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無料サービスとマーケティング - goo 障害をテキストとして -

2005年09月09日 | ビジネス・マーケティング

9/8 1:00から12:00ころにかけ gooブログがメンテナンス状態になっていました。ここ最近ブログが重くて、自分のブログがなかなか登録されなかったり、トラックバックの反映が遅く、しばらく経ったら複数の同じトラックバックが登録されてしまった、などのトラブルが散見されたので、なんとか対応していただいてよかったと思っています。

我々ブロガーからすれば、このような状況を一刻も早く回避して欲しいと思うのはごく当然のことであろうと思います。しかし運用者の本音からすると「無料なんだんから、少しぐらい我慢してよ」という声も聞こえて来そうです。

でも果たしてそのような考え方が正しいのでしょうか?人に便益を与え、対価を得るというマーケティング宗教論の基本方針と照らし合わせ、この考え方の不適切さを考察したいと思います。

(注)決してgooの方々がそのような考え方を持っている、ということを指摘するものではありません。一般論として無料サービスを提供している人が陥りやすい問題、ということでご理解ください。

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なぜgooはブログを無料で提供しているのでしょうか。今回の増強の例を挙げるまでも無く、ユーザが増えれば設備を増やさなければならないのは目に見えてますが、そのための費用をブログユーザから徴収することはできません。しかしどこかからその設備の投資・メンテナンスに要する費用を調達しなければこのサービスを維持することはできないはずですよね。

gooの内情を正確に知ることはできませんが、顧客からの利用料を得ない代わりに広告収入を得ており、それが無料ブログサービスの原資となっていることはほぼ間違いないでしょう。gooはブログサービスなどで多数のページビューが集まる場を提供し、そこに広告を掲示することで収入を得ているのです。このビジネスモデルは「多くのページビューを集める」ということが大前提になっています。つまりgooはブロガーに対し無料ブログという便益を提供し、ページビューという経営資源を対価として得ているのです。

gooはブロガーに対し無料かつ品質の高いブログサービスを提供することで、ブログやgoo全体のページビューを増加させることができます。その実績に基づき広告主は自社の広告をgooに掲示しようと決断するのです。広告収入が増えるとさらにブログサービスの品質増強が図れ、より多くのブロガーを惹きつけることができるようになります。この好循環でどんどんページビューが増えてゆきます。

逆に、無料であっても品質の悪いサービスをgooが提供した場合、ブロガーは別なブログサービスを探し始めます。この結果ブロガーがgooから徐々に離れ、ページビューを減らしてしまいます。こうなると広告主に対し十分なページビューを提供できないので広告を出してもらえず、広告収入も減り、品質向上のための設備増強も行えず、ブロガー離れに拍車がかかるという悪循環に陥ってしまうのです。

以上の例で示すとおり、中途半端な便益を与えても十分な対価が得られないので、いずれ便益を与えることができなくなる状態に陥ることがわかります。このような状況では顧客も提供者側も共に幸せにはなれないでしょう。(例えばブロガーは自分の新規ブログがなかなか反映されなかったり、消されてしまったりすれば大きく失望しますし、メンテナンスの人も本当は9時には終わるところを3時間残業して12時まで対応しなければならないわけです。)便益を与えるならば十分満足できるものを与え、十分な対価を得ることが、皆が幸せになるために必要な条件なのです。

マーケティング宗教論の経典に下記の文章を追加します。

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便益を与えるならば十分な便益をあたえること。そして十分な対価を得ること。それが持続的に便益を与え続けられる条件である。

中途半端な便益を与えても、継続的に便益を提供し続けるのに必要な対価は得られず、いずれ便益を提供できなくなる状況に陥る。

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決して広告主だけを顧客だと思ってはいけません。広告主と同様利用料を払っていないブロガーも重要不可欠な顧客だということをgooには認識していただきたいと思います(認識しているとは思いますけど)。