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新潟久紀ブログ版retrospective

病院局業務課9「コロナ面会禁止下のリモート支援」

●コロナ面会禁止下のリモート支援

 令和2年は未曾有の新型コロナウイルス感染の急速な拡大の中で、新潟県立13病院の業務運営をサポートにあたる病院局業務としては日々、現場からの悲鳴のような申し入れや相談への対応に追われていた。
 マスクや防護服など資材の不足について、病院間でギリギリの在庫調整をしたり、既に在庫が枯渇している卸業者以外のルートは無いかとネットはもとより職員各自のコネクションをフル稼働させて探し求めたりといった、医療活動にあたる上での必需品確保対策が最重要であったのだが、時に思わぬ案件が飛び込んでくることもあった。
 入院中の患者と家族がリモートでビデオ面談できるようにして欲しいという患者家族からの要望の申し入れがあったのだ。
 高齢の母親が入院したのだが、病状がいつ深刻化するかわからない状態の中で、話ができるうちに面会をしたいのにコロナ禍で近しい家族といえども面会が叶わないのは辛い。県立なのだからリモート面会できる設備くらい整えるべきではないか、というのである。
 最初聞いた時は正直「本気か」と思った。ただでさえ抵抗力が下がっている入院患者の中で新型コロナウイルスの院内感染が起きないように細心の注意を払っている上、医療スタッフが感染しては病院そのものが機能しなくなるという極度の緊張の中において、更にこの頃はこのウイルスの感染力や深刻さにまだまだ分からないことが多いという段階でもあったのに、疲弊度が深まる看護師の作業負担を更に増すような要望をよくも声高に言えるものだと、半ば呆れて脱力したものだ。
 患者へのサービスとして一律に担保されるべき医療上の必要であればまだしも、コロナ禍の状況を踏まえて面会禁止に理解も大勢からいただいている中で、”あれば良い、できれば良い”事に経営資源を割いている余裕は無いのである。
 しかも、どうしてもというご家族はスマホを調達すれば、LINEビデオ通話などが容易にできる時勢だ。パーソナルな要望にはパーソナルな対応をお願いしたいと思ったものだ。
 瞬間湯沸かし器のように怒りにも似た否定的な考えが頭を巡ったものの、しかし、患者とその家族にすれば急変して万が一の事があれば一生モノの悔やみになるに違いない。一家族の話であっても個への姿勢というのは全体の在り方や体質を図らずも浮き彫りにするものかも知れないとも思えてきた。
 私は自分の最初の反射的な思いは棚に上げて、「この要望に応えることができる方法はないか」と考えた。
 リモート面会用のタブレットやwifi環境などは厳しい財政状況とはいえなんとかやり繰りしてささやかながら整備できるかもしれない。問題は特に高齢の入院患者がタブレットを操作するにあたってサポートする余力が看護師など医療スタッフには無いということだ。現場に調整を求めれば「本庁は医療スタッフは本務以外の作業で疲弊させるのか」と、どやされるのが必至のコロナ禍の情勢だ。
 そんな時、以前病院局に勤めていた時に知り合った民間の方を思い出した。ご自身が重い病で県立病院に入院して以来、県立病院におけるボランティア活動などに関わっていいただいている”サポーター”だ。院内感染の対策をしっかり講じる中でリモート面会のサポートをお願いできないかと相談したら、前向きに考えていただけるということに。
 考えあぐねれば何等かの隘路が見えてくるものだ。その後、紆余曲折があり速やかに対応できたということにはならなかったが、こうした”できるようにするための検討”の積み重ねが新たな課題に臨み続けていける基礎づくりになると考えている。

(「病院局業務課9「コロナ面会禁止下のリモート支援」」終わり。県職員として12箇所目の職場となる病院局業務課の回顧録「病院局業務課10「インフルエンザワクチン対応」」に続きます。)
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