1. アクリル製円形コリメータ(4, 5, 6, 6.5, 7, 7.5, 8, 9 cm直径)カット面は水平。
2. 15度、30度に切り取られた円形コリメータ。(15度、30度、5-8 cm直径 0.5cmきざみ)
3. 矩形コリメータ(8x9, 8x12, 8x15cm^2)
 全てのアプリケータは直径10.5cm、長さ24cmのアルミニウム製のtubeに装着することができ、このアルミニウム製tubeがガントリに装着される。
 
 本論分にて評価している線量パラメータは、Given dose / MU, 中心軸の表面線量、Dmax, d90%, d30%、X線含有、Cross fieldのflatness, 照射野、半影である。

 筆者は以下について記している。
1. アプリケータの特徴はJAWの大きさに依存することが考えられる。しかし、4cmφおよび9cmφのアプリケータを装着した際のJAWサイズの変更(5cm, 10cm, 15cm)において表面線量は変化しない。
2. JAWサイズを変更した際のX線の含有は、ほとんど変化しない。しかし、低エネルギー(ここでは6MeV, 4cmφ)ではJAWサイズを10cmから5cmにすると3%程度増加する。
3. JAWサイズを変更した際の出力は、JAWを小さくするにしたがいかなり減少する。それゆえ10cm x 10cmかそれ以上の照射野が好まれる(円形コーンの場合10cm x 10cmの照射野が最適、矩形アプリケータの場合は15cm x 15cmが最適)。
4. 90%の線量となる深さはJAWサイズの変更にともない、エネルギーが18MeVのように高い場合変化する。18MeVにおいてJAWサイズを15cm x 15cmから10cm x 10cmに変更すれば2-3mm増加する。
5. 18MeVのような高エネルギーかつ小さなアプリケータの場合、アルミニウムtubeとアプリケータの接続部からの漏れ放射線が大きく、半影が大きくなる。これを防止するためにはJAWサイズを小さくするか、3mmの鉛を設置するのが有効。
6. エネルギーが12MeVを超えると、アプリケータの直径(JAWは10cm x10cm)に関わらず表面線量は89%を超える。
7. アプリケータの直径(JAWは10cm x10cm)が小さくなるとガントリーヘッド由来の低エネルギー光子の量が減少し、表面線量は下がる。しかし、5cmよりも小さくなるとアプリケータが中心軸に近くなり、このアプリケータ壁からの電子線が中心軸線量に大きく影響するようになるため、表面線量は増加する。
8. 5cmを超えるアプリケータでは90%深は変化しない。それよりも小さなアプリケータでは電子線の飛程にともない減少する。
9. 斜めにカットされたコリメータでの90%深は少し浅くなる。6.5cmφ(実際は6.7cm)、30度のコーンの場合、3mm浅くなっている。
10. 斜めにカットされたコリメータを使用して、斜めに照射しても等線量曲線は表面に平行となる。
11. 斜めにカットされたコリメータでの照射野は通常の円形コリメータに比較し、(cosθ)-1を乗じることにより近似できる。ここでは照射野が67mmのコーンに対して、67mm / cos30°= 77mmという結果が示されている。
12. アプリケータサイズに比較し90%の等線量曲線は少なくなるので、マージンの設定は重要であり、評価された腫瘍サイズよりも少なくとも1cmは大きなアプリケータサイズを選択する必要がある。(斜めにカットされたアプリケータの場合、等線量分布曲線を考慮し、さらに大き目のアプリケータが有効かもしれない)
13. 一般的に術中照射の際にSSDを100cmとすることは困難である。そこでVirtual source locationを使用した距離の逆二乗は有効である。高エネルギーにおいては1%以内の誤差で計算できるが、6MeVのような低エネルギーかつ小さなアプリケータでは1.5cm程度の距離のoffsetにおいても3%程度の誤差が生じる。
14. 中心軸の線量を10%程度に抑えるためには、6MeVで2.4mm, 9MeVで4mm, 12MeVで4.8mm, 15MeVで6.4mm, 18MeVで7.2mmの鉛が必要。照射野の形状を変化させる場合に有効。

