失われたメディア-8cmCDシングルの世界-

50円とか100円で叩き売られている8cm CD singleを見るとついつい買ってあげたくなることはないか。私はある。

「難破船」 加藤登紀子 1984年、中森明菜 1987年

2012-09-13 | 湾岸系
明菜のダークサイドを代表する名曲は、作者加藤登紀子による指名カヴァー。

霊感商法チックなカヴァーの経緯とか、楽曲についての考察とか、当時の明菜が置かれていた状況とか、つまりだいたいすべての事は「まこりんのわがままなご意見」の記事を読んでもらえば分かる。これぞ、お金のとれる文章!いや、もう付け足すことなんて何もない。じゃあ何を書くかって?8㎝のことだよっ!

では、左、加藤登紀子盤から。

「CDミニアルバム・ベスト4」と題された4曲入り8㎝ベストシリーズの一枚で、1989年リリース。今まで紹介した中では欧陽菲菲が同じシリーズ。

①百万本のバラ
作詞:A. Voznesenskij、訳詞:加藤登紀子、作曲:R. Pauris、編曲:川村栄二
元ははラトビアで1981年に作られ、1982年にロシア語版が大ヒット。加藤登紀子は1987年にシングルとしてこの日本語版をリリースし、これまた大ヒット。加藤登紀子の代表曲のひとつとなった。Busta Rhymes featuring Janet Jacksonの「What's It Gonna Be?!」(1999)のジャネットのパートはこの曲からインスパイアされているんじゃないかなあ。久々にビデオみたけど、やっぱり名作!

②愛のくらし
作詞:加藤登紀子、作曲:T. Children, A. Hause、編曲:小野崎孝輔
いきなり遡って1971年のシングル。外国の方々(ドイツ人)による曲を70年代らしくウエットなストリングスをたっぷりのアレンジで。

③難破船
作詞・作曲:加藤登紀子、編曲:白井良明、ストリングス・アレンジ:武川雅寛
でたよ、湾岸モノ。鈴木慶一以外の5人が係わったアルバム『最後のダンスパーティー』(1984)収録曲。本家加藤は、この曲をシングルカットしてない。クジラ(武川雅寛)さんはこのアルバムが