新潟久紀ブログ版retrospective

土木部監理課7「組合交渉に向けて真夏の道路パト体験(その2)」編

●組合交渉に向けて真夏の道路パト体験(その2)

 先ずは、県直営の道路パトロールへの試乗の調整だ。15箇所もある全ての出先事務所で試乗できるほどの日程的余裕もないので、国から維持管理の委託を受けるいわゆる3桁ナンバー国道も含め、山から海岸など多様な道路環境を所管する出先機関を絞り込んでお願いしてみたいと考えた。
 私の部下の主任に、その出先機関名を伝えて日程の調整をお願いすると、「ええー」という反応だ。「よりによって現業組合の幹部が道路パトロールを仕切っている事務所で試乗するのですか」というのだ。私は初めての土木部勤めであり、過去の組合交渉もやり取りをまだ概括的に読んだ程度だったので、個々の組合幹部の情報にはまだ精通していなかった。どこの出先機関においても道路パトロールは現業組合幹部が携わるケースが多いのだが、私が名指ししたその機関は、組合交渉で年季を重ねた幹部と舌鋒鋭い比較的若手の幹部がペアになっている、とりわけ濃い箇所だと教えられた。
 しかし、私はむしろその方が面白いと思えた。秋に控える組合交渉でぶつけてこられるような指摘や主張を、道路パトロールを視察する中で予め聞き出せるかもしれない。交渉本番に向けて傾向と対策を考える良い機会にするためにも、むしろ面倒な組合幹部と接するほうが手っ取り早いと考えたのだ。
 私の部下はあきれながらも日程調整を請け負ってくれた。7月の暑さの厳しさが見込まれる平日の昼前後の数時間、道路パトロールに同乗させて頂くことにした。部下からは、くれぐれも当該幹部からへたな言質を取られないでくださいよとの念押しだ。この部下は在職が長く、これまでに相当ギリギリした交渉場面を見てきているので極めて慎重姿勢なのだ。異動の多い県庁においては経験を重ねた同僚から伝わる感覚を軽視してはいけない。私も引き締めるべきは引き締めて視察に臨まねばなるまいと肝に銘じた。
 道路パトロール同乗視察の当日は、朝からジリジリと日差しが強く道路からかげろうが立つかのようであった。黄色と白色のツートンカラーに出先機関の名称が黒字で刻印されたジープ型のRV車に同乗させてもらう。運転手と助手席に現業職員が乗り、私は後部座席なのだが、道路上で作業に当たる際の安全機材などが、後部座席からトランクまで所狭しと積まれているので、やっとこ座らせてもらうといった状態だ。
 「本庁の参事さんがわざわざ同乗というのに狭苦しくて申し訳ないね」と助手席の組合幹部は笑う。業務に立ち入って迷惑を掛けているのだから私に気遣いしないで欲しいということと、いつもどおりに業務をして見せてくださいとお願いした。出先機関の車庫から出て少ししたところの倉庫で一旦止まり、道路の補修材やデリネーターと呼ばれる道路脇に並べ立てる反射版付きのポールなどをトランクに補充すると、いよいよ本日の巡回コースへと乗り込み。道路パトロールの開始となった。

(「土木部監理課7「組合交渉に向けて真夏の道路パト体験(その2)」編」終わり。「土木部監理課8「組合交渉に向けて真夏の道路パト体験(その3)」編」に続きます。)
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