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 術中照射時の線量分布の把握は特殊なアプリケータを使用するために、より専門的な知識が必要である。斜めにカットされたアプリケータでのd90%が浅くなる点は重要であり、線量測定の際の参考としたい。

 詳細は論文で。


術中照射用斜カットアプリケータのPDD測定

2008年07月28日 | QA for TPS
放射線治療と医学物理 第30号

Robert A. Dahl, et al.: Determination of accurate dosimetric parameters for beveled intraoperative electron beam applicators, Med Phys, 16, 1989

 術中照射のアプリケータにはフラットタイプと斜めにカットされたタイプが発売されています。各々のアプリケータを使用し、正確な照射を行うためには正確なDmax / MUの把握が不可欠です。正確なDmaxの評価のためには照射されたビーム軸にそって測定が得られる必要があります(PDD)。本論文は斜めにカットされた術中照射用のアプリケータを装着した際のPDDを正確に測定するために、水ファントムを斜めに配置し、より正確にPDDを測定できるよう改良したという趣旨の論文です。

 斜めにカットしたアプリケータを用いた際、水ファントムを術中照射用アプリケータのカット部と同じ角度に傾け、ガントリー角度とカウチの高さをアプリケータが水面に平行になるように調整します。ここでは0.3ccの電離箱が使用されています。

 従来斜めにカットされたアプリケータでのdmaxの決定は、各々のエネルギー毎、基準となるアプリケータのdmaxにcosθ(θ: カット角度)を乗じることで得るという手法で行われ、この値の深さにおいてDmax / MUを測定する手法が用いられていました。

 ここではsolid phantomのdmax(standard cone)を使用して計算によって得られたdmaxでのDmax/ MUと水ファントムを斜めにおいて測定したDmax/ MUおよび水ファントムを傾けずに計算により求められたdmaxに線量計を設定して測定したDmax/ MUと水ファントムを斜めにおいて測定したDmax/ MUの比較が示されています。

 結果は以下である。
1. 値の相違はエネルギーが増加するに従い減少する(~12%)。
2. 角度をつけずに配置した水ファントムでの比較結果において、coneサイズが増加すれば相違は減少する。

6MeVや9MeVのようなシャープなdepth dose peakのような状況では、正確なdmaxを得ることは特に重要である。カットされたアプリケータでのcentral axisはファントムの表面に対して角度がつけられており、dmaxの決定は困難である。ここではsolid phantomや傾けずに配置した水ファントムとの比較結果として12%程度の相違が示されている。

線量測定をする際の参考としたい。

詳細は論文で。





3次元IMRT線量検証PRESAGEの紹介

2008年07月28日 | QA for IMRT
放射線治療と医学物理 第29号

Mark Oldham, et al.: An investigation of the accuracy of an IMRT dose distribution using two- and three-dimensional dosimetry techniques, Med Phys, 35, 2008

複雑な線量分布を作成することのできるIMRTは線量分布および吸収線量の検証が必須である。この線量検証は分布測定のためにフィルムやダイオード線量計を用いて2次元的に行われ、吸収線量の評価には極小照射野用電離箱を使用して測定がなされている。3次元的な線量分布の評価が可能であれば、その評価を行うことがより好ましいが2次元検出器を用いて3次元評価を行うのは現実的には困難である。

 従来3次元検出器といえば3D gelが使用されてきた。これは酸素に感度があり、特別な配慮を必要とする。そこで、最近開発されたPRESAGEはsolid polyurethane plasticで作成され、外部コンテナを必要としないことから使用が容易であり、放射線により緑色に変色することを利用している。本論分はこのPRESAGEの変色をOptical CT(He-Neレーザ)にてread outし、IMRTの線量検証を行うことについて記載した論文である。

