新潟久紀ブログ版retrospective

【新連載】活かすぜ羽越本線100年1「普段使いの視点で」

■JR羽越本線100年を機に新発田地域の振興を考えます。
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◆普段使いの視点で

 新潟県の出先機関であり北部地域4市町を主な所管区域とする新発田地域振興局の局長として令和5年4月に着任して以来、県ならではの広域的な視点での地域活性化の取組とは何かを自問自答している。
 新発田地域振興局は、新潟県の北部にある新発田市、阿賀野市、胎内市、聖籠町の市町4つを主な所管区域として、道路や河川、農業産地育成支援に係るインフラ整備や、保健や福祉、生活環境関連のセーフティーネット機能を担うことを主な仕事とする新潟県の地域機関であるが、その上で新潟県の勢いを維持増進させるため、振興を標榜する通り、地域の活性化を担うことにも力を入れてきている。
 振興について突き詰めて考えると、管内に住み続ける人や関心をもって関わる人が増えることに行き着く。これまで管内に散在する観光資源など地域の魅力情報のウェブ発信など重ねてきたのであるが、人口減少に歯止めはかからず来訪者増への効果も検証困難で、正直なところ手応えが感じられない。
 そんな折に、令和6年は「JR東日本の羽越本線全線開通100周年」であると聞いて、ハタと考えた。羽越本線は、新潟の県都にある新津駅を起点に、新発田市、阿賀野市、胎内市を縦断して隣の村上市以北に抜け、遠く秋田駅までを貫く日本海側東北部の公共交通の大動脈ともいえる鉄路だ。
 鉄道路線というのは、市町村の域を越えたネットワークであることや、社会や産業との関連のさせ方に知恵の出しどころが多く、広域的自治体たる新潟県として、さらには具体の生活と生産の現場に立地する県出先機関として、その利活用の在り方や活性化を考えてみるに相応しい基盤であると再認識できる。
 そして羽越本線と言えば、令和5年11月にJR東日本が「利用の少ない線区の経営情報」と称して公表した34路線62区間での648億円の赤字の中でも、村上駅と山形県の鶴岡駅の区間での49億円余りの赤字がワーストであったとの報道が耳に痛く残っているところだ。
 この公表情報において、我が管内に関しては、新津駅から新発田駅の区間の赤字が9億円程度であり、新発田から管内北端で隣接する坂町駅までは開示対象とされていないので、相対的に深刻度は高くないのかもしれないが、人口減少が進む中で利用が減少し続ければ、ともすれば存続についての議論を招いてしまうかもしれない。気が抜けないところだ。
 羽越本線が大いに利用されることそのものは地域振興の目的ではないが、その利用が増えるためにはどうしたら良いかということを地域の論点課題と組み合わせながら考えていけば、アイデアは地域の活性化に通じるように思えてならない。
 これまでの鉄道活性化といえば、懐かしい蒸気機関車や酒食グルメなどイベント列車を走らせたり、観光の目的地をアピールしてそこへの乗客を増やしたりということが主な手法とお見受けするが、車窓を楽しむ列車は地域で維持されている景観を"秒"で消費するのみで地元住民の労苦への還元が目に見えず、よってそれが沿線に若い人を留めおくことに繋がるとは考えにくい。また、「歴史の京都」や「最新の東京」のような圧倒力と再来誘因力のない新潟のような地方においては、観光目的地となるのは一時的であったり細い誘客に留まるものだ。
 行政の立場としては、そんな”ハレの舞台演出”で刹那的な盛り上げというのではなく、生活や産業に資する鉄路として、いわば普段使いでの盛り上げを考えなくてはならない。それは通勤や通学、普段の休日等に買い物で市街地へと出掛けるに使われる鉄路としての視点であり、郊外や田園に点在する「無人駅の使われ方」の問題であると思う。
 羽越本線全線開通100年というタイミングを捉えた鉄路を活かした地域振興について考え始めた私は、地域機関らしく何事も実際の現場からヒントを得ようと、管内に在る羽越本線の駅とその周辺を見ることから始めることにした。

(「【新連載】活かすぜ羽越本線100年1「普段使いの視点で」」終わります。「活かすぜ羽越本線100年2「新発田駅以南編・中浦駅(その1)」」に続きます。)
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