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ねこにっき

ごはんのこと。ねこのこと。お散歩のこと。大好きなことだけ書くブログ。

潜水服は蝶の夢を見る。

2008-02-16 | 映画のこと
今年初めての映画です

潜水服は蝶の夢を見る

2007年 フランス=アメリカ(112分)
監督 : ジュリアン・シュナーベル
原作 : ジャン=ドミニク・ボービー
出演 : マチュー・アマルリック 、 マリー=ジョゼ・クローズ 、 マックス・フォン・シドー

病院のベッドで目を開けたジャン=ドーは、自分が何週間も昏睡状態だった事を知る。
そして身体がまったく動かず、唯一動かすことができるのは左目だけだという事も。
ジャン=ドーは雑誌「ELLE」の編集者で、三人の子どもの父親だった。
彼は言語療法士の導きにより、目のまばたきによって意思を伝える事を学ぶ。

やがて彼はそのまばたきで自伝を書き始めた。
その時彼の記憶と想像力は、動かない体から蝶のように飛び立った…。


潜水服は蝶の夢を見る - goo 映画


世界でも「ヴォーグ」「マリ・クレール」に並ぶ有名ファッション誌「ELLE」の編集長を襲った、突然の出来事。

脳梗塞の種類の一つである「ロックト・イン・シンドローム(閉じ込め症候群)」に襲われ、
身体を動かすことはおろか話すこともままならない、重度の麻痺を負ってしまう。



劇中でしばしば目にする潜水服はそんなジャン=ドーの心の内を表し、
非常に苦しく重い映像でしたが、
彼が自分を哀れむことをやめ、残された「麻痺していないもの」に気づいたとき、
世界は蝶のように軽く、無限に広がるのです。


残された左目のほかに麻痺していないもの。それは彼の「記憶」と「想像力」であること。
このことに気づいた瞬間蝶は孵化を始め、時空を越えてあらゆる世界へ飛び立ち、ジャン=ドーの心は劇的に変化を遂げていきます。

この瞬間の映像が本当に美しいです
「個」としての人生から「自己を認識する存在」へ生まれ変わる時、
世界は「自分を取り巻く、愛する人たち」の存在にも気づくことが出来るのです。


またジャン=ドーは映画の中で度々自分を振り返るのですが、
その中の言葉がひとつひとつ、胸に沁みていきます。
「自分の人生は小さな失敗の連続だった」。
でもそれでも、「素晴らしい日だ」と続いていく。


「自分」に気づくこと。
「自分を愛する存在」に気づくこと。
感謝をしたり、希望を信じたり。



映画館で観るのにふさわしい、鮮やかな映像と音楽の数々。
静かな感動に震えながら、自分もまた蝶のように羽ばたく夢を見るのでした。

コメント (4)
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最近の映画つれづれ。

2007-12-02 | 映画のこと
最近観た映画の備忘録です



ヘアスプレー

オリジナルはジョン・ウォーターズの同名カルトムービー。
それをミュージカル化し、更にリメイク版となっての新登場です

いい意味で現代風にアレンジされていて、時代設定こそ古いものの、
新人のニッキー・ブロンスキーののびのびとした演技・歌唱力にはびっくりしました
ママ役のジョン・トラボルタが一番興味津々だったのですが、
おっきくて可愛らしいママの役をとてもキュートに演じてて、そこがまた楽しめました




ディスタービア

これは自分ではなかなか観ないタイプのチョイスでした
良くも悪くも、B級サスペンス(青春あり)系映画・・・って感じです
設定としては「裏窓」に似てるのかな?っと思うところもありましたが、
見せ方としてはもう少し引き込まれたい!という部分がなく、ちょっと惜しい感じでした

これがイギリス映画だったら、導入部分を生かしてかなり面白い作品ができたかも・・・と
余計なことを思ってしまったり。
ドキドキハラハラも多少はありましたが・・・少しだけ不完全燃焼な感じなのでした




犯人に告ぐ

前評判はあまり良くなかったのですが、実は3作品の中ではこれが一番私的に良かったです
最近よくあるサイコ犯人と刑事の謎解き・・・というよりは、
刑事と警察・取り巻くメディア、人間の駆け引きや思惑を楽しんだ方が良い映画です
豊川悦司、渋くて良かったですねあのキャラクターと世界観でシリーズ物にして欲しいくらいです
「犯人に告ぐ。・・・」のあたりの決め台詞だけを聞く為に、もう一度観に行っても良いくらいでした