 使用されたPRESAGEファントムは16cm直径、11cm高であり、実効原子番号が8.3、密度が1.07g/cm^3、CT値は200以下である。ファントムのread outは前述のOptical CTを使用し、1度ずつデータを収集、4時間(単一のスライスで7min)かけて全scanを行う。

 ファントムの使用方法は通常の患者の治療時と同様であり、PRESAGEを治療計画前にCT撮影し、治療計画を行う。このCTによる線量は1cGy以下であり実際の測定に問題ないことが過去の検討にて得られている。本論文ではこのPRESAGEファントムを4つ積み重ね、その間にガフクロミックフィルムEBT(3枚)を挟み、その3枚の位置で怒った顔、普通の顔、笑った顔のIMRT field(11 field, 6MV, PTV: 6Gy)をEclipse(PBC)にて作成し、その線量評価をしている。また、EBTおよびPRESAGEの両方について、線量評価の際に照射前後に計測を行い線量による変化を得ている。

 結果は以下である。
1. 光CTによるレーザの反射によるエッジアーチファクトが発生するため、PRESAGEによる検討においてファントムの外側3mmの評価は困難である(利用可能な線量計の領域は96%)。
2. EBTによる評価において、ノイズ領域を除けば概ね治療計画との一致が見られる。
3. PRESAGEによる利点は3D線量分布を作成することができる点であり、これによりSagital viewおよび計測によるDVHの評価が可能となっている。しかし、DVHにおいて線量20%以下の領域は上記エッジアーチファクトにより線量の一致が見られない。
4. Gamma indexによるpass rate評価として
PRESAGEとEclipseの3次元評価:γ<1.0 = 92% (外側3mmを除けは96.0%)1.0の領域はPRESAGEの外側3mmの領域およびビルドアップ領域に集中している。これはPRESAGEの線量描出能力およびTPSのビルドアップのモデリングの不正確さが関係している。

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複雑なIMRTの線量の検証は可能であれば3次元評価が望まれる。まだまだ使用するに当たってlimitationがあることは筆者も認めているが、使用が容易、安価での提供、と状況が整えば国内での臨床現場でも登場するかもしれない。AAPM2008では今年も発表されている。

詳細は論文で。

定位照射用マスク固定のCTによる再現性評価

2008年07月24日 | QA for Stereotactic Radiosurgery
放射線治療と医学物理 第28号

Jochen Willner, et al.: CT simulation in stereotactic brain radiotherapy – analysis of isocenter reproducibility with mask fixation, Radiotherapy and Oncology, 45, 1997

従来頭部に対する定位的放射線治療はピンを用いて侵襲的に固定が行われ、分割照射を行うことには限界があったが、最近はより固定精度の良いマスクシステムが開発されFDAの認可も得られている。しかし、着脱式の場合再装着した際の位置ずれが問題となりそのQAは重要である。本論文ではBrainLABの着脱式マスクを使用した再現性をCTにて評価している。

方法および討論でも述べられているが、CTを用いたマスクの固定精度の検証はLINACの近くにCTが配置されている必要性がある。ゆえに診断用のCTと兼ねている施設では少々困難な検証方法かもしれないが、これにより3次元の位置ずれ(3D-vector)が評価できる。位置ずれ評価後、マスクを装着したままLINAC室に入室し治療を行っている。

22回のCT検証(患者数16名)の結果、平均的なずれとしてlongitudinal方向は0.4mm、lateral方向は-0.1mm、anterior-posterior方向は0.1mmであり、3D vectorとして2.4mm(S.D.1.3mm)と報告されている。

筆者の結論は以下である。
1. 高精度な頭部定位放射線治療のQAとしてCT検証は重要である。
2. 非常に小さなターゲットの治療においては、分割照射においてもsetupの再現性向上のためにCT検証が推奨される。
 
