皇居の落書き

乱臣賊子の戯言

皇室典範改正について

2004-08-29 23:28:56 | 皇室の話
○皇室典範改正について、その大前提条件
日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴であるところの天皇の地位について、とても大切なものであることは言うまでもない。

しかしながら、その地位の存続も、自然人が担うものである以上、断絶の危機を完全に払拭するということは不可能であり、現在、いよいよその危機が近づきつつあると言える。

筆者としては、現在の皇室典範そのものに、システムとしての欠陥があると見ているが、具体的にどのような改正を行うべきかについては、まだ検討中である。

ただ、そのような具体的な改正の前に、以下に述べるような重大な前提条件のあることを、忘れないようにしなければならない。

○皇室の方々のお気持ちへの配慮
皇室典範の改正については、国会の議決の対象であり(憲法第2条)、国政に関する事項であって、皇室は関与することができない。

しかしながら、皇室典範の、特に皇位継承に関する条項の改正は、皇室の方々のご人生について、重大な影響を及ぼす。

皇室の方々が、直接意見を述べることができない以上、ここは、皇室の方々のお気持ちについて、慎重な配慮が絶対に必要である。
この点については、皇室会議の審議事項とするといった工夫はどうかという意見もある。

傾聴に値する指摘である。

○国民の意見の統合
実は、この条件がもっとも困難である。

天皇という地位について、機能的に説明すれば、様々な利害の対立、紛争である政治の世界を離れ、そのような意見の衝突の世界を超えて、日本の国を一つの共同体として統合するという役割がある。
ところが、その地位の継承について定めた皇室典範は、現行憲法では国会の議決の対象とされ、要するに法律であると解釈されている。

ここに、重大な落とし穴があると思う。本当に単なる法律か。

法律ということであれば、与野党の対立が大きく、辛うじて与党の多数で可決されても、すぐさま廃止法案が提出される場合だってある。
そのような場合、何とか改正することができたとしても、多くの日本人の中に、納得できない気持ちが残存してしまう危険性がある。
特に、政党の状況を見てみるがいい。与野党の対立は、対立のための対立であるかのような様相を呈している。

これでは、天皇という地位の機能にかんがみたときに、非常に具合が悪い。

皇位継承の在り方が改められたとして、その新たな在り方に基づいた天皇という地位につき、すべての国民が納得できるような意見の統合というものが、絶対に必要である。

○皇位継承の在り方を改めるについての心構え
皇位継承の在り方を改めるということは、日本という国が始まって以来の、日本の国柄と直接結びつく皇統の在り方を改めるということである。
このことは、たかだか60年前にできた現行憲法の改正よりも、遙かに重大な問題なのではないか。

もちろん、法律論としては、憲法の最高法規性は否定のしようがなく、憲法によって、皇室典範は国会の議決の対象とされており、形式的には憲法の下位に置かれた法律として、国会で審議されるのであろう。

しかし、心構えとしては、憲法よりも重要な、日本という国始まって以来の一大事であり、過去の無数の日本人に対して、また、将来の無数の日本人に対しても、責任を負わなければならない事柄であるとの覚悟が必要であろう。

政府側において、法律論に携わる人間においては、皇室典範を単なる法律といってすますような態度は、絶対にとって欲しくないのである。
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