こうしてみると、今年は映画を観た本数も少なく、
あまり感動も少なかった気がして残念です
個人的には「世界最速のインディアン」が一番良かったかも知れません

でも12月後半にはお正月向けに良い映画が続々と公開する予定
それをまた楽しみにして、少しずつチェックしておこうと思います~
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最近の映画数々。

2007-11-13 | 映画のこと
忙しい忙しいと言いつつも、
ちょこちょことヒマを見つけては映画を観ておりました

ただ私の好きな「ミニシアター系」ではなかったのでレビューを書いていませんでしたが、
備忘録程度に残しておこうかと思います



ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序

言わずと知れた、12年前のアニメです
当時既に14歳を軽く超えていた私は、
主人公に感情移入できないものの、人とのつながりへの恐怖、葛藤、
そして再生へのストーリーにすごく惹かれていたのを思い出します

今回の「序」は導入こそ同じものの、異なるストーリーと
統一感のある安定したアニメーション技術が素敵です
久しぶりに見てわくわくしたので、きっと「破」も観てしまうと思います




EX MACHINA -エクスマキナ-

日本で初めて「フル3D」という技法を使ったアニメーション、
士郎正宗原作「APPLE SEED-アップルシード-」の続編です

やはり映像の美しさ、動きのしなやかさは群を抜いて美しく、
特に前半の生身での戦闘シーンは「これがアニメか」と驚くほど

今回はプロデューサーにジョン・ウー
音楽には細野晴臣 、テイ・トウワ、衣装にはプラダを起用したりして話題性はありそうなのですが、
ちょっとストーリーが一般的には分かりにくいかも・・・
でも久しぶりにスッキリする映画でした




ALWAYS 続・三丁目の夕日

これも続編です
最初は別な映画を観たかったのですが混雑していたので、急きょ予定変更して観た映画です
昭和の美しい情景、高度経済成長期で一生懸命幸せに生きようとする家族や
その周りの人々がすごく生き生きと撮られています

今回すごく良かったのが、小雪演じるヒロミです
自分の立場を考えて、健気にも身を引こうとするところ、
道端で思わず泣き出してしまう所は本当にいいシーンでした



ちなみに今週末はなんとか頑張って「ヘアスプレー」を観にいく予定
あの怪優ディヴァインの役をジョン・トラボルタが演じるとは・・・楽しみです
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キサラギ!

2007-08-06 | 映画のこと
久しぶりに、映画の話です

キサラギ

2007年 日本(108分)
監督:佐藤祐市
出演:小栗旬ユースケ・サンタマリア小出恵介塚地武雅香川照之


知る人ぞ知るアイドル如月ミキが自殺をして一年が経ち、一周忌追悼会に集まった5人の男たち。
―家元、オダユージ、スネーク、安男、イチゴ娘。
ファンサイトの常連である彼らはそこで初めて顔を合わせた。
それぞれオタク心を通わせながら、彼女の思い出話に花を咲かせる。
誰しもが「自殺なんかする娘じゃない」と思っていた。

そして誰かが「彼女は殺されたんだ」と。
この発言をきっかけに、男たちの侃々諤々の推理が始まった…。



ひとつの部屋の中で繰り広げられる“密室劇”。
日本映画には珍しい(?)ワンシチュエーション・サスペンスで、謎が謎を呼ぶ展開がとてもスリリングなのに、観終わるととても爽やかな後味のハートフルドラマ。そんな不思議な魅力の作品だ。
三谷幸喜の舞台劇を観ているかのような絶妙な会話劇を構築したのは、『ALWAYS 三丁目の夕日』で知られる脚本家・古沢良太と、「僕の生きる道」など秀作TVドラマを手がけてきた佐藤祐市監督。
映画界、TV界のそれぞれタイプがまったく違う人気者5人を巧く配置して、不協和音が奏でる“一体感”を作り上げた。