頭部固定の再現性および正確性は定位放射線治療において重要な項目のひとつである。上記結果から再現性よく固定されていることがわかるが、個々の患者において固定されている保証を得ることは重要と思われる。その際本論文は有用である。

詳細は論文で。




Eclipseに搭載されたAAAの計算精度

2008年07月23日 | QA for TPS
放射線治療と医学物理 第27号

Ann Van Esch, et al.: Testing of the analytical anisotropic algorithm for photon dose calculation, Med Phys, 33, 2006

線量計算方法として使用されてきたPBC法に変わるアルゴリズムとして提案されたanalytical anisotropic algorithm(AAA)の紹介です。このアルゴリズムはEclipseに搭載され、主として肺のような不均一な領域の線量計算精度の向上が得られています。またこのアルゴリズムはPrimaryとSecondaryの光子源および含有電子の合算として計算され、各々のカーネルはモンテカルロで事前に計算されたものを使用しています。

 筆者は6MV, 15MV, 18MVの光子を使用して、種々のfieldにおけるPDD, OCR, output, wedgeの有無におけるOCR、不均一なファントム(コルク)を使用した際のPDD, OCR、またIMRT fieldを実測し、PBCおよびAAAとの比較をしています。

 検討された方法が多いため必然的に結果も多いが、まとめると以下のようになる。
1. 水ファントム中のPDDはPBCの方が良好。特にAAAはビルドアップ領域において正確な計算ができていない。この効果はエネルギーが高くなればなるほど大きくなる。
2. 水ファントム中のOCRはAAAの方が良好。特に半影領域および低線量領域においてAAAが優れている。
3. コルクを含む不均質な物質におけるPDDにおいて、肺(コルク)内の線量はAAAが良好、肺の外(コルクの後ろ側)はPBCが良好。特にコルクの後ろ側のAAAの線量計算精度は良くない。AAAは高エネルギー光子の結果が良好。
4. コルクを含む不均質な物質におけるOCRにおいて、AAAが良好。
5. AAAの計算時間はPBCに匹敵する(むしろPBCよりも早い)。

肺の放射線治療計画において、V20およびV25は副作用発現の観点からも重要視されます。PBCで計算していた施設がAAAに乗り換える際には肺のDVHが減少することに注意が必要だと記されています。

詳細は論文で。

IMRTのフルエンスの滑らかさと線量計算精度の比較

2008年07月21日 | QA for IMRT
放射線治療と医学物理 第26号

Nicolini Giorgia, et al.: What is an acceptably smoothed fluence? Dosimetric and delivery consideration for dynamic sliding window IMRT, Radiat Oncol, 23, 2007

IMRTはOARへの照射を可能な限り低減しつつ、PTVに最適線量を投与する方法です。通常はinverse planningが用いられ、いわばコンピュータに最適な照射方法を考えてもらいます。しかし、強度変調を強くすればするほど複雑な線量分布は作成できますが、それが照射時に再現されるかどうかは別問題です。本論文では、3つのIMRTのケースを想定し、Webbにより提案されたMI (modulation index)と、fluence smoothing parameter (s25, s50, s80: X, Yは同値)、線量計算アルゴリズム(Eclipse: AAA or PBC)、線量計算時の空間分解能(2.5mm or 5.0mm)、照射時の特徴を調べています。

照射の信頼性は照射前の検証作業にて判定しています。ここではPortal dosimetry (PV-aS500)を使用して水dmaxにおける吸収線量を把握し、TPSから得られる値と比較しています。評価の詳細はGamma criteria: Δ3%-Δ3mm, JAWによって規定される範囲において、γ>1.0となる割合を算出。この値が5%以内となることを目標とし、5-10%で原因精査、10%以上でre-planningというQAを実行しています。

