少女たちに魅せられて

主にプリキュアとラブライブの感想や考察を挙げていきます

ヒーリングっどプリキュア考察〜自然という正義(最終話時点)

2021-02-25 09:12:35 | ヒーリングっどプリキュア考察

ヒーリングっどプリキュア全45話が完結したが

この作品では敵との和解は成立しなかった

今回はその点も踏まえながら

プリキュアの残したメッセージを考察したい

 

 

まず44話におけるあすみさんの選択を振り返る

沢泉さんは夢を欲張ること

平光さんは失敗を恐れないこと

花寺さんは心も身体も自分のものであること

そんな彼女たちの気づきから

あすみさんは学び、こう言った

 

「皆さんのことも人間界そのものも守りたい

 欲張りたいのです、やってみれば

 何かが変わるかもしれないでしょう?

 失敗を恐れすぎてはいけません

 皆さんの過ごして重ねてきた経験は

 今の私を作っているのです

 どんなに反対されても私は実行します

 私の心も身体も私のものですから」(44話)

 

こうしてあすみさんはキングビョーゲン

浄化のための最も危険な作戦を遂行したのだ

 

 

実はヒープリにおいては妖精側のほうが

いわゆるプリキュアの型にはまっている

少し子どもなところもあるが

正義感は人一倍強いラビリン

引っ込み思案だが本当は勇気を持つペギタン

のりは軽くも頭のいいニャトラン

そして中盤からプリキュアのパートナーに

覚醒したラテといった具合に

 

 

一方でプリキュアの側は

そのイメージとはやや異なる

花寺さんは確かに人一倍の優しさはあるが

皆の成長から学び、強くなったのは

主人公ではなく追加戦士なのだ

しかもその戦士は人間ではなく

ヒーリングガーデンの出身である

 

 

なぜヒープリは従来のプリキュアの型に

はまらないのだろうか

そのヒントは最終話にあった

あすみさんに人間を嫌がる理由を問われた

サルローさんはこう答えた

 

「わからんか?

 人間などもはやビョーゲンズと変わらんからだ

        (中略)

 俺に言わせりゃヒーリングアニマルは

 人間だって浄化すべきなんだ、

 この星のためにな」(45話)

 

 

前回の感想の最後にビョーゲンズと人間とは

同じなのではないかという仮説を上げた

だがこのサルローの言葉はある意味で

それよりも厳しいものである

なぜなら地球を救ったプリキュアに対してさえ

特権的な地位を認めず人間として浄化

すなわち消滅すべきだと主張するのだから

しかもプリキュアに好意的な

テアティーヌさんでさえ

 

「私もいざというときが来たら

 人間を浄化する覚悟はあります」(45話)

 

と述べる

地球を傷つけるものは誰であろうと敵

それはビョーゲンズでも人間でも同じなのだ

となると妖精たちの「プリキュアらしさ」

についても理解できる

すなわちこのストーリーにおける主人公は

人間ではなく地球を守る使命を持った

ヒーリングアニマルなのである

花寺さんが拒んだビョーゲンズを

みんなのため自分の身に引き受ける勇気を

持ったのがヒーリングガーデン出身の

あすみさんであったのもそのためである

 

 

前作のスタプリには宇宙を創造した

プリンセスが登場したが

彼女たちは無限の力も絶対的正義も

持っていなかった

だからプリキュアがその力を乗り越えられた

(これについてもいずれ触れる予定です)

一方ヒープリには絶対的正義が存在する

それは自然である

 

「生きることは戦うこと」

 

最終決戦における花寺さんと

キングビョーゲンの回答は同じであった

それは自然という絶対的正義の前では

生命は無力だからである

自然に依存して生きている以上

それを乗り越えることはできない

彼らは決して勝者にはなれず

自然の機嫌をうかがいながら

生きるため戦い続けるしかないのである

 

 

花寺さんは自分の身体であることを理由に

ダルイゼンの受け入れを拒んだが

地球のためにシンドイーネを取り込んだ

これはつまり

 

敵の生存<自分の身体<地球の平和

 