キサラギ - goo 映画



シチュエーションコメディ、サスペンス。
私の好きなタイプの映画です
レイトショーで見に行ったのですが、夜の遅い時間に見るのは本当にオススメです

「ファンサイトを通じて集まった5人のオタク」・・・という設定だけあって、
5人それぞれの個性が面白く話もテンポ良く進みます

そして、物語はいつか疑惑の核心に迫り始める・・・のですが、
その途中途中にも笑いがちりばめられていて、
5人が真剣なだけに余計おかしくて笑っちゃいます

そして最後まで感心してしまったのが、脚本です
物語の最初に誰かが話していたことが全て、最後に繋がる伏線の張り方
これはおみごとです
見終わって、ものすごくすっきりすると同時に、
オチが分かった段階でもう一度最初から見たくなるような、そんな映画でした
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『世界最速のインディアン』。

2007-02-23 | 映画のこと
ニュージーランドの最南端から、とてつもない男がやってきた。
バート・マンロー、63歳。若くはないし、金もない。
しかし彼には愛するマシン“インディアン”と、誰にも負けない情熱があった。
これは、奇跡のような大記録に挑戦した男の、
型破りで、愛すべき人生を描いた<真実の物語>である。


世界最速のインディアン
2005年ニュージーランド=アメリカ(127分)

監督:ロジャー・ドナルドソン
出演:アンソニー・ホプキンスクリス・ローフォードアーロン・マーフィー

ストーリー
ニュージーランド南部の小さな町、インバカーギル。小さな家に独り暮らしているバートは、早朝からバイクの爆音を轟かせる名物の老人だった。
家族もなく暮らしも貧しかったが、若い頃は優秀なエンジニアだった彼は、
自ら改良したバイクで数々の国内記録を残していた。

彼の夢は「世界最速」を目指すライダーの聖地、アメリカ・ユタ州のボンヌヴィルで世界記録に挑戦すること。
速度計さえついてないそのバイクが一体何キロ出せるのか、バートはどうしても知りたいが、
わずかな年金で暮らすバートには渡米など夢のような話だった。

しかし60歳を過ぎ、身体にもガタがきていることを実感すると、このまま夢で終わらせてはならないと一念発起する。
遥かユタ州まで資金も乏しく、右も左も分からない彼は出会った人々に助けられつつ、ようやくボンヌヴィルにたどり着く。

しかしそこで最大の問題が発生する。愛するマシンが安全性テストにひっかかり、
「前代未聞のポンコツ」とまで言われ、「出走資格なし」と宣告されてしまうのだ。

何十年も追い続けてきた夢を、ここまできて諦めなくてはならないのだろうか?
果たしてバートと愛車インディアンは、夢を叶えることができるのか?



名優アンソニー・ホプキンスが実在のライダーを演じた、大器晩成型サクセス・ストーリー。
映画のモデルとなったバート・マンローは、1967年に68歳で1000cc以下の部門で世界最速記録を達成した伝説のライダーである。
型破りだが、温かく誇り高い人柄で行く先々の人々を魅了し、
夢を切り開いていく老人の姿に心を揺さぶられる。




もうこれははっきり言って「すごい」です脱帽です
毎日をなんとなく、生きている自分が少し目覚めて、強いインスピレーションと元気をもらいました

まずは実在したこのバート。
バイクに関すること以外は本当にいい加減で、どちらかというとダメなおじいちゃんなのですが、
それでも彼の飾らない、正直な心に周りのみんなが心動かされていくのです。

また「スピード」に魅入られた彼が放つ言葉。
オートバイだけに限らず大きな意味で「人生」にも当てはまるほど、胸に刺さることを言ってくれるのです


「“危険”が人生に味をつける。リスクを恐れてはいかん。それが生きるってことだ。」
「こういうマシンでスピードに挑む時は、5分が一生に勝る。
  一生よりも充実した5分間だ。」
「夢を追わない人間は野菜と同じだ。」



10代、20代の若者が言うセリフとはまた全然違う、説得力がある言葉です
「諦めたらそこで終わりだ」ということを、走ることで表現するバート。
ラストの素晴らしさも言い様がないほどですが、
そこに至るまでのバートの人生ひとつひとつにスポットを当てた部分がより素晴らしく、
「胸が震える感動」を久々に味わったのでした

