今日11月15日締め切りだった、デジタルコンテンツ・ワーキンググループへのパブコメを昨晩提出しました。パブコメを提出されたブロガーの皆様お疲れ様でした。今回は急だったので、あまり煮詰められずに提出してしまった感があります。
一応前のブログで、もう少し記述を追加してからパブコメを提出する、といっていたので、提出した内容を紹介します。基本的には前回のブログの内容と同じですが、赤太字の部分が追記したところになります。ご参考まで。
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【はじめに】
コンテンツ産業の振興とは、1人24時間という限られた時間の中で、いかに"国産"のコンテンツを多くの人に利用してもらうか、それによって多くの対価を得るかという問題に帰着できると考えます。そう仮定し場合、コンテンツに接するシチュエーションおよびターゲットユーザを定義し、それぞれに対するデジタル化における問題および振興戦略案について検討すべきであると考えます。まず以下に私が考えたシチュエーション3つ、ターゲットユーザ4つを例示し、次にデジタル化における問題、振興戦略案の例を示します。ご検討いただければ幸いです。
【コンテンツに接するシチュエーション】
コンテンツに接するかどうかという観点で人の時間を分類すると、下記の3つのシチュエーションに分類できる。
(1)コンテンツを意識的に消費している時間
TV、読書、映画・音楽鑑賞、ゲーム など
家ではテレビ・音楽鑑賞・読書・インターネットをし、外出しても映画・ウォークマン・携帯などで常にコンテンツにアクセスしている現代人の行動様式を考えると、既にこの時間は飽和傾向であり、今後この時間を増やすことは困難であると考えられる。あとは、限られた時間の中でいかに日本製コンテンツに接する割合を増やすかがコンテンツ産業振興のポイントとなる。
(2)コンテンツを無意識的に消費している時間
街中などで流される映像・音楽・広告 など
潜在的なコンテンツ消費市場としてもっと注目されてよい時間である。住環境などへの配慮が必要ではあるが、今後の研究によって開拓が期待される時間である。
(3)コンテンツを消費していない時間
授業中、勤務中、睡眠中など ほかの事に集中している時間
このような時間についてもコンテンツの消費を促すことはやり方によっては可能である(教育番組、睡眠学習など)。しかし、ほかの事に集中すべき時間をコンテンツの消費時間に変えてしまうようなことを国レベルでの政策で行うのは問題であると考える。例えば睡眠時間を削ってまでコンテンツ消費に充てさせるような政策をとるのは、健康面、教育面などから悪影響が大きい。
【ターゲットユーザ】
ここでは、あくまで「国産」のコンテンツ産業をいかに振興させるかという観点で議論する必要があることから、日本人-外国人、日本在住-海外在住の4パターンのユーザをターゲットとして分類した。
(A)日本国内に在住する日本人
日本国内に流通するコンテンツをほぼ最大限消費している層である。従ってこのターゲットによる市場は飽和傾向にあり、あとは全体の消費コンテンツのうちいかに国産のコンテンツに触れる時間を増やすかという点がポイントとなる。
(B) 日本国内に在住する外国人
日本語が話せる外国人の場合は上記の(A)に準ずる。日本語が話せない外国人の場合、国産のコンテンツにアクセスさせるためには言語上の障壁を取り除く必要がある。
(C)海外在住の外国人
洋の東西を問わずゲームやアニメ、漫画など日本作品に対する評価は高い。アジア地区においてはさらに音楽、TV番組などの評価も高い。しかしながら、ゲームなどの例外を除き、日本作品を配信するチャネルが十分確保されているとはいえない。アジア地区においては違法コピーが横行しているため、著作権者に利益が還元されないケースも多い。
(D)海外在住の日本人
海外在住の日本人は、日本在住の日本人と同じレベルで日本のコンテンツを享受することはできない。例えば当日のニュースや当日放送されたテレビドラマを日本にいるときと同じように見ることはできない。それゆえに国内にいる日本人よりも積極的なコンテンツ消費者となりうる。
【戦略例】
上記で述べたシチュエーション-ターゲットを組み合わせ、それぞれについてデジタル化に伴う課題と振興戦略を整理することで、どのような議論を進めればよいかという点が見えてくると考えます。以下にいくつかの組み合わせにおける課題と戦略の例を示します。
《例1》(1)コンテンツを意識的に消費している時間」-「(A)日本国内に在住する日本人」の組み合わせ
・課題
現代日本人の行動様式を鑑みると、意識的にコンテンツを消費する時間は飽和傾向にあるが、デジタル化に伴い、DRMの利用や、ハードディスク型ポータブルプレーヤーに対する私的録音録画補償金の適用、コピーワンス制度など様々な著作権上のガードが掛けられることで、外出時におけるコンテンツ消費時間が減少する恐れがある。著作権者の保護を確保しつつコンテンツ消費時間の現象を抑止する政策が必要である。
・振興戦略案
1. DRMの国際標準化を推進すべきである。さらにそれはフリーあるいは十分安価で使えるもので無ければならない。
2. 私的録音録画補償金については廃止し、ポータブルメディアのコスト増を抑制すべきである。これにより、コンテンツを利用するシチュエーションを減らさずに済むと考えられる。
3. コピーワンス制度についても再度見直し、私的録音・録画の範疇であるならばこれまでのアナログメディアと同程度の自由度でコンテンツが利用できるようにすべきである。
《例2》「(2)コンテンツを無意識的に消費している時間」-「(A)日本国内に在住する日本人」の組み合わせ
・課題
街中や電車の中など公衆の面前に動画広告などを流す場合、事前にあるいはリアルタイムに動画をネットワークで配信するシステムが想定される。このような広告の形態が一般的にあるとコストの安いインターネットに広告表示端末が表示される可能性があるが、それがハッキングされることによって公衆の面前に不適切な映像が流されてしまう可能性があり、社会に与える影響が大きい。
・振興戦略案
公衆に掲示する動画広告表示端末などには一定の規制を設ける必要がある。例えば、インターネットへの直接接続を認めない、等の規制が必要である。
《例3》(1)コンテンツを意識的に消費している時間」-「(C)海外在住の外国人」の組み合わせ
・課題
海外において、日本のコンテンツの評価は概ね高いが、ゲームなどの例外を除き、日本作品を配信するチャネルが十分確保されているとはいえない。またアジア諸国においては不正コピーが横行し日本作品に対し正当な対価が支払われない場合がある。
・展開戦略案
日本のコンテンツを海外で普及するためのプロモーションを政府主導で行い、コンテンツをデジタル化し、デリバリーはインターネットを使うことで、外国人に対し日本のコンテンツにアクセスできる機会を増やすようなことを検討すべきである。一方著作権保護のため、海外向けのコンテンツはすべてDRMをかけることを推奨するような政策を検討すべきである。
《例4》「(1)コンテンツを意識的に消費している時間」-「(D)海外在住の日本人」の組み合わせ
・課題
海外在住の日本人は日本国内で流通するコンテンツ(TV番組など)に自由にアクセスできない。それゆえにむしろ国内在住の日本人よりも積極的なコンテンツ消費者となりうる。
・展開戦略案
NHKの海外向け放送だけではなく、国内で流通するコンテンツ全般をインターネットなどで海外に再送信できるようにする政策などを検討する必要がある。