ところで、より多くのMUを必要とするかなり複雑な強度変調をした場合、organ motionや生物学的な問題が関係し、それが結果として二次発癌の要因ともなり得ると論文中にも記載があります。ゆえに“それなりの”強度変調を実施するために、MIがよき指標となり、またMIの閾値<19が有効と報告しています。 Smoothing parameterの増加は平均的なSliding window幅の増加につながり、結果的にMIを減少させ、γ>1.0の割合を減少させています。また、本論文中の検討では、smoothing parameterを増加させてもPTV, OARのDVHにほとんど影響しないことが示されており、本論文ではs80, AAA, 2.5mm gridの組み合わせが最適であると報告されています。

強度を変調させてOARの線量をなるべく低減し、かつPTVには十分な線量を投与するIMRTは非常に魅力的な照射方法であるといえます。しかし一方で計算アルゴリズムが複雑であり、それに付随するパラメータが種々あることからその選択は重要であり、本論文の様な検討は確認の価値があるかと思います。

詳細は論文で。

不均質計算TAR比, Batho, equivalent TARの性能

2008年07月14日 | QA for TPS
放射線治療と医学物理 第25号

T. R. Mackie, et al.: Lung dose corrections for 6- and 15-MV x rays, Med Phys, (12), 1985

肺等の不均質物質を含む物体でのconversion factor(CF)を算出する方法はいくつか提案されています。ここでは従来Co-60のγ線を用いて行われてきた3つの技術(the ratio of TAR, Batho power law, equivalent TAR)を比較し、測定結果と比べた結果が報告されています。また、誤差要因としてあげることのできる荷電粒子平衡のlossについて、モンテカルロコード(EGS)を用いて詳細に報告しています。

測定方法として、照射エネルギーは6MVおよび15MV X線。ファントムはポリスチレン、コルク、ポリスチレンの順番で配置し、ターゲット-線量計間距離を一定にして測定。コルク厚を増加させた(~7.8cm)場合、また追加としてポリスチレンを追加した場合(7.8cm~15.5cm)にて検討。

6MV X線、10cm X 10cm: Batho power lawが最適(ビルドアップ領域を除く)。Equivalent TARはコルク内でよい正確性を示さず、境界面で2.6%の誤差。The ratio of TARはさらに悪い結果となり8.2%の誤差。

6MV X線、5cm X 5cm: 測定された結果よりも計算されたCFは全て大きくなっている。しかしBatho power lawにより計算されたCFが近く、Equivalent TAR、The ratio of TARの順番で結果が良い。

6MV X線、35cm X 35cm: 10cm X 10cmの照射野とほぼ同じ傾向を示しているが、CFは10cm X 10cm照射野に比較して小さな値となっている。

15MV X線、10cm X 10cm: Equivalent TARが最適。Batho power lawはpoor。

15MV X線、35cm X 35cm: The ratio of TARが最適。Batho power lawはpoor。

15MV X線、5cm X 5cm: コルク内は全ての方法において大きくずれている。また6MV X線に比較してより強く荷電粒子平衡のlossが見られる。

上記CFのズレについて、コルク内の荷電粒子平衡は以下のように記されています。
平均的なlongitudinal方向の(15MV-X線による)電子の飛程が水において3.0cmであれば、コルクにおいては9.0cmと拡張される。側方向には上記の1/3から1/2程度(3-5cm)散乱する。コルクに照射した場合、照射中心における荷電粒子平衡を担保するには、この側方レンジの2倍(6-10cm)の照射野が最低必要となる。

上記内容をEGSを用いてKERMAと吸収線量に分けて再検証しています。

その結果、下記についてまとめています。
不均質補正に関する3つの方法はKERMAにおいてのみ適切な方法である。高いエネルギーのX線が低い密度の物質に入射した際には荷電粒子平衡のlossが生じ、線量が有意に下がる。

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 照射エネルギーや照射野に関連して正確性が変化するアルゴリズムを完全に理解することは容易ではありませんが、状況に合わせたアルゴリズムの選択も重要です。

