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楽天田尾監督解任の真の理由?

2005年11月29日 | スポーツ・プロ野球など

nikkeibpのビジネススタイルコラムにこんな記事が載っていました。

楽天田尾監督解任の真の理由

当ブログでも田尾監督の1年での解任には異を唱えたのですが、この記事では三木谷オーナー、島田社長が解任の理由について語っています。

要約は下記のとおりです。

●2005年シーズンは準備が忙しく、勝利というものが球団経営に必要だと感じたのが8月以降であった。

●今年の実力からすれば誰が監督をやっても同じ結果となったと思う。

●3,4年後に強くなるということを見据えると、新人の田尾監督よりも経験豊富な野村監督を起用する方が良い。

勝利というのが球団経営上やはり重要である、という点はまあ当たり前といえば当たり前です。野球は真剣勝負を見せるエンターテイメントですから、負けてもヘラヘラしているチームからファンが離れていくのは当然でしょう。また、今年の実力からすれば誰が監督をやっても同じ結果である、というのも正しい認識だと思います。

違和感を覚えるのは、3,4年後に強くなるには田尾監督ではだめで野村監督である、としている部分です。野村監督が3,4年でチームを強くしたのはもう15年も前のことです。1990年にヤクルトの監督に就任し、それまで万年Bクラスだったチームを1992年にリーグ優勝、1993年に日本一に導いた実績は確かに偉大でした。しかし、そのときですら就任した1990年は5位でした。さらに、1999年~2001年に阪神を率いたときは3年連続で最下位であり短期間でのチーム育成に失敗しているのも事実です。また、既に70歳になろうとする監督の年齢も不安材料でしょう。北海道から九州まで本拠地が広範囲にわたるパリーグでは3日毎に長距離移動を強いられます。3年間で強くなるまでに監督が体調を崩さないとも限りません。

記事の中で島田社長は「田尾監督に続投してもらえれば5年、10年後には強いチームにしてもらえると思う。だが、我々はもっと早く強くしたいのだ。」と言っています。しかし、「今年は誰が指揮しても同じ結果」と言いさらに「FAや外国人に頼る補強には限界がある」とも言っており、監督交代や選手補強によってもさほど勝利に近づくことができないとの認識を示しています。にもかかわらずなぜ監督交代なのでしょうか。現状認識と対策に一貫性が無さ過ぎます。普通の球団なら投手陣の強化とか、10年働ける正捕手の獲得とか、もう少し具体的な補強案が出てきてもおかしくないはずですが、実際は監督が変われば何とかしてくれるだろう程度の認識しか無く、強くなるための戦略が今ひとつ書ききれていないのではないでしょうか。

結局のところ今回の記事においても、田尾監督の解任は予想外の負け方を喫したので監督に責任を取らせて辞めさせた、という大方の見方を覆す論拠にはなっていないように思えます。


東証システム障害の責任について

2005年11月27日 | 政治・社会

11月1日に発生した東証システム障害について当ブログでも幾つかの記事を書き、他山の石とすべくその後の動向も追跡していました。その中でトップ・幹部のとる「責任」について思うところがあったので、今日のブログではそのことについて述べます。

東証役員の処分について(11月15日発表)

富士通役員の処分について(11月25日発表)

まず東証の発表では、役員の報酬を最大50%6ヶ月間返上すること、および再発防止措置を期限を切って実施することが述べられています。

この処分・対策の発表について、私が東証の人間の立場だとしたら、「役員が結果責任をとって自身の報酬を5割近くカットしたし、再発防止策も決めたから、昔から良くあるトップがやめてそれ以降うやむやという状態からは一歩も二歩も踏み込んでいるので、十分責任を果たした。」と思ってしまうかもしれません。

しかし、傍から見るともう少し踏み込んで欲しいと思うことがあります。

■ 役員報酬の減額は本当に必要か?

役員など企業幹部のトップクラスは組織が起こした問題に対し「結果責任」と称し報酬の減額を行うことがあります。もちろん経営者として顧客に迷惑を書けた行為について、自戒の意味を込めて報酬を減額するということ自体は役員本人にとってはそれなりに意味のあることだと思います。しかしそれは顧客から見れば自己満足に過ぎないでしょう。役員の報酬が増えようと減ろうと顧客が被った損害・社会に与えた影響が解消されるわけではないためです。それよりも大切なことは、発生した問題に対し今後何をするかを明確にするということだろうと思います。

■ 施策は誰の責任でやるのか?

東証は(i) 売買システムにおける再発防止策 として4項目、(ii) 全般的なITセキュリティ等向上策 として5項目、合計9項目を実施するとあります。しかし、残念なことにこれを「誰の責任でやるのか」が言及されていません。処分を受けた役員の誰がどの項目を責任もって実施するのか明示する必要があると思います。社長の指示で役員の某がどの項目についてリーダとして推進する、という体制が判る記述が欲しかったですね。

なお、処分を受けた役員のうち、その体制に含まれていない人がいるとすると、そもそもその処分は全く意味のない「目くらまし」の処分に過ぎないということになります。当の本人は「とばっちりを受けた」ぐらいにしか考えられないでしょう。

■ 施策の実施経過・結果はいつ報告するのか?

東証の発表では、いつ着手する、ということは記載されていますが、いつ完了しいつ報告するか、という点が記載されておりません。発表した施策を本当に実施しているのかどうかを我々は確認する手段が無く、本当に実施するつもりがあるのか判断できません。


東証の発表はこのあたりを明確にするべきと考えます。どうしても企業トップの責任というと、「処分」の方に目を奪われますが、本当はその後何をやるかを可能な限り具体的に示し、その結果をもって本当の責任を果たしたかどうかを判断する、という形にすべきであると考えます。


次に、富士通の発表についてですが、正直論外というしかない惨状です。単に役員の報酬カットを決めただけで、その内容も東証の処分内容をマネしたようなものであり、さらに再発防止策について何の言及もありません。富士通については25日に発表があっただけなので、今後何らかの再発防止策が出てくれば良いのですが。でも問題が発生してから1ヶ月近く経とうとしているにも関わらずあの程度の発表なので、期待はできないかもしれません。


と、偉そうに役員の責任について論じてしまいましたが、このことは企業人全般についても同じことが言えると思います。ミスを犯したときや問題を起こしたときに、謝ったりサービス残業したりすれば責任を果たしたことになるのではなく、その後どういう施策をどの程度実施したかで本当の責任を果たしたかどうかが問われる、ということだと思います。


消極的な品質管理と積極的な品質管理 ~宇宙開発の事例から考察~

2005年11月23日 | 科学技術・システム・知財など

NIKKEI BPのコラム 「希望を失った宇宙ステーション日本モジュール「きぼう」 第4回 古い信頼性基準が生む日本の宇宙開発の高コスト構造」の中で、宇宙開発に用いられる部品が40年前に制定された品質基準に従って30年前に設計された部品が未だに使われており、宇宙開発の高コスト体制の元凶となっていたり、技術の進歩が装置に反映されず却ってミッションの失敗の原因となっていることが指摘されています。

確かに品質管理の考え方の一つとして、未検証である新しいテクノロジを闇雲に利用するよりも、過去の実績のある方法を採用する方がベターと判断するのはよくあることです。特に宇宙開発など失敗すると何百億円という巨額な費用が水の泡になるようなミッションではそのような傾向が強いのだと思います。

しかしながら、このような品質管理手法を導入する問題点の一つは、時が経つにつれ古い設計の技術は調達が難しくなり、オーダーメイド化しコストが上昇することです。もう一つは、新技術の導入ができないため性能は部品設計当時の性能のままとなってしまい、現在のレベルからすれば著しく性能が劣るものとなってしまうことです。結果として高度なミッションを計画しようとすると、途方も無く費用がかかり、事業そのもの(今回の例では宇宙開発事業そのもの)が停滞してしまいます。いってみれば消極的な品質管理手法といえるでしょう。

ところが、この消極的な品質管理手法は何かと言い訳しやすい特徴を持っています。例えば開発予算を要求する際「新しい方式を採用しても"絶対に"失敗しないと言えるのか?」などと詰問されてしまったら「絶対大丈夫です」と回答することは難しいでしょう。逆に「過去に成功事例があるやり方だから調達コストが多少かかっても従来方式を採用します」と説明する方が楽なのです。コスト意識の希薄な役所相手であればなおさらです。失敗した場合でも「従来方式で問題が起こったが、新しい技術を使ったら"絶対"今よりも大きな問題が発生しないと言えるのか?」などと居直ることも可能でしょう。

一方、部品、素材、設計技術、加工技術、開発マネージメント技術、などの技術の進歩を果敢に取り入れながら品質を確保することを、積極的な品質管理手法と呼ぶことにします。この積極的な品質管理にはミッションの失敗というリスクが必ず伴います。しかしこのようなリスクをとることで飛躍的な性能向上と低コスト化が実現でき、事業の持続的な発展が可能となるのです。

積極的な品質管理の特徴は、新技術の導入とリスクマネージメントを併用し、それによってコストと品質のバランスをとる点にあります。インターネットなどで簡単にパッチファイルが配布できるようなPC向けのソフトウェアであれば、完全無欠な試験を実施することなく発売することで開発コストを抑えることができるでしょう。一方宇宙開発など失敗が許されないミッションにおいては、想定されるリスクを可能な限り網羅的に抽出し、それをいかに解消・低減するか、という点を民生品よりも慎重に実施すれば良いのです。

このような積極的な品質管理を実施した技術を用いても、なおミッションが失敗した場合は――それは極めて有益な失敗といえるのではないでしょうか。旧技術をひたすら利用しているだけでは知りえなかった新たな科学技術上の知見が得られたわけですから。今の日本の宇宙開発に求められる品質管理手法は、ここで述べたような積極的な品質管理手法の導入ではないかと考えます。


なお、ここまで積極的な品質管理手法について肯定的ともとれる記述を繰り返してきましたが、最後に誤解の無いように言及しておきたいことがあります。それは闇雲に積極的な品質管理手法を導入することだけが、必ずしも正しい品質管理手法ではないということです。積極的な品質管理手法の肝は新技術の導入とリスクマネージメントを併用することにあります。リスクの洗い出しが不十分な場合は、消極的な品質管理手法に対する優位性を十分に説明することはできません。またリスクの洗い出しの結果、従来技術の採用の方が低コストで高い品質が実現可能であることが確認されるのであれば従来技術の採用もアリなのです。

積極的な品質管理手法、消極的な品質管理手法、どちらを採用するかは、どのようなミッション(事業)を実現するのか、というところの検討を経て決定する必要があります。新技術に固執しても過去の実績に固執してもいけないのです。


NHK民営化に政府も本腰か? ~ブロガーたちの手で政府・NHK・民放をしっかり監視しよう~

2005年11月21日 | 政治・社会

政府の規制改革・民間開放推進会議がNHKの受信料制度の見直しを求める勧告を行うそうです。

NHK受信料の見直し提言へ、一部スクランブル化も

公共性の高いニュース・災害情報などは現行どおりとするが、ドラマやスポーツ中継などはスクランブルして受信料を支払った人のみに配信する、という提言のようです。実際の提言は12月に報告書の形でまとめられるようです。

だいぶ昔のブログになりますが、NHK受信料について(2) ~公共放送は民営化組織ではできないのか?~ で、私もNHK放送のスクランブル化が望ましいことを述べました。技術の進歩を考えればやはり自然な流れだということなのでしょう。ぜひ強力に推進してもらいたいものです。

ただ、この記事にも

ただ、政府内には、「所得の差による情報格差を作るべきではない」などの慎重論もある。

ということが書かれています。こういう考え方を未だに持っている人がいるのも確かです。このような人は「抵抗勢力」として一蹴して欲しいと思います。そもそも、所得の差によらずテレビを持っているだけで受信料を徴収しようとするのが今までのNHKの受信料制度です。ということは、NHKの受信料を払うことができない人は、他の民放も見ることができなくなるということです。私のブログでも指摘させていただいたとおり、民放においても災害情報など公共性の高いニュースを報道することが義務付けられているのですから、受信料未払いを理由に(テレビが設置できず)民放の受信もできなくする現行の受信料制度こそ「所得の差による情報格差を助長している」といえるでしょう。

NHKの受信料問題に詳しい frendly さんのブログでは、この政府内の慎重論はNHK副会長の永井多恵子氏の発言と類似であることが指摘されています。自己弁護を重ね続けているさまが、いよいよもってNHKの末期症状を呈しているように思えてなりません。

X X X

NHK民営化について民放は大賛成かと思いきや、こんな記事がありました。個人的にはちょっと意外でした。

放送2元体制の実績に理解求める…民放連会長

この記事によれば民放連の会長であるフジテレビの日枝氏は

「日本の放送体制は、民放とNHKが2元体制で互いに作り上げてきた。これは国民にとって良いシステム。これまでの50年の実績を理解し、諸外国の例も引いて議論していただきたい」

と述べ、NHK民営化には暗に反対しています。以下に示すように、民営化後のNHKを強力・強大な競争相手として恐れているのかも知れません。

視聴率競争がさらに激化することを恐れている

今まではNHKに視聴率で負けても、他の民放局に負けていなければスポンサーから怒られるだけで済むが、民営化後にNHKがCMを流し始めたらNHKの方にスポンサーが逃げてしまうかもしれない。

NHKのコンテンツはオンデマンド向きなものが多い

カネの取れるコンテンツは消耗品的なエンターテイメントの垂れ流しではなく、NHKが流すようなニッチだが教養的、知識欲を掻き立てるような番組かもしれないという点にうすうす気づき始めているので、VoDサービスなどの新しいビジネスモデルにおける強力な競争相手として恐れている。

つまり、ここにNHKと民放のもたれあいの構図が浮かび上がってくるのです。逆に言えばNHK民営化を果たせば、これまで既得権益に守られ、惰性が目立つ民放にも影響が及び、より質の高いコンテンツが提供されるということかも知れません。

X X X

NHKの民営化はNHKのみならず民放も含めた地上波放送全体に喝をいれる起爆剤となり得ると思います。視聴者にとってはいいことづくめだと思いますが、既得権益に守られたNHK/民放にとっては多大なる試練を与えることでしょう。NHKの民営化については彼らが今後抵抗勢力になる可能性があるので監視要です。通常この手の話はマスコミが行政を監視するのですが、今回ばかりはマスコミの再編を伴うかもしれないのでマスコミ自体にその機能を期待することはできません。ブログをはじめとするネットの目で監視をしてゆきましょう!!


「史上最悪のソフトウェアバグ」ワースト10 を通して考えたこと

2005年11月20日 | 科学技術・システム・知財など
HotWired 「史上最悪のソフトウェアバグ」ワースト10を紹介( 

HotWiredで「「史上最悪のソフトウェアバグ」ワースト10を紹介」という面白い記事があったので紹介します。この記事を読んでそれぞれのバグについて何が原因であったか私なりに考えてみました。史上最大のバグ、というくらいだから原因も史上最大級に複雑なものなのかなと思って読んでみたのですが、私が読んだところでは、要求仕様バグ設計バグ単体試験不足高負荷・競合試験不足走行・運用試験不足セキュリティ耐性試験不足、運用ドキュメントの整備不足など、ソフトウェアの開発工程の基本的な部分が十分に実施されていないことが原因のようでした。しかも、時代を経てもバグが除去できなかった理由にさほどの違いが見られず、過去に犯した過ちを繰り返してきた実態が垣間見えます。

このような状況を解消する方策としては、まず仕様・設計のレビュー、および試験、運用得手順書の作成まで手を抜いてはいけない、ということでしょう。そのためには、何をもってレビュー・試験が網羅したと言えるのかわかっている必要があります。次に、実際には開発にかけられる費用、日数が決まっているので網羅的にレビュー・試験をすることは不可能であることを認識した上で、項目の優先度を勘案し、優先度の高いものから項目消化をし、実施しなかった項目については、実施なくても良い理由、実施しないことによる影響を分析する必要があります

これらのことは口で言うのは易しいのですが、実行に移すとなると非常に難しい作業です。しかし、これができるかどうかがソフトベンダ、システムインテグレータおよびその顧客にとって、今後の会社の命運を握っているといっても過言ではないでしょう。

また、上記の作業を抽象化して書くと、『課題に対し何をしなければならないか可能な限り網羅的に抽出し、そのうち実際に何をするか、実施しないことによる影響は何か分析する』、ということになります。これは何もソフトウェア開発の品質確保だけでなくマネージメントや経営についても適用できる考え方ではないかと考えます。この論を発展させると、システム障害をよく引き起こす企業はその経営やマネジメント手法にも問題を抱えていることが多いといえるのかもしれません。


デジタルコンテンツ・ワーキンググループへのパブコメ出しました

2005年11月15日 | 科学技術・システム・知財など

今日11月15日締め切りだった、デジタルコンテンツ・ワーキンググループへのパブコメを昨晩提出しました。パブコメを提出されたブロガーの皆様お疲れ様でした。今回は急だったので、あまり煮詰められずに提出してしまった感があります。

一応前のブログで、もう少し記述を追加してからパブコメを提出する、といっていたので、提出した内容を紹介します。基本的には前回のブログの内容と同じですが、赤太字の部分が追記したところになります。ご参考まで。

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【はじめに】
コンテンツ産業の振興とは、1人24時間という限られた時間の中で、いかに"国産"のコンテンツを多くの人に利用してもらうか、それによって多くの対価を得るかという問題に帰着できると考えます。そう仮定し場合、コンテンツに接するシチュエーションおよびターゲットユーザを定義し、それぞれに対するデジタル化における問題および振興戦略案について検討すべきであると考えます。まず以下に私が考えたシチュエーション3つ、ターゲットユーザ4つを例示し、次にデジタル化における問題、振興戦略案の例を示します。ご検討いただければ幸いです。

【コンテンツに接するシチュエーション】
コンテンツに接するかどうかという観点で人の時間を分類すると、下記の3つのシチュエーションに分類できる。

(1)コンテンツを意識的に消費している時間
  TV、読書、映画・音楽鑑賞、ゲーム など
  家ではテレビ・音楽鑑賞・読書・インターネットをし、外出しても映画・ウォークマン・携帯などで常にコンテンツにアクセスしている現代人の行動様式を考えると、既にこの時間は飽和傾向であり、今後この時間を増やすことは困難であると考えられる。あとは、限られた時間の中でいかに日本製コンテンツに接する割合を増やすかがコンテンツ産業振興のポイントとなる。

(2)コンテンツを無意識的に消費している時間
 街中などで流される映像・音楽・広告 など
 潜在的なコンテンツ消費市場としてもっと注目されてよい時間である。住環境などへの配慮が必要ではあるが、今後の研究によって開拓が期待される時間である。

(3)コンテンツを消費していない時間
 授業中、勤務中、睡眠中など ほかの事に集中している時間
 このような時間についてもコンテンツの消費を促すことはやり方によっては可能である(教育番組、睡眠学習など)。しかし、ほかの事に集中すべき時間をコンテンツの消費時間に変えてしまうようなことを国レベルでの政策で行うのは問題であると考える。例えば睡眠時間を削ってまでコンテンツ消費に充てさせるような政策をとるのは、健康面、教育面などから悪影響が大きい。


【ターゲットユーザ】
ここでは、あくまで「国産」のコンテンツ産業をいかに振興させるかという観点で議論する必要があることから、日本人-外国人、日本在住-海外在住の4パターンのユーザをターゲットとして分類した。

(A)日本国内に在住する日本人
日本国内に流通するコンテンツをほぼ最大限消費している層である。従ってこのターゲットによる市場は飽和傾向にあり、あとは全体の消費コンテンツのうちいかに国産のコンテンツに触れる時間を増やすかという点がポイントとなる。

(B) 日本国内に在住する外国人
日本語が話せる外国人の場合は上記の(A)に準ずる。日本語が話せない外国人の場合、国産のコンテンツにアクセスさせるためには言語上の障壁を取り除く必要がある。

(C)海外在住の外国人
洋の東西を問わずゲームやアニメ、漫画など日本作品に対する評価は高い。アジア地区においてはさらに音楽、TV番組などの評価も高い。しかしながら、ゲームなどの例外を除き、日本作品を配信するチャネルが十分確保されているとはいえない。アジア地区においては違法コピーが横行しているため、著作権者に利益が還元されないケースも多い。

(D)海外在住の日本人
海外在住の日本人は、日本在住の日本人と同じレベルで日本のコンテンツを享受することはできない。例えば当日のニュースや当日放送されたテレビドラマを日本にいるときと同じように見ることはできない。それゆえに国内にいる日本人よりも積極的なコンテンツ消費者となりうる。


【戦略例】
上記で述べたシチュエーション-ターゲットを組み合わせ、それぞれについてデジタル化に伴う課題と振興戦略を整理することで、どのような議論を進めればよいかという点が見えてくると考えます。以下にいくつかの組み合わせにおける課題と戦略の例を示します。

《例1》(1)コンテンツを意識的に消費している時間」-「(A)日本国内に在住する日本人」の組み合わせ

・課題
現代日本人の行動様式を鑑みると、意識的にコンテンツを消費する時間は飽和傾向にあるが、デジタル化に伴い、DRMの利用や、ハードディスク型ポータブルプレーヤーに対する私的録音録画補償金の適用、コピーワンス制度など様々な著作権上のガードが掛けられることで、外出時におけるコンテンツ消費時間が減少する恐れがある。著作権者の保護を確保しつつコンテンツ消費時間の現象を抑止する政策が必要である。

・振興戦略案
 1. DRMの国際標準化を推進すべきである。さらにそれはフリーあるいは十分安価で使えるもので無ければならない。
 2. 私的録音録画補償金については廃止し、ポータブルメディアのコスト増を抑制すべきである。これにより、コンテンツを利用するシチュエーションを減らさずに済むと考えられる。
 3. コピーワンス制度についても再度見直し、私的録音・録画の範疇であるならばこれまでのアナログメディアと同程度の自由度でコンテンツが利用できるようにすべきである。


《例2》「(2)コンテンツを無意識的に消費している時間」-「(A)日本国内に在住する日本人」の組み合わせ

・課題
街中や電車の中など公衆の面前に動画広告などを流す場合、事前にあるいはリアルタイムに動画をネットワークで配信するシステムが想定される。このような広告の形態が一般的にあるとコストの安いインターネットに広告表示端末が表示される可能性があるが、それがハッキングされることによって公衆の面前に不適切な映像が流されてしまう可能性があり、社会に与える影響が大きい。

・振興戦略案
公衆に掲示する動画広告表示端末などには一定の規制を設ける必要がある。例えば、インターネットへの直接接続を認めない、等の規制が必要である。


《例3》(1)コンテンツを意識的に消費している時間」-「(C)海外在住の外国人」の組み合わせ

・課題
海外において、日本のコンテンツの評価は概ね高いが、ゲームなどの例外を除き、日本作品を配信するチャネルが十分確保されているとはいえない。またアジア諸国においては不正コピーが横行し日本作品に対し正当な対価が支払われない場合がある。

・展開戦略案
日本のコンテンツを海外で普及するためのプロモーションを政府主導で行い、コンテンツをデジタル化し、デリバリーはインターネットを使うことで、外国人に対し日本のコンテンツにアクセスできる機会を増やすようなことを検討すべきである。一方著作権保護のため、海外向けのコンテンツはすべてDRMをかけることを推奨するような政策を検討すべきである。


《例4》「(1)コンテンツを意識的に消費している時間」-「(D)海外在住の日本人」の組み合わせ

・課題
海外在住の日本人は日本国内で流通するコンテンツ(TV番組など)に自由にアクセスできない。それゆえにむしろ国内在住の日本人よりも積極的なコンテンツ消費者となりうる。

・展開戦略案
NHKの海外向け放送だけではなく、国内で流通するコンテンツ全般をインターネットなどで海外に再送信できるようにする政策などを検討する必要がある。


 


iPod課金の見送り 私的録音録画補償金制度も2007年度までに見直しの方針!

2005年11月13日 | 科学技術・システム・知財など

iPod課金「現時点では見送るべき」~文化審議会の専門委員会が結論 私的録音録画補償金制度そのものを2007年までに見直し

10月上旬に私的録音録画補償金の是非についてパブコメを送付した文化審議会の法制問題小委員会の第9回会合が11月11日(金)に開催され、iPod課金の見送りと2007年度までに私的録音録画補償金制度そのものの見直しを行うこととする提言がまとめられました。

私的録音録画補償金制度の野放図な運用はひとまずブレーキがかかりました。しかし、パブコメの本領発揮はこれからです。今後私的録音録画補償金制度の見直しに向けた議論の中でパブコメを活用しなが検討を進めてもらわなければなりません。審議の状況を見守ってゆきましょう。

今後193ページに及ぶパブコメが文化庁のWebサイトにアップされる予定のようです。折を見て分析してみたいと思います。


デジタルコンテンツ・ワーキンググループへのコメント

2005年11月12日 | 科学技術・システム・知財など

次世代の日本を担う産業の一つとして、映画・音楽・ゲームなどのコンテンツ産業に注目が集まっています。それを受け首相官邸では知的財産戦略本部コンテンツ専門調査会というものを立ち上げ、コンテンツ産業の振興戦略を検討しているそうです。また、今後コンテンツといえばデジタル化されたコンテンツが主流になることが確実なため、このコンテンツ専門調査会の中のデジタルコンテンツ・ワーキンググループにおいて、デジタルコンテンツの振興策を検討することになりました。

このワーキンググループの今後の進め方に関してパブリックコメントが求められています。期限は11月15日(火)17:00までで、電子メールでも送信可能なようです。今回のブログでは、私がパブコメを書くにあたって、考え方を整理した内容を紹介します。ご意見いただければ幸いです。

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コンテンツ産業の振興とは、1人24時間という限られた時間の中で、いかに"国産"のコンテンツを多くの人に利用してもらうか、それによって多くの対価を得るかという問題に帰着できると考えます。そう仮定し場合、コンテンツに接するシチュエーションおよびターゲットユーザを定義し、それぞれに対するデジタル化における問題および振興戦略案について検討すべきであると考えます。まず以下に私が考えたシチュエーション3つ、ターゲットユーザ4つを例示し、次にデジタル化における問題、振興戦略案の例を示します。

【コンテンツに接するシチュエーション】
コンテンツに接するかどうかという観点で人の時間を分類すると、下記の3つのシチュエーションに分類できる。

(1)コンテンツを意識的に消費している時間
  TV、読書、映画・音楽鑑賞、ゲーム など
  家ではテレビ・音楽鑑賞・読書・インターネットをし、外出しても映画・ウォークマン・携帯などで常にコンテンツにアクセスしている現代人の行動様式を考えると、既にこの時間は飽和傾向であり、今後この時間を増やすことは困難であると考えられる。あとは、限られた時間の中でいかに日本製コンテンツに接する割合を増やすかがコンテンツ産業振興のポイントとなる。

(2)コンテンツを無意識的に消費している時間
 街中などで流される映像・音楽・広告 など
 潜在的なコンテンツ消費市場としてもっと注目されてよい時間である。住環境などへの配慮が必要ではあるが、今後の研究によって開拓が期待される時間である。

(3)コンテンツを消費していない時間
 授業中、勤務中、睡眠中など ほかの事に集中している時間
 このような時間についてもコンテンツの消費を促すことはやり方によっては可能である(教育番組、睡眠学習など)。しかし、ほかの事に集中すべき時間をコンテンツの消費時間に変えてしまうようなことを国レベルでの政策で行うのは問題であると考える。例えば睡眠時間を削ってまでコンテンツ消費に充てさせるような政策をとるのは、健康面、教育面などから悪影響が大きい。


【ターゲットユーザ】
ここでは、あくまで「国産」のコンテンツ産業をいかに振興させるかという観点で議論する必要があることから、日本人-外国人、日本在住-海外在住の4パターンのユーザをターゲットとして分類した。

(A)日本国内に在住する日本人
日本国内に流通するコンテンツをほぼ最大限消費している層である。従ってこのターゲットによる市場は飽和傾向にあり、あとは全体の消費コンテンツのうちいかに国産のコンテンツに触れる時間を増やすかという点がポイントとなる。

(B) 日本国内に在住する外国人
日本語が話せる外国人の場合は上記の(A)に準ずる。日本語が話せない外国人の場合、国産のコンテンツにアクセスさせるためには言語上の障壁を取り除く必要がある。

(C)海外在住の外国人
洋の東西を問わずゲームやアニメ、漫画など日本作品に対する評価は高い。アジア地区においてはさらに音楽、TV番組などの評価も高い。しかしながら、ゲームなどの例外を除き、日本作品を配信するチャネルが十分確保されているとはいえない。アジア地区においては違法コピーが横行しているため、著作権者に利益が還元されないケースも多い。

(D)海外在住の日本人
海外在住の日本人は、日本在住の日本人と同じレベルで日本のコンテンツを享受することはできない。例えば当日のニュースや当日放送されたテレビドラマを日本にいるときと同じように見ることはできない。それゆえに国内にいる日本人よりも積極的なコンテンツ消費者となりうる。


あとは、それぞれのシチュエーション-ターゲットの組み合わせでデジタル化に伴う課題と振興戦略を整理してゆけばよいと考えます。以下に「(1)コンテンツを意識的に消費している時間」-「(A)日本国内に在住する日本人」の組み合わせにおける課題と戦略の例を示します。

・デジタル化に伴う課題
現代日本人の行動様式を鑑みると、意識的にコンテンツを消費する時間は飽和傾向にあるが、デジタル化に伴い、DRMの利用や、ハードディスク型ポータブルプレーヤーに対する私的録音録画補償金の適用、コピーワンス制度など様々な著作権上のガードが掛けられることで、外出時におけるコンテンツ消費時間が減少する恐れがある。著作権者の保護を確保しつつコンテンツ消費時間の現象を抑止する政策が必要である。

・振興戦略案
 ① DRMの国際標準化を推進すべきである。さらにそれはフリーあるいは十分安価で使えるもので無ければならない。
 ② 私的録音録画補償金については廃止し、ポータブルメディアのコスト増を抑制すべきである。これにより、コンテンツを利用するシチュエーションを減らさずに済むと考えられる。
 ③ コピーワンス制度についても再度見直し、私的録音・録画の範疇であるならばこれまでのアナログメディアと同程度の自由度でコンテンツが利用できるようにすべきである。

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もう少し内容を洗練し、例も追加した上でパブコメとして提出しようと思います。それにしても、11月2日に意見を求めておきながら、11月15日締め切りとはちょっと厳しい日程でしたね。パブコメを出そうと考えている方、ぜひ頑張って提出してみてください。


東証システムダウン 原因判明

2005年11月08日 | 科学技術・システム・知財など

東証システム障害、原因は富士通の項目記載漏れ

東証によると、売買システムの注文処理能力を増強した際、市場参加者のデータファイル関連のプログラムにバグが見つかったため、東証が確認した上で富士通が10月9日に修正した。

10月13日に修正後プログラムを正規登録する際に、富士通が東証側にバグ修正作業の資料を送付したが、必要な項目の一部に記載漏れがあったという。このため正規登録後のシステムに、修正後の正規プログラムと旧プログラムが混在する構成になってしまった。

東証システム障害について、詳細な情報が明らかになりました。私の前のブログでは、当初予定に無かったプログラムの更改が何らかの圧力によって実施されている、という点を指摘しました。今回の記事によれば、特別誰かがプログラム更改を強いたわけではないようですが、やはりプログラムの更改は予定外の行為であったようです。作業中にちょっとバグを見つけたため、ちょっと直してすぐに商用システムにインストールしようとしたのかも知れません。

ソフトウェアは修正が一見簡単なため、このように安易なプログラム更改が行われがちですが、実はこれは大変危険です。簡易に直せるように見えるバグでも、意外なところに影響を及ぼしていることもありますので、改修そのものを慎重に実施する必要があるのは言うまでもありません。さらに、今回の例のように改修後のソフト入れ替え手順書についても、ソフトウェアと同様にドキュメントに対する試験を実施し、品質を高めておく必要があります。ただのメモ書きレベルのもので済ませようとするのはとんでもない話です。このような手順を踏んでファイルを更改しようとすると、どんなに早くても1~2週間は経ってしまうものです。今回のソフト改修はバグ発見から数日で更改していましたので、いかに拙速であったかが判ります。

今回の障害は更改手順書の誤りが原因であることがわかりました。しかし、バグ発見から改修までの期間を考えると、システム結合試験レベルまで実施していたのかどうかは疑問です。今のところ追加の障害は無いようですが、念のため品質強化試験を実施する方が身のためだと思います。(少なくとも今のプログラムは、商用環境において月またぎ処理に成功した実績はありませんので、12月1日の処理が正常に動作するかは早急に確認すべきと考えます。)


自民党もインターネットを使った選挙を前向きに検討開始

2005年11月06日 | 政治・社会

IT選挙解禁へ動き活発 自民検討、議員立法提出も (共同通信) - goo ニュース

ついに自民党もインターネットを使った選挙が実施できるよう、公職選挙法の改正に踏み切るかもしれません。これまで自民党はネットを選挙に使うことに慎重だったのですが、9月の総選挙で大勝したのを受け、旧来の組織型選挙だけでなく無党派層を引き付ける施策が非常に効果があると悟ったことから、こうした方針転換に至ったのではないかと思います。背景には次回の選挙でもこの浮動票が民主党などに流れないようつなぎ止めておきたいという意図があるのかもしれません。また、「改革」続行を印象付ける目的もあるでしょう。

私としては、自民党の意図がどうであれ、インターネットを使った選挙活動ができるようになることは非常に重要だと考えているので、是非とも法制化して欲しいと思います。

ただ自民党内には「IT選挙の解禁は民主党を利するだけ」と根強い慎重意見もあり、法改正には異論も予想される。

こういう意味不明なことをいう人々を「抵抗勢力」と位置づけて、郵政民営化の時と同じような勢いでどんどんやって欲しいですね。

近々まとめられる報告書について、当ブログでもレビューをしてみたいと思います。今から楽しみです。


東証大規模システム障害について

2005年11月02日 | 科学技術・システム・知財など

11月1日東証のシステムが朝から全面的にダウンし、午後1時まで全く取引ができなかったそうです。世界第二位の取引高を誇る証券取引所のシステムがダウンするというのは極めて異例なことであり、東証やシステムを開発した富士通は今後責任を問われるなど、大変なことになっています。

東証で取引全面停止、午後に再開 終値は年初来高値更新
システム拡張が原因 東証、責任問題に発展も
東証、午前の売買停止 システム障害

個人的にこの手のトラブルは非常に気になるし、自分の仕事にフィードバックをかける『良い』教材でもあるので、報道されている内容から原因を考えてみたいと思います。

【直接の原因】
(1) 東証システム側のサーバが証券会社端末の照合処理を行う際、証券会社コードの読み込みに失敗した。

(2) ソフト障害に対応するバックアップシステムが何らかの理由で動作しなかった。


【もう少し深堀りしてみると】
(1) 10月8日~10日にソフトウェアの増強を実施したが、そのソフトのバグではないかと思われます。しかし10月中は正常に稼動しており11月になってから初めて問題が顕在化しました。このことから月またがりの処理にバグが潜在していたと思われます。

(2) どのようなバックアップシステムを構成していたか不明ですが、恐らくハード故障に対応したバックアップシステムのみが構築されていたものと思われます。ソフトウェア故障に対応するバックアップの古典的なものの一つとして旧プログラムに切り戻してその場をしのぐ方式がありますが、大規模システムにおいては1つのソフトウェアを切り戻すと別なソフトウェアの動作に影響を及ぼすこともあるため、事前に切り戻しを実行した場合の影響範囲を十分精査した上で切り戻し操作を試験で確認しておくことが重要です。また、この切り戻し手順を自動化することは技術的、費用的に大変困難です。簡単に考えただけでも、切り戻しが必要な場合の条件抽出、あらゆるケースに置ける切り戻し手順の規定、規定した手順の試験、などを多くのことを実施しなければならないためです。


【さらに根本原因を考えてみる(邪推込み)】
※以下の記述は私の想像が含まれていますので、話半分に読んでください。正確な不具合原因については、ベンダ側で追って発表されると思います。

10月7日の報道
3連休中に注文処理システムを増強、来年予定作業を一部前倒し=東証
では

「今回は、2月までに予定するハードとソフトの入れ替えは行わず、既存システムの余力を引き上げる」

「作業はテストを行ったうえで進め、その結果を踏まえ、可能であれば処理能力を700万件台に引き上げる、という。ただし、テストの結果次第では、増強作業を見送ることもありうるとしている。」

ということでした。

これによれば、10月8日~10日のシステム増強ではソフトウェアの更改を行う予定は無かったようです。しかし現実にはこの時期に何らかのソフトウェアがインストールされ、そのソフトウェアによって不具合が発生しています。

当初計画では

・ハード、ソフトの更改は実施しないで既存システムの余力を引き上げる(更改は2006年2月を予定)
・テストを行い、性能が上がらないのであれば増強作業を見送る

ということなので、例えばOSやミドルウェアなどのチューニングによって性能を引き上げることを狙っていたのではないかと思われます。

しかし、その後何らかの圧力で、この3連休の間に必ずシステムの余力を引き上げるよう求められた可能性があります。OS・ミドルウェアチューニングの結果が芳しくなかったのですが、一方で昨今の取引量(最大500万件)を考えると余力の引き上げ(620万件→750万件)は必須であるため、不完全な状態の性能向上用ソフトウェアを前倒しで導入することで性能向上を図ろうとしてしまったのではないでしょうか。そして試験の結果正常に動作したように見えたため導入に踏み切った可能性があります。実機では月替わりの処理を確認することは困難(システムの時計を一旦変更する必要がある)であるため、ベンダ内で月替わり処理の試験が漏れている場合は、バグとして残ってしまうする可能性があります。


【得られた教訓】
・どんなに急場しのぎが求められたとしても十分試験されていないソフトウェアを商用システムに導入するべきではありません。そのことの危険性は開発ベンダから顧客に対し十分に伝える必要があります。

・ソフトウェア故障のバックアップは様々な条件が複雑に関連するため、自動化はほとんど不可能であるため、手動で実施することを想定すべきです。旧バージョンのソフトウェアへの切り戻しについても十分詳細な手順が規定され、その手順に従って確かに切り戻しが可能であることを試験する必要がります。


【今後の対応について】
報道
東証トラブル、開発責任追及も システム増強前倒し
によれば、

「今回のトラブルを受けて、東証は06年2月のシステム増強をさらに前倒しして実施する方針だ。約12億円をかけて、通信機器やサーバーを増設。1日の売買注文の処理可能件数を現行の750万件から900万件に引き上げる。」

とあります。当ブログでは本来2006年2月に導入予定であったソフトウェアを品質が十分でない状態で10月にインストールしたことが今回の障害の原因であると想定していますので、今回の修正したソフトウェアにもまだまだバグが内在している可能性が高く、これを放置したままハードウェアの更改を行い処理件数を引き上げるのは非常にリスクの高い行為であると考えます。むしろ私は以下の2点を実施すべきと考えます。

  1. 障害が起こったときに旧プログラムに切り戻しができるよう、精度の高い切り戻し手順書を作成し、十分試験しておくべき
  2. 今回改修したソフトウェアについて、引き続き予定されていた試験を実施すべき。特に月またぎ処理にバグがあったのであれば、次に恐れなければならないのは「年またぎ」処理と想定されるため、年またぎ処理については早急に試験を実施しバグFIXした段階で年末までにインストールすべき

以上で昨日の報道やnoribo2000の私見(邪推)から、根本原因と教訓、次に実施すべきことなどを議論しました。この手の話は他人事に思えないので、今後もチェックしてゆこうと思います。