失われたメディア-8cmCDシングルの世界-

50円とか100円で叩き売られている8cm CD singleを見るとついつい買ってあげたくなることはないか。私はある。

「THE GREATEST SONG OF ALL」 P-FREAKS HOUR 1990年

2010-03-31 | 湾岸系
音楽とコントで構成されたアルバム『ヤマアラシとその他の変種』からのシングルカット。Produce: ケラリーノ・サンドロヴィッチ、Sound & Effects Produce: 鈴木慶一。

①THE GREATEST SONG OF ALL(Chigau Mix) 
松尾貴史 featuring The Beatniks (高橋幸宏・鈴木慶一) featuring ちわきまゆみ
作詞:久住昌之、作曲・編曲:高橋幸宏、鈴木慶一
1990年のビートニクスは、ユニットとしてのアルバムは出していないものの、幸宏ソロの『Broadcast From Heaven』や桐島かれん『かれん(KAREN)』などで、わりと活発な創作活動を展開していた。そんな勢いでケラ企画のアルバムに一曲提供。リード・ヴォーカルというより語り、というより物まね芸担当はキッチュこと松尾貴史。高揚感のあるソカ(ソウル+カリプソ)のリズムをバックに、当時の「朝まで生テレビ」の論客たちを中心にした物まねが繰り広げられる。大島渚と西部邁は分かる。あとは栗本慎一郎、岡本太郎らしき声もする。司会進行(「何が言いたいんだ」などと突っこむ)は普通に考えれば田原総一朗と思うけど、あまり似てない。ドラマチックなサビはどうしたって幸宏の声が前に出てくるが、慶一さんとちわきまゆみの声も聴こえる。間奏のへろへろリコーダーソロは、アルバムに登場する「たもつ」(ケラ)が吹いているのかな。総合的に胡散臭いんだけど妙に感動的。この感じ、YEN卒業記念アルバムの讃美歌「又会う日まで」に共通するものがある。
アルバムミックスと「違う」ミックスって意味なんだろうけど、聴き比べても違いはよく分からない。サイズも一緒。2007年のブリッジからの再発盤(右下)に、このシングルミックスもボーナストラックとして収録された。

②無邪気なやつら Z-BEAM
阪田:阪田マサノブ
前田:前田真之輔
Written by 前田真之輔
Performed by 鈴木慶一
挿入曲:「荒城の月」作詞:土井晩翠、作曲:滝廉太郎
無邪気なふたりが危険な海を泳ぐコント。あんまりおもしろくない…「荒城の月」のメロディが、またもやリコーダーの合奏で。このトラックだけは再発盤(右下)にも収録されなかった。ちなみにオリジナル東芝EMI盤(右上)にはZ-BEAMによる「崩れた二人」というこれも笑えないコントが収録されていてたが、再発盤ではカットされている。

③それから
大人計画
関本:松尾スズキ
高岡:温水洋一
静子:片葉みはる
Words by 松尾スズキ
Music Composed by 鈴木慶一
挿入曲:「Indio Del Tango」作詞:あがた森魚、作曲・編曲:鈴木慶一
大人計画によるコント。前半は漱石の「それから」をベースにした文芸っぽい三角関係を描いているが、結局は不条理もの。これ、8分は長いよ…

定価930円、中古で525円。
ジャケのイラストはアルバムの中でコントも書いている吉田戦車。


アルバムについても触れておこう。コント部門はケラが中心となり、健康、大人計画、ビシバシステム、松尾貴史、斉木しげるが担当している。全体に長い。顔が長いから長井だ。コントを2回以上聴くのは結構苦痛。

音楽部門は「THE GREATEST SONG OF ALL」以外にだいたい4曲。クレジット並べるだけで、私には相当楽しい。

「ヤマアラシ嗜好症」
空手ボンボン(ケラ・大槻ケンヂ)+西村知美+巻上公一
オリジナルヴァージョンのみ[+爆笑問題(太田光・田中裕二 漫才)]
作詞・作曲:ケラ、編曲:鈴木慶一&ケラ、演奏:鈴木慶一
鈴木慶一によるゲームミュージックっぽいシンセのバッキングに乗せ、大槻ケンヂが滔々とヤマアラシについて解説する。お姫さま・西村知美のとぼけた歌声だけでも相当トリップできるのに、続く巻上公一の独特すぎる節回しに世界が歪む。しまいにはケラと慶一さんもコーラスに加わり、異形のお祭りソングが完成するのだ。どうにも80'sアングラなメンバーの中にあって、堂々の輝きを放つ知美姫が素晴らしい!
オリジナル盤では爆笑問題の漫才が終り近くに挿入されるが、再発盤では漫才がまるまるカットされ、3分43秒から2分58秒に短縮されている。漫才はなくて正解。わざわざ再発にあたって別ヴァージョンを製作したのか、もともと漫才レスヴァージョンが存在したのかは不明。爆笑問題はコントトラック「昼のラジオ」もあったが、やっぱり再発盤ではカット。これは権利の問題かな。

「西の果てにある なんにも起こらない村と 東の果てにある なんにも起こらない村の なんにも起こらない 悲しい恋人達のお話」
ケラ+高橋佐代子+知久寿焼
作詞:ケラ、作曲・演奏:鈴木慶一
慶一曲だけど、知久寿焼の声がするとまるっきり「たま」っぽい雰囲気の無国籍音楽。ゼルダのサヨコさんもいい味出してる。とってもナゴムな。

「岡本太郎の眼(マーシャルや強者共が夢の音)」
遠藤賢司(VOCAL&GUITAR)+PANTA(BASS)+ブラボー小松(GUITAR)+福富幸宏(DRUMS PROGRAMMING)
作詞・作曲:遠藤賢司、編曲:遠藤賢司・ブラボー小松・鈴木慶一
そしてエンケン。打ち込みのビートの上で暴れまわるツインギター!ベースはパンタ!ライブでお馴染みの「遠からん者は 音にも聞け 近くばよって 目にも見よ…」の口上が入っているのも嬉しい。

「Indio Del Tango」
あがた森魚+桐島かれん(VOCAL)+小松亮太(BANDNEONS)+鈴木慶一(OTHER INSTRUMENTS)
作詞:あがた森魚、作曲・編曲:鈴木慶一
さらにあがた森魚。これは完全に「バンドネオンの豹」シリーズの一曲だな。あがたの艶やかなヴォーカルと、桐島かれんの女王様然とした高圧的な歌唱が溶け合う恍惚のタンゴ。


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