 お ま け 
アンソニー・ホプキンス、やっぱり名優です
今までは冷酷・冷静・知性を前面に出した役が多かったのですが、
今回のこの豪快でぶっ飛んだ実在人物も、生き生きと演じていました
もう今年で70歳になりますが、まだまだ楽しみ。

実に引き出しの多い俳優さんです。
彼もまた「夢を追う人」なのでしょう。

 お ま け そ の 2 
今回新宿のテアトルタイムズスクエアに観にいったのですが、こちらではその“インディアン”(マンロースペシャル)=撮影で使用したレプリカが展示されています


すごいバイク(ロケットみたいです)なので、
お近くでちょっと興味のある方は新宿に行かれると良いかもです

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『リトル・ミス・サンシャイン』。

2007-02-19 | 映画のこと
リトル・ミス・サンシャイン
2006年アメリカ(100分)

監督:ジョナサン・デイトンヴァレリー・ファレス
出演:グレッグ・キニアトニ・コレットアラン・アーキンポール・ダノアビゲイル・ブレスリン

ストーリー
アリゾナに住む小太りなメガネ少女・オリーヴの夢は、ビューティー・クィーンになる事。
コンテストのビデオを研究したり、大好きなおじいちゃん指導の元、ダンスを特訓したりと訓練に余念がない。
そんな彼女の元に、朗報が舞い込む。カリフォルニアで行われる“リトル・ミス・サンシャイン”コンテストに繰り上げ参加が決定したのだ!
問題だらけのフーヴァー家は、家族6人ミニバスに乗り込み、一路コンテスト会場を目指すが…?!



独自の成功論を声高に振りかざすが自分は甲斐性ナシの父、
家族を嫌って沈黙を続ける兄、
ヘロイン中毒で強烈な毒舌の祖父、
失恋が原因で自殺を図ったプルースト研究家のおじ、
そんなバラバラの家族を必死でつなぎとめようとする母…。

寄ればケンカが始まる彼らの、珍道中を描いたロード・ムービーだ。
クチは悪いが、実はナイーブな家族の触れ合いに胸をくすぐられるが、
絶妙に“笑い”が織り込まれており、軽口でしんみりしすぎない。

監督は長編初となるデイトン&ファリス夫婦。主演のアビゲイル・ブレスリンは、子供用ファット・スーツを着込んで幼児体系のオリーヴを好演した。
全米でも小規模作品ながら異例の大ヒットを記録した注目作!

リトル・ミス・サンシャイン - goo 映画




「面白いよ~と周りからかなり評判を聞いていたのですが、ようやく観ることができました
アメリカ映画なのでざっくりと(良い意味で)大味な所もありますが、びっくりするぐらいのブラック(ユーモア?)な部分が多く
最初から「ロードムービー」としてより「コメディ」と意識して観た方が、映画により深みが出て楽しめるのでは…と思いました

家族…としては、最低最悪
だけどそんな中で光るのが、明るくて純真な少女、オリーブの存在
笑顔、泣き顔、緊張した顔、頑張る顔。
どれもがとても可愛くて健気で透き通るようです

映画のシーン「カリフォルニアの美少女コンテスト」ではたくさんのいわゆる「美少女」が出てくるのですが、
正直着飾って笑顔を振りまく少女達よりも、すっぴんで緊張を隠せない、お腹ぽっこりのオリーブが一番かわいい

見ている私が緊張して手に汗握り、「なんとか優勝させてあげたい…と思っちゃったりしました



このオリーブ役の少女(アビゲイル・ブレスリン)、今は「ポスト」ダコタ・ファニングと呼ばれておりますが、
すっごく将来が楽しみな感じの子なので、
大作や名声に囚われず自由に伸びていって欲しいものですね~


(ネタバレあり)
最後のコンテストでのダンスシーン
なんとな~く想像はついていました
「あれだけエロい爺さん(!)だから、きっとろくでもないダンスを教えてるに違いない…と(笑)。
でも、それを吹っ飛ばすオリーブのパワーにはびっくり

観客も審査員も激怒・失笑する中、ひたすら「お爺ちゃんに捧げて」踊り狂うオリーブ
そして、(こともあろうに)それを助けるためにステージへ乱入する家族(笑)