詳細は論文で。


肺不均質測定:電離箱壁の材質と厚さの関係

2008年07月13日 | QA for TPS
放射線治療と医学物理 第24号

Thomas Mauceri, et al.: Effects of ionization chamber construction on dose measurements in a heterogeneity, Med Phys, 14, 1987

 不均質な物質を含むファントムでの測定において、電離箱の壁材質が評価線量に影響を与えるのか否かを検討した論文です。

 肺等における線量を把握する際に不均質な物質を組み合わせ、電離箱をその中に配置して測定することは日常行われています。電離箱壁は比較的薄いものが使用されていますが、測定対象の物質と電離箱壁の材質を合わせるという作業は行われていません。

 しかし、厳密にはAAPM dosimetry protocol(TG21)にも示されているように、壁材質の違いは線量測定の誤差要因になるといえます。

 筆者は肺および水等価ファントム内での測定において、電離箱壁の材質が与える影響を調べています。そのためにひとつは水等価、もうひとつは肺等価な材質から2つの平行平板型電離箱を作成しています(ionization collection volume: 2.5 cm diameter, plate separation: 0.2 cm)。(比較のために、指頭型電離箱(0.1cc)も使用しています)。

 測定対称のエネルギーはCo-60 γ線、6, 10, 20MV X線、照射野は10cm x 10cm。測定深は0.5 cmから13 cmとし、最大測定深から10cm下にSolid Phantomを設置しています。不均一物質を含むファントムは、上から5cmのSolid Phantom、13cmのLung Phantom、そして十分な厚さのSolid Phantomとなっています。

ここでのConversion Factor(CF)算出式は下記のとおりです。
CF(d) = (Q/m)lm / (Q/m)sw X (L/ρ)lm / (L/ρ)sw X (μen/ρ)lm / (μen/ρ)sw
(Q/m): 単位質量あたりの収集電荷
(L/ρ): 平均制限衝突阻止能
(μen/ρ): 質量吸収係数
ここで(L/ρ)lm / (L/ρ)sw X (μen/ρ)lm / (μen/ρ)sw = 0.998±0.005とされていることから、単位質量あたりの収集電荷の比がCFを示すことになります。

 線量計と均一、不均一ファントムでの組み合わせは
1. 均一: 指頭型電離箱, 不均一: 指頭型電離箱
2. 均一: Solid Phantom平行平板電離箱, 不均一: Solid Phantom平行平板電離箱
3. 均一: Lung材質平行平板電離箱, 不均一: Lung材質平行平板電離箱
4. 均一: Solid Phantom平行平板電離箱, 不均一: Lung材質平行平板電離箱
となっています。
4番の測定では異なる線量計が使用されるため、感度の補正が必要となります。本論文ではSolid Phantom 5.5cmから15.5cmの深さにおいて、2cmずつnormalization factorを求めることにより補正しています(各々のエネルギー毎)。

CFを測定した結果により、筆者は以下を示しています。
1. 上記線量計とファントムの組み合わせにおいてCFの違いが生じている。しかし水等価壁であり、かつ壁が薄い(~0.1 g/cm^2)電離箱においては電離箱壁およびファントム材質の違いによる影響は見られなかった。
2. 上記組み合わせ4と2の間には、Co-60 γ線、10MVおよび20MV X線のエネルギーにおいて有意なCFの違いが生じている(6MV X線は測定の不確かさ内)。これは0.4 – g/cm^2の水等価壁を有す電離箱は、Co-60においてγ線が吸収されるためにCFが低くなり、また10MV, 20MV X線においては散乱線の増加によりCFが高くなることで肺物質における測定に影響を及ぼしている。
3. サイズが小さく、水等価かつ薄い壁を有す電離箱においては、肺の不均一のCFを電離値の比から決定することができる。

肺の補正の精度確認は最近の医学物理においても重要な項目のひとつです。これはその際どのような電離箱を選択するのかを考慮する際に役に立つ論文です。

詳細は論文で。