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SONY構造改革 社内カンパニー制の廃止について

2005年09月23日 | 政治・社会

9/22にSONYは社内カンパニー制を廃止して経営資源を集中し、ヒット商品を出せるようにすることを中期経営計画として発表しました。今回のブログでは、社内カンパニー制について議論したいと思います。

社内カンパニー制を導入すると、各事業部が独立に採算を勘定することになるため、採算の良いカンパニーと悪いカンパニーがガラス張りとなります。それによって

  • 不採算カンパニーの建て直し・切捨ての判断が迅速に実施できる
  • カンパニー間の競争を自動的に促す効果が生まれすべてのカンパニーで採算性が向上する
  • カンパニーの判断で新商品を出せるようにすることで市場投入タイミングを迅速にする

などの効果を期待して経営効率を高めようとする方法で、5-10年前に流行しました。 しかしながら、あまり成功していないように見えます。その理由として例えば下記のようなことが挙げられます。

  • 各カンパニーで同じような商品を作ってしまう。結果として開発費の重複投入や、結局それぞれが中途半端な商品となって、市場に受け入れられない。
  • 他カンパニーとの取引において自カンパニーの採算のみを考えて行動するために、自カンパニーがよければ他のカンパニーや会社の収益なんか二の次だ、とのメンタリティーが従業員に染み付いてしまう。
  • オーバヘッド組織(総務とか経理とか)をカンパニー毎に設ける必要があるため、アウトソーシングなどによるスリム化効果が薄い。

私見では、社内カンパニー制とは実はまやかしではないかと考えます。事業領域がまったく異なり、シナジー効果もほとんどない、ということであれば別会社として経営すればよいはずです。事業部毎に対象とする市場が重なるのであれば、多少事業内容が違っていても同一会社とし、持てる経営資源を最大限活用して商品を開発する必要があるのではないか、と考えるからです。

 上記で示した社内カンパニー制導入の理由を見てみると、どうも市場よりも「経営の都合」を優先しているように思えます。あるいは短期的な「株主に対するわかりやすさ」を優先しているように思えます。確かに社内カンパニー制であれば経営は一見やりやすそうです。数字で採算性が出てくるので、その背景を考慮することなく不採算部門についてプレッシャーをかけたり、一律xx%カット、みたいな経営ができるでしょう。こういう風に構造改革します、といわれれば株主も「なるほど」と思えてしまいそうです。

 しかし、これは極端な言い方をすれば、経営を各カンパニーに「丸投げ」している状態といえるでしょう。そもそも、うちの会社はこの商品で勝負する、この分野からは撤退する等といった会社全体の戦略なしにどうやって会社の業績を伸ばしてゆくのでしょうか。社内カンパニー制では経営の実態を商品単位・市場単位で見ることなく、カンパニー単位でみてゆくことになります。どうしても時が経てば(といっても1年程度の時間ですが)現実の市場の実態とカンパニーの事業領域との間にずれが発生するため、毎年のようにカンパニーの事業領域見直しが発生します。実際カンパニー制導入後のSONYの迷走ぶりはakoustamさんのブログに詳しいです。本当に1年毎に組織の見直しが入っています。これはカンパニー組織が市場の要請に対応できていないことを示しています。

経営を各カンパニーに丸投げしていては、会社としての「選択と集中」は実施できないのは明白です。選択と集中というのは単なる人減らしのリストラではなく、有限である経営資源を利用し、いかに効率よく市場に便益を提供するか、ということを考え抜く作業になるわけです。これは会社の命運をかけた重要な仕事であり、これこそ経営陣の手腕が求められるところです。 この経営層が実施すべき重要な仕事をサボってきたつけが、今のSONYの状況にあわられていると思います。9/22の中期経営計画の発表ではそのことに触れ、不採算部門からの撤退、コアコンピタンスな部分に経営資源を集中するとしています。これからのSONYに注目してみましょう。