「ありえない!」と思う反面、「これが、この『家族』のあり方だ」と、
妙に納得してしまう、美しいシーンでした


 お ま け 
お腹ぽっこりのアビゲイルちゃん、「かわいいなぁ~と思って見ていたら実はあれ、
ファットスーツだったんですね~そっかそっかと納得です

キャストはどの人も素晴らしかったのですが、中でも長男役のポール・ボノ、ちょっと気になります
今回は暗くて繊細な(ちょっとキレる)役柄でしたが、またいつか違う作品で違うキャラクターになったところを見てみたいなぁと思いました

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めぐみ~引き裂かれた家族の30年。

2007-01-15 | 映画のこと
2006年アメリカ(90分)

監督:クリス・シェリダンパティ・キム
製作総指揮:ジェーン・カンピオン

ストーリー
1977年11月15日、新潟に住む横田めぐみさん(当時13歳)が下校途中に突然姿を消した。
家出、誘拐の可能性と見て、警察の捜査が始まる。
めぐみさんの両親、横田滋さん、早紀江さんは、あらゆる手段でめぐみさんを探し続けるが手がかりは得られなかった。

2年後、早紀江さんは日本海側でのアベック失踪事件の記事を目にする。
わが子も北朝鮮に拉致されたのではないか。
そして、事件から20年後の97年、北朝鮮元工作員によってめぐみさんが北朝鮮に拉致され、今も北朝鮮で生きていることが明らかにされる。


北朝鮮拉致被害者家族の横田滋さん、早紀江さんの30年間を収めたドキュメンタリー作品。
監督は、夫婦ユニットで活動するジャーナリスト、クリス・シェリダンとパティ・キムだ。
米国の監督がなぜ北朝鮮問題のドキュメントを撮るのか、という問いかけに、二人はこう答える。
「30年間も娘を探し続けた家族愛に、人間として感動した。日本人でないということは関係ない」。

実は、欧米では北朝鮮の拉致問題はほとんど報道されておらず、
監督二人も02年小泉首相の初訪朝の記事で、初めて拉致問題を知ったという。
作品中には、横田夫妻の口喧嘩している場面も登場する。
横田一家に親しみを持つと同時に、めぐみさんの帰国を願わずにはいられない。

めぐみ-引き裂かれた家族の30年 - goo 映画



「拉致問題」は今でこそ社会的に認知されており、人々の関心事のひとつともなっているのですが、
この問題が表面化するまでの気の遠くなるような時間と努力があったことは
今回のドキュメンタリーを観て初めて知りました

ただひたすら、娘と息子の幸せを願いながら歩んできた家族。
それを文字通り「力ずく」で奪い、引き裂いた国家ぐるみで行われた犯罪。

拉致被害者の家族が、ここにたどり着くまでに20年の歳月を要し、
そして今また10年が過ぎようとしています。
娘を奪われた横田さんご夫妻が、幾多の悲しみを乗り越えて白日の下に晒してきた事実。
どうか、再び出会えて心から穏やかに過ごせる日が一日も早く来ることを、願って止みません。


今回は身近な問題でありながら、監督・製作は全て海外の方の手によって作られています。
特に製作総指揮は「ピアノ・レッスン」を監督したジェーン・カンピオンです。
監督ともども「今回の拉致問題は、小泉前首相の初訪朝で知った」ということですが、
国内外、日本人外国人を問わず、こういった報道を見て憤りを覚え、あらゆる視点から動いて「解決していこう」とする姿勢に非常に共感しました。

ドキュメンタリーなので、変にセンチメンタルな形で撮っているわけではないのですが、
30年もの間に流される数々の人々の涙に、気づくと私も涙が止まりませんでした


おまけ
ほんとにいつも思うのですが、「良い映画」は得てして上映館数が少ない
今回の映画も都内では1箇所、しかもモーニングショーのみです。

営利も大切なことですが、こういった映画は社会的認知が非常に重要だと思うので、
ぜひとも上映館を増やし、多くの方にまず印象付けてもらいたいと思いました

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『マダムと奇人と殺人と』。

2006-12-13 | 映画のこと
ミニシアターらしい色使いとストーリー一目見て大好きになりました

マダムと奇人と殺人と
2004年フランス=ベルギー=ルクセンブルグ(97分)

