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'05 衆院選 本当に自民党は強い信任を得たのか?

2005年09月18日 | 政治・社会

先週の衆議院選挙は、自民党の圧倒的な勝利に終わりました。これは先日のブログでも述べたように、自民党がうまく選挙を戦ったのが勝因と考えられます。しかし、有権者の多くがここまで劇的に自民党が勝利するとは思っていなかった様子がニュースなどでも報じられています。自分で投票しておきながらいまさら何を言っているのかと思っていたのですが、実際の投票行動を定量化してみたところ、有権者が驚くのも一理あるかなと思うようになりました。

まずは今回の衆議院選挙で自民党・民主党が獲得した議席数を下記に示します。カッコ内は自民党と民主党の獲得議席の比率です。

政党名 総議席数 小選挙区 比例代表
自民党 296 (72%) 219 (81%) 77 (56%)
民主党 113 (28%) 52 (19%) 61 (44%)

自民党の圧勝ぶりは総議席数において自民72%対民主28%からも見て取れます。もっと驚異的なのは小選挙区で、自民党がなんと8割以上の議席を獲得しています。
一方、あれほど小選挙区で圧勝した自民党ではあったのですが、比例代表では自民56%対民主44%であり、自民と民主の間は圧勝・惨敗というほどの差は開いていないことがわかります。直感的に言うと、有権者の感情としては総議席数や小選挙区の結果よりもむしろ比例代表の結果の方がしっくりくるのではないかと思います。

そこで、小選挙区において両党がどのくらいの票を獲得したのか集計した結果を以下に示します。

政党名 総得票数
自民党 32,414,591 (56%)
民主党 25,045,862 (44%)

この比は比例代表の結果の比とぴったり一致します。当たり前といえば当たり前ですが、小選挙区で自民党の候補者に投票した人は比例区でも自民党に投票するし、小選挙区で民主党の候補者に投票した人は比例区でも民主党に投票する人がほとんどだったということがわかります。従って、有権者の感情としては、そこまで自民党に圧勝させたつもりは無く、民主党よりはややましかな、程度の気持ちだったのではないかと推察します。

ではなぜ小選挙区では実際の得票数との比とかけ離れた結果になるのでしょうか。ここに小選挙区制の問題点があります。

ご存知のとおり小選挙区制では、各選挙区で1名の候補者のみが当選します。従って、1位の候補者と2位以下の候補者との支持率が圧倒的に差がある場合は、十分民意を反映しているといえますが、1位と2位が僅差であった場合、2位の候補者に投票した有権者の票がまったく反映されないことになってしまいます。

冒頭の図は、今回の自民党の得票数(対民主党比)を選挙区ごとに集計し、比の小さいものから並べなおしたものです。この図を見ると、自民党に投票した人が50%から60%くらいの選挙区が圧倒的に多く、獲得議席数の比である70%や80%といった得票を得た選挙区はごくわずかしかありません。小選挙区は50%を超える得票を得れば当選ですから、基本的には50%のラインを超えればほぼ当選になります(※この図は自民・民主以外の党を計算に入れていないので多少の誤差を含んでいます)。民主党としては、この50%から60%のなだらかなラインをいかに10%程度下にシフトさせるかが、小選挙区における勝利のポイントとなります。

つまり今の状態から10%の有権者を自民党から民主党に鞍替えさせれば圧勝できるわけです。10%ですから、ムードをうまく作れば何とかなりそうです。で、取る作戦としては、カッコいい党首を選出する、一言二言でわかるスローガンで政治を進める、といった、まさに今の自民党と同じような戦略になるでしょう。このようなことを続けてゆくと、政治の空洞化を招くことになります

こうした政治の空洞化を避けるためには、民意がより正しく反映できる中選挙区制を復活する必要がありそうです。そのあたりの考察はまた後日行いたいと思います。

少なくとも今回の調査でわかったことは、大多数の有権者は「自民と民主とを比べたら、どっちかといえば自民かなー」という程度であり、自民党を信任しきったわけではない、ということです。