新潟久紀ブログ版retrospective

土木部監理課8「組合交渉に向けて真夏の道路パト体験(その3)」編

●組合交渉に向けて真夏の道路パト体験(その3)

 運転手は寡黙に路面に目配せしながらパトロール車の操作を続けるが、助手席の若手職員は、道路に目をやりながらもとにかく私に話しかけてくる。道路パトロールの業務そのものから土木部出先機関の業務運営の話などのほか、「本庁勤めの幹部が道路パトロールに同乗するとはあんたも変わっているねえ」という流れで、私の生い立ち等を尋ねてきたかと思えば、時には自身の来歴や家族の話までと幅広い。最初は気さくに話しかける中で、私の気を緩ませて組合として都合の良い発言を引き出そうとでもしているのかといぶかったのだが、暫く話しに応じていると、そんな腹黒さがあるのではなく、キャラクターとして人懐こいという事のようだった。なるほど、この人当たりの良さが組合員の中でも好感を得て結果して幹部に推されているのかもしれない。官民問わず若者の組合離れが進んでいるという。組合幹部といえは強面の論客という時代ではないのかもしれない。
 話が戯れ言に近くなってきて私が少し辟易としてきた頃合いに、助手席の彼はふっと道路の先を見やって運転員に「ほらあれ。止めて」と声を掛ける。道路から民間施設に乗り入れる所の歩道面に窪みを見つけたのだ。私と延々と会話を続けていたにもかかわらず、さすがの観察力に感心する。
 施設の駐車場に停車させると「ほらあんたも一緒に降りて」と助手席の彼は私に声を掛ける。「実際に歩道に開いた穴を埋める作業を手伝ってみなよ」というのだ。
 穴にたまった草やゴミなどを取り除き、補填剤を手際よく袋から注ぎ込み、ダンパーのような道具で押し固める。一連の作業を見よう見まねで教えてもらいながら私も手伝ってみた。舗装など抜本的な補修が施されるまでの間の事故防止のための応急処置ということだ。車を運転していると日常的に何気なく時折見かける"継ぎ当て"のような処置だ。道路パトロールはただ巡視して危険個所ほ報告するのみではなく、こうした小さな補修を担っている。
 歩道面であり車の出入りも少ない場所だったので私にも手伝わせてくれたのであるが、その後の行く先々では車通りの多い幹線道路の真ん中に開いた穴の処置などもあり、こうした場面では運転員と助手席の彼が降車して安全確保に気を配りながら対応した。一人が作業に専念してもう一人が通行車両の誘導など安全対策に当たるという、いつもどおりの二人きりの作業がよく分かる。田舎道では相当なスピードで飛ばして横を走り抜ける車もある。危険な仕事であることが肌で感じられた。
 ある箇所では路肩の反射版付きのポールが車にぶつけられて折れているのを発見。デリネーターと呼ばれるその安全器材を交換する作業も手伝わせてもらった。こんな経験はこうした機会でもないと決してできるものではない。今後プライベートで道路を走る時も、道路の陥没やその補修状況、デリネーターなどと、その維持保全のためのご苦労などを意識することになりそうだ。
 せっかくの機会だから、猫や狸が轢かれた死体の処理も体験させてやりたかったんだが…、と助手席の彼は、いつもはしばしばあるそれが本日は無かったことが残念そうだ。「真夏のあの悪臭と酷い惨状の処理を体験すると道路パトロールの大変さが一番わかるのだけれどなあ」。寡黙な運転手も頷いている。なんでも経験しておきたい私としても少し残念だった。
 3時間近くに及ぶパトロールの一区切りを終えて事務所に戻る。道中では実務体験のほか雑談も多かったが、終始話しかけてくる助手席の職員から現業業務の苦労なども随分と詳しく教えてもらえた。現場の職員からすれば、普段県庁舎に座している職員がほんの僅かを切り取ったかのような体験をしただけで何が分かるかとお叱りを受けるかもしれないが、やはり現場で見聞きすること体感することをするしないでは大きな違いがある。私は同乗により業務をお邪魔したお詫びと視察体験にお付き合い頂いたお礼を篤く述べて、出先機関を後にした。

(「土木部監理課8「組合交渉に向けて真夏の道路パト体験(その3)」編」終わり。「土木部監理課9「組合交渉に向けて真夏の道路パト体験(その4)」編」に続きます。)
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