監督・原作・脚本:ナディーヌ・モンフィス
出演:ミシェル・ブランディディエ・ブルドンジョジアーヌ・バラスコドミニク・ラヴァナン

ストーリー
舞台はベルギー、ブリュッセル。
“美大生連続殺人事件"が発生。レオン警視(ミシェル・ブラン)はさっそく捜査を開始する。
次々と発見される死体。謎の人物からの電話…。

そしてレオン警視が辿り着いたのは、下宿付きのビストロ、その名も“突然死"。
そこには、ちょっと変わったキャラクターの人々ばかりが集っていた。
おかまのイルマ(ディディエ・ブルドン)。いつもロゼワインしか飲まないローズ。まずい料理ばかり作るコックのジェジェ。いつも鳥を連れている老人…などなど。
彼らは口々に事件の事など知らないと言う。
しかし店の評判が落ちることを気にして、実は下宿人が行方不明になっている事をひた隠しにしていたのだ。
現場に残されている謎の暗号を発見したレオン警視は、徐々に、事件の確信に迫ろうとしていた…。




ミニシアターらしい(と言っては妙ですが)楽しくてかわいい、映画でした
ビストロ「突然死(また店名がすごいっ)」に集まる人々と、彼らの間で繰り広げられる会話や人間模様がおかしくて、
絶妙な「間」に思わずクスッとしてしまいます

実はこのおかしな人々、監督が住んでいるパリで実在する人々からインスパイアを受けて生まれたらしい。「えっ実在するのと二度ビックリ。
サスペンスとしてではなく、コメディを主軸として観る方が良い作品です



特におかまのイルマが自分の「ありのままの姿」で娘に会い、娘を助けようとするシーンの数々は胸に染み入るものがあります
たとえどんな自分であっても、受け入れてもらうには「ありのまま」を観てもらうという勇気。
イルマに「捨てられた」と思い込んでいた娘の、明るくて幸せそうな笑顔が光ります

これは週末の夜、部屋の電気を消してソファに横になりながら観たい作品ですね。

心地よいリラックス、ちょっと変で、幸せな空間の共有。
きっと一緒に「ビストロ 突然死」で食事をしている気分になれるでしょう

おまけ
余談ですがこの映画のテクニカルコーディネーターに、あのジャン・ピエール・ジュネが参加しております。
そうです、「アメリ」のです。
そのせいか作品の中に現れる色使いや小物がとてもキッチュでかわいらしく、
ちょっと変な部分もよく作りこまれていて、一層見ごたえのある作品に仕上がっています

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映画『ウィスキー』。

2006-12-09 | 映画のこと
珍しく「ジャケ買い」ならぬ「ジャケレンタル」した作品です

ウィスキー
2004年ウルグアイ=アルゼンチン=独=スペイン(94分)

監督:フアン・パブロレベージャパブロ・ストール
出演:アンドレス・パソスミレージャ・パスクアルホルヘ・ボラーニ

ストーリー
ウルグアイの町で靴下工場を営むハコボは、規則的な日々を淡々と送っている。
ある日ハコボは1年前に亡くなった母親の墓石建立式のため、ブラジルで暮らす弟エルマンを呼びよせることに。
そこでハコボは、工場で働くマルタに数日間、彼の妻を演じて欲しいと願い出る。
普段から会話の少ない2人は、ぎごちなくも偽装夫婦の繕いをしてエルマンを迎えた。
建立式は無事に終わるが、エルマンは2人を旅行へ連れ出すことに…。

南米の小さな国、ウルグアイから印象的な映画が届いた。
2004年のカンヌ国際映画祭ではオリジナル視点賞、国際批評家連盟賞を受賞。東京国際映画祭ではグランプリに輝くなど、世界が見入ってしまった人間ドラマだ。



「ウィスキー」は、カメラに笑顔を向けるときに出る、日本で言うところの「チーズ」。
夫婦を演じることになった中年男女の、不器用な作り笑いがイメージに浮かんでくる。
カメラは据え置き、際立った視覚効果もないジミな映画が、なぜそれほど印象深いのか…それは、シンプルな設定の中で際立つキャラクターの魅力ゆえ。
無口でぶっきらぼうで、そのくせ強情なハコボ。忠実に仕事をこなしながら、旅を通じて変化していくマルタ。
彼らがこの先どうなっていくのか、ついつい引き込まれてしまう。

