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ブログ版ネクストテクストです。

スーパー・ポジティヴを演じる梅田望夫氏

2007-01-03 12:59:40 | 濫読、併読、斜め読み
『ウェブ進化論』以来、梅田望夫氏は大変な話題の人になっているようだ。同書の出版と期を一にして、"Web2.0"というコトバも新聞紙上で見ないことがないくらいである。などと言いつつ私はもう何年も新聞を購読していないのだが。まあこれは言葉の綾である。

『ウェブ進化論』はとてもよく整理された本で、いまのインターネット上でのサービスの動向を俯瞰するのにとても便利だと思った。でもこれだけ世間で話題になるためには「よく整理された本」というだけでは足りないはず。なにかプラスアルファが必要なんじゃないのか、と思うのだが、私にはよくわからなかった。いやイヤミで書いているんではなく、本当にわからなかったのだ。これには以下のいずれかの原因が考えられる。

(1) 私の読みが浅く、梅田氏の言わんとするところを理解できなかった
(2) 梅田氏の言わんとするところを私がすでに完全に理解していたため感動がなかった

そりゃ(2)だ。うんうん。(2)に違いあるめえ。いや。(2)であってくれ。

と自分に言い聞かせてるときに、作家・平野啓一郎氏との対談集『ウェブ人間論』を会社の上司からお借りして読んだ。そしてようやくわかったのである。私が『ウェブ進化論』にグッとこなかった理由がだ。

何がグッとこないのか。どうやら私は、梅田氏の、Googleをはじめとするネットをベースにした企業やビジネス、さらにインターネットが生み出す新たな価値やインターネットの可能性、などなどなどに対する掛け値なしのポジティヴさにちょっとヒいてるようなのだ。

そりゃたしかにインターネットがもっと盛り上がって、そこでのビジネスがどんどん拡大・発展していってくれるとうれしい。というより今私が関わっている仕事などは、ネットがなければ全くもって成立しなくなってしまうから、拡大・発展してくれないと食いっぱぐれてしまう。一家が路頭に迷ってしまって大変困る。

けれども、梅田氏のほとんど手放しのウェブ讃歌を聴いていると「そうなのかなあ」と懐疑的な気持ちがムラムラ湧いてくる。そういう意味で私にはどちらかといえば平野氏の発言のほうがしっくり来るのだ。

しかし同時に、この2冊からは梅田氏の焦りや危機感も強烈に伝わってくる。氏の物凄いポジティヴさは、そうした焦りや危機感の裏返しなのではないかとも思うのだ。それは日本の現状への苛立ちかもしれない。シリコン・ヴァレーと東京を往復する日々の氏だからこそ、「このままだともう日本はヤバいんじゃないのか。日本からGoogleのようなサービスを生み出すためには、あのアメリカ人のピュアなポジティヴさが必要なんじゃないのか」という危機感もあるのかもしれない。

そうか。梅田望夫氏は、確信犯的な煽動者なのだな。


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