~あなたにとって顧客・従業員は船の中にいる人ですか?それとも船外の海ですか?~
ここでは、顧客から仕事を請け負い、従業員を使って仕事を完成させる責務を負ったマネージャを「船長」と呼んでいます。顧客や従業員を「守って安全に目的地に運ぶパートナ」と考えるか、「猛威を振るう自然現象」と考えるのかによって、そのマネージャの市場価値が決まると考えます。
あなたはどのタイプでしょうか。
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(1)市場価値の高いマネージャ
顧客: 船の中
従業員: 船の中
目的地: 顧客の求める目的地
こういう船長は顧客の安全を考える。もちろん従業員の安全も考える。顧客の本当の目的地に向かって従業員と一丸となって航海する。それを繰り返すことで会社の業績も安定し、定常的に市場に便益を与えられるようになる。
(2)市場価値の低いマネージャ その1
顧客: 海
従業員: 船の中
目的地: 従業員に暖かく迎えてもらえる心地よいパラダイス
こういう船長は従業員の安全だけを考える。顧客は時に猛威を振るう自然現象であり、従業員と一緒にかわしてゆく対象である。市場に貢献しない意味のない仕事を繰り返すのでいずれ淘汰されるが、それまでは従業員と仲良く過ごせるパラダイスが待っている。顧客がどうなろうと、会社がどうなろうと知ったことではない。
(3)市場価値の低いマネージャ その2
顧客: 船の中
従業員: 海
目的地: 顧客との束の間の楽しい合コン会場
こういう船長は目の前の顧客をほんの束の間満足させるだけである。実際には顧客の本質的でない要求に多くの時間を割き従業員のモチベーションを著しく下げるため、最終的には顧客も満足せず、市場に便益を与えることができない。
(4)市場から追放すべきマネージャ(危険人物)
顧客: 海
従業員: 海
目的地: 地上勤務のイス
こういう船長は実は上司だけを乗せている。顧客や従業員の要望を切り捨てうまく航行できたように見せかけることで、自分のポジションを確保する。見せかけが偽りであったことがバレると、会社の価値が暴落し便益を与えられる状態ではなくなってしまうため、大変危険である。
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なお、ここでいう「市場価値」とは、市場に対して価値を創造できる能力のことを言っています。「市場価値が高い」とは、市場に対し多くの便益を与える能力があるので、市場から高い評価を得ることができることを指しています。これは再就職したとしたら自分の年収はいくらと査定されるか、という文脈で現在よく用いられる「市場価値」とは残念ながら若干違うものです。確かに「年収」=「その人の能力を企業が査定した額」ではありますが、企業が査定する能力の評価軸に「市場に対して価値を創造できる能力」が必ずしも含まれるとは限らない、含まれた場合でもそのほかの要素の比重の方が高いことがしばしばあるからです。
(なおマーケティング宗教論では、両者の「市場価値」が同一のものにすることが皆を幸せにすることであると述べています。)