沈黙の心地悪さや「さかさま言葉」など、最小限に抑えられた会話は独特の雰囲気を出し、笑いと寂しさが同時に迫る作品。




最近観た映画の中ではおそらく1,2を争うほどの地味な映画ですが、それだけにものすごく想像力をめぐらせてしまう、不思議な余韻を持った作品です
固定カメラで映し出される映の中で、沈黙の多さ、微妙な間が、どことなくアキ・カウリスマキ作品を思い出させるようです。

登場人物の感情は、全くと言っていいほど観ている側に伝えられません。
そして結末も驚くほど突然で、いわゆる感動的な展開は全く用意されていないのです。
これほど「結末までの想像(創造)を、観客に委ねる映画」も、そう無いであろうと思います。
まるで本を読んでいるかのように、淡々と続いていくストーリーを見つめ続け、
途中でふと本を伏せてしばし物語に自由な思いを馳せているような、
しんしんと心に積もる、映画でした


おまけ
「ウィスキー」を合言葉に、笑顔で写真に写る3人。
彼らの日常はこれからどうなっていくのでしょうか
偽りの夫婦を終えたマルタは帰りのタクシーの中で少しだけ泣き、
もしかしたら仕事を辞めて自由に旅立ってしまったかもしれない。
夫婦役を頼んだわりに不器用で優しくなれない兄のハコボは、
会社に来ないマルタを心配して、家まで迎えに行ったかもしれない。

それぞれの人生は少し悲しくて、そして何も変わらず一人ぼっちかもしれない。

未来の行方は誰にも分からないけど、「幸せの合言葉」を信じて、
ハッピーエンドを希望してみたりするのでした

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『死ぬまでにしたい10のこと』。

2006-11-30 | 映画のこと
近所のレンタルDVD店でずっと『貸出中』だったため、
最近になってようやく観ることができました

死ぬまでにしたい10のこと
2002年スペイン=カナダ(106分)
監督:イザベル・コヘット
出演:サラ・ポーリースコット・スピードマンデボラ・ハリー

ストーリー
23歳のアンは、母親の家の裏庭にあるトレーラーハウスで失業中の夫と幼い2人の娘と暮らし、時間に追われる忙しい毎日を送っていた。
だがある日、彼女は突然腹痛に襲われて病院に運ばれる。
そして検査の結果、医師から余命2ヵ月の宣告を受ける。
若さのせいでガンの進行が早く、すでに全身に転移してしまっていた。

アンはこのことを誰にも打ち明けないと決意し、ノートに死ぬまでにしたいことを書き出していった。
それはちょうど10項目になった。そしてその日から、彼女はその秘密のリストを一つずつ実行していくのだった…。




テーマとして「死」を扱ってはいるのですが、決して派手なストーリーではありません。
でもだからこそ「自分に出来ること、やっておかなければいけないこと」を必死で実行していくアンの生き方が、非常に心に残ります。
また淡々と進んでいくシーンの中で、アンだけでなくアンを取り巻く周囲の人々にもそれぞれの人生があり、
アンが彼らをいとおしむことで、彼らの人生もまた「生きた存在」であることを実感するのです。



「泣ける映画」というのとはまた違っていて、『「死」を捉えることで「生」の喜びを知り、また愛すべき世界を知る』という観点で作られた映画のように感じました。

それと主人公であるアン以外の人物像も非常に丁寧に作られていて、
私個人的にはアンに死を告知する医師と、アンの恋人(リー)、
それに父親が好きでした

患者の顔を正面から見て死の宣告が出来ない医師。
前の恋人に逃げられ、失ってしまった家具も揃えられないリー。
刑務所に入ったきり、家族との愛情がかみ合わない父親。

この映画に出てくる全ての人々が、日常どこの世界でも同じであるように、それぞれの事情を抱えて生きている。

アンがこの世からいなくなっても、アンの生きた証であるメッセージをしっかり受け止めて生きていく。

そんな人々がまたいとおしく、「やはり一人ひとりの人生には全て価値がある」と確信してしまうような、
素敵でぐっとくる、映画でした

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