新潟久紀ブログ版retrospective

燕市企画財政課18「地方創生交付金を活かせ(その1)」編

●地方創生交付金を活かせ(その1)

 私が燕市役所へ出向する2年前の平成26年。国は出生率の低下によって引き起こされる人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持することを目指す「地方創生」を掲げ、政府一体となって取り組むため、「まち・ひと・しごと創生法」を制定し、内閣にまち・ひと・しごと創生本部を設置。12月には、2060年に1億人程度の人口を維持するなどの中長期的な展望を示した「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」を策定するとともに、2015年度から2019年度までの第1期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定した。第1期「総合戦略」では、「地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする」、「地方への新しいひとの流れをつくる」、「若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる」及び「時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する」を4つの基本目標とし、取組を進め始めたのだ。
 地方の個別具体の実情の積み上げから導くのではなく、中央政府による国家的なマクロの状況を俯瞰しての政策の立案と推進というスタイルは、これまでも繰り返され、色々と反省や議論もあるところなのだが、やはりというかまたかというか、政府の掲げた目標に向けた地方の取組を財政的に支援するという方策が打ち出された。要するに交付金をアメとして地方を動かそうという目論見だ。
 地方からの切望でなく国による政策誘導として鳴り物入りで開始された「地方創生」は、地方への交付金のための国家予算が補正によりすぐに用意されたのであるが、地方には新たに財政措置を用意するいとまもなかったこともあり、財政措置にあたっては地方の裏負担を要しない全額国費による地方創生交付金ということで始まった。交付金を得たいなら当該自治体版の「地方創生ビジョンと総合戦略」を即座に策定せよということに。地方は国費100%の交付金を得んがために色めきだった。
 国による"馬車馬にニンジン方式"はいつの世も変わり映えしないものだなとやや呆れるが、国も究極のばらまきとも言われた30数年前の"ふるさと創世1億円"などの反省を踏まえて、外部有識者による審査体制など自治体の取り組み内容の審査をかなり厳格に精査する仕組みを強化した。地方自治体側も、国財政逼迫する折柄、将来に亘る交付金制度とは思えない中で、国費という呼び水に踊らされて下手な投資を打って、後年度財政負担等に禍根を残すことがないようにと慎重になる。国費100%とされながら、交付対象となるための門戸が狭く、地方からも交付金を求める手がどしどしと上がるような状況にもなりにくいという状況になったのだ。
 我が燕市においては、市長はもともと内外の関係者からアイデアマンであると言われていて、国の地方創生の動きなど待たずとも、少子化対策や定住促進対策となる独自の事業展開をしてきており、その伸展や新展開につながる方策をまとめれば容易に交付金を積極的に取りに行けるという素地ができていた。さらに今回の地方創生の取組においては、向こう5年間という取組期間を踏まえて、その先に控えるオリパラに関する全国的な盛り上がりも追い風にして、燕市の主力産業であるカトラリーなどを活かして「ものづくりのまち」としての知名度の向上と製品販路の拡大につなげることで、燕市への関心と勢力を高めて定住者増と少子化対策につなげようという戦略の柱を立てて、ビジョンと総合戦略を取りまとめ、有利な財源の積極的活用に臨んでいた。
 私が出向で赴任する前の平成26から27年度の2カ年に亘り、国からの地方創生に係る交付金は「基礎交付」「上乗せ交付」「加速化交付」と順次予算が積み上げられており、燕市はそれら国費100%の財源を有意義に活用してきていたのだ。

(「燕市企画財政課18「地方創生交付金を活かせ(その1)」編」終わり。県職員としては異例の職場となる燕市役所の企画財政課長への出向の回顧録「燕市企画財政課19「地方創生交付金を活かせ(その2)」編」に続きます。)
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