新潟久紀ブログ版retrospective

土木部監理課4「公共事業悪玉論などに財政担当を踏まえた見識を」編

●公共事業悪玉論などに財政担当を踏まえた見識を

 私が本来の事務分掌を超えてまで土木部の政策の企画調整に関わりたかった理由は、私が県職員を目指す源泉となった郷土の保全への熱い思いからだけでは無かった。
 財政課で土木部予算の査定担当をしていた平成16年度といえば、バブル経済の崩壊以来続く税収減や、国が三位一体の改革と称して進めた政策の一つである地方財源締め付けなどにより、本県も財源的に厳しさを増し、貯金である財政調整基金も数年で枯渇する見通しであるなど危機的な財政状況であった。
 一方で、それまでに景気回復を目指して続けられてきた経済対策としての公共事業に係る借入金の返済の増嵩が見込まれ、先行きの負担を少しでも軽減すべく、公共事業予算の抑制が命題の一つとなっていた。
 公共事業はそもそも乗数効果、つまり経済波及効果が高いといわれることから、不況下の所得確保策として従前から切り札のように何度も発動されてきたカードだが、広い県土で自然災害リスクが高いことと、特に土木建設業者が多いという本県の産業界の構造も相まって、他県に比べて財政健全化を理由とした公共投資の絞り込みを始めるのが遅れたきらいがあった。それが今になってかえって急ブレーキのように投資抑制に舵を切らざるを得ない状況にもなっていた。
 社会経済情勢の変化に対応して経営改革の努力をすることなしに、旧態依然とした放漫経営を続けるような土木建築業者を、いたずらに延命するような経済対策としての公共投資には私はもちろん賛成しかねる。そうした視点で、緊急性や重要度などに疑問のある事業には予算要求案に徹底して切り込みをかけた。一方で、公共事業予算査定のための調べ物をしている中で気になる情報もあった。日本全体として見たマクロのデータによれば、ここ数年来の公共投資の抑制により、社会資本が毀損してきているというものだ。
 高度経済成長時代に続々と建設された社会資本は、耐用年数を迎えて老朽化が進んでいるのに、公共投資の抑制で改修や更新の手当が行き届かず、崩壊や事故のリスクが高まっているのだという。1980年代であっただろうか、米国の西海岸でハイウェイの高架が老朽化により次々と崩れ落ちて大災害になったショッキングな事例を思い出す。このままでは早晩、日本も同様になるというのだ。
 そうした指摘や議論の中で、長寿命化のためにしっかりとした計画に基づいてメンテナンスしていくことにより、財政負担の平準化と施設損壊リスクを低減し、結果して施設の生涯にわたるコストとリスクを下げていこうという政策が注目され始めていた。
 財政難と社会資本の保全をできるだけバランスさせようという視点で、ライフサイクルコストを踏まえた投資には積極的でもあるべきという考え方には非常に共感できた。予算査定案の作成においては新規建設系と維持補修系の予算のバランスに腐心したものだ。
 そうなると、具体の個所付けやコストの掛け方の個別具体にも関心が高まってきていた。財政課の査定官として得た知見を活かすことで、郷土保全の公共投資が、効率的なコストで、より良い実施内容につながるように貢献したい。土木部の政策の企画調整への関与にはそんな思いもあったのだ。

(「土木部監理課4「公共事業悪玉論などに財政担当を踏まえた見識を」編」終わり。「土木部監理課5「現地視察は独自企画で一人行脚だ」編」に続きます。)
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