ということを意味する

自然の支配の中で生き続けること

それがわれわれ人類を含む全生命に残された

唯一の選択なのである

ヒープリの回答はそんな生命の無力さと

それでも生きたいという決意

まさに「生きてくって感じ」なのだ


ヒーリングっとプリキュア考察〜花寺のどかの選択(43話時点)

2021-02-05 20:32:02 | ヒーリングっどプリキュア考察

「私はやっぱり、あなたを助ける気にはなれない」

花寺さんの体を利用して生きのびようとする
ダルイゼンに対して彼女はきっぱり言い放った
今回はそんな彼女の選択の意義について考えたい


彼女がダルイゼンを助けなかった理由としては
自分が苦しみたくないということ
そしてそもそも助ける義理がないこと
の二つが挙げられる


まず自分が苦しみたくないという点である
彼女は誰よりも生命を尊ぶ少女であった
彼女の口癖はめちょっくでもキラヤバでもなく
「生きてるって感じ」なのである
その背景に苦しかった闘病生活の経験が
あることは容易に想像できよう
生と死のはざまを乗り越えた彼女が
再びそこに戻ることを拒絶するのは
当然のことである


だがそれはダルイゼンにとっても同じ
彼の生命にとって花寺さんは
最後の希望だったのである
したがって彼女の拒絶は彼に
生の放棄を強いることでもある


では助ける義理がないことについてはどうか
冒頭にも書いたようにそもそも花寺さんは
ダルイゼンを助ける気にもならなかったのだ
彼女は次のように主張する

「あなたのせいで私がどれだけ苦しかったか
 あなたは全然わかってない
 わかってたら地球を、たくさんの命を
 むしばんで笑ったりしない
 都合のいい時だけ、私を利用しないで
 私はあなたの道具じゃない
 私の体も心も全部私のものなんだから」

つまりはダルイゼンの過去の行いや
現在の態度を考えても
自分を犠牲にしてまで助ける理由は
少しも見いだせないということである
花寺さんは闘病生活の頃から
ずっとダルイゼンに苦しめられており
それについて彼は反省の色も見せていない
のだからこれも当然である


とはいえダルイゼンが地球をむしばんだのは
自らが住みやすい世界を作るためであった
花寺さんたちにとって住みやすい世界は
ダルイゼンにとっては住みにくい世界なのだから
この対立はある意味不可避である
つまりダルイゼンののどかに対する行為は
彼がビョーゲンズとして生まれてしまったという
運命的なところが大きいことも忘れてはなるまい


平光さんは39話でビョーゲンズと共存する
未来を絵に描いていた
つまりビョーゲンズと共に生きる道は
初めから排除されていたわけではないのだ
それにダルイゼンのピンチは
キングビョーゲンによるものなのだから
彼とともにキングを倒すという選択も
あったはずである
にも関わらず花寺さんはダルイゼンを
救うことはしなかった
それどころか彼の立場から
その気持ちを想像することさえしなかった
これは人と病気とは決して共存できない
という彼女なりの答えなのかもしれない

「ダルイゼンを見捨てながら
 地球のみんなとすべてを守るというか
 ずいぶんな思い上がりだ」

キングビョーゲンの言葉に対し
花寺さんはこう答えた

「ダルイゼンを追い詰めたのは誰?
 あなたに言われたくない」

彼女はここで地球のみんなから
ダルイゼンを除外したことを否定しない
花寺さんの戦いは生きるため
さらには「生きてるって」感じる他の生命を
守るための戦いなのだ
もちろん敵と和解するに越したことはない
だがそれよりも命を尊ぶことこそが
彼女の最優先事項なのである
逆に言えば生きるということは
それほどまでに厳しいものなのだ


彼女はキングビョーゲンをも浄化するのか
それとも共存の道を探るのか
残りの回に期待である

 

補足
プリキュアとビョーゲンズの関係は
自然と人間の関係としても考えられる
つまりビョーゲンズにむしばまれた自然を
人類の産業発展によって侵された自然に
置き換えるのである
するとダルイゼンの姿は我々の姿と重なる
自然を傷つけた人間に対する自然の回答は
花寺さんと同じように厳しいものかもしれない
つまり自分たちの仲間から人類を排除するのだ
ダルイゼンのように人類が自然を顧みず
行動を起こすのであれば
自然の側からこのような答えが
下されることにもなりかねないのである