先日の続き、角膜移植について。
角膜とは?
目の最も前のいわゆる黒目の前にある、透明な膜です。
厚さは中央部で約0.5mm、周辺部の白目に近いところで0.7mm程度で、直径は11~12mmです。
目に入った光の焦点を合わせるための屈折は、水晶体(レンズ)で行っていると思われがちですが、目の屈折力の多くはこの角膜の部分で行われています。
したがって、ごくわずかな変形や混濁が視力には非常に大きく影響してしまいます。
角膜の構造は?
角膜は約0.5mmの透明な膜ですが、その構造は大きく5層に分けられます。
眼の表面から、角膜上皮細胞層:数層の角膜上皮細胞からできている層で、その表面は涙液により保護されています。
①上皮細胞 細菌などの付着から眼を守っています。
②ボーマン(Bowman)膜 角膜上皮細胞層の基底膜となっています。
③角膜実質層 角膜全体のほぼ95%は、角膜実質層で構築されていて、ほとんどが繊維で形成されていてところどころに実質細胞があります。
④デスメ(Descemet)膜 角膜の構造の保持に重要な膜で、実質層の内側に位置しています。
⑤角膜内皮細胞層 角膜の最も内側にある、一層の細胞層です。蜂の巣の様な六角形構造をしているのが理想です。
この細胞はポンプの役割をしていて、眼の中から角膜にしみてくる水分を、再度、眼の中に戻してあげる役割をします。
しかし、内皮細胞の機能が衰えてくると、角膜中に水分が溜まる状態になります。
この病気を水疱性角膜症と呼びますが、現在、我が国で角膜移植を受ける患者さんの中で最も多い疾患です。
角膜の病気は?
①外因的疾患によるもの、ウイルスの感染や細菌の感染等により透明性を失ってしまうもの。
②遺伝的疾患によるもの、角膜の変成や変形等で、原因が遺伝的なもの。
③外傷によるもの、酸やアルカリによる外傷、火傷、眼を傷つけるような事故、薬物の副作用によるもの。
角膜移植とは?
角膜移植とは、角膜が外傷や感染症、遺伝的疾患などにより透明性を失ったり、変成や変形により目のフィルムに当たる網膜に、像を結ぶことができなくなった場合に行われる手術のことです。
大きく2通りの方法があります。
変成や混濁している箇所が浅い場合には、患者さんの角膜の表層を交換する、表層角膜移植手術を行います。
しかし、全体が濁ったり変性を起こしている場合には、全体を入れ替える全層角膜移植手術を行う必要があります。
又、最近では歯根部利用人工角膜手術や人工角膜など新しい治療方法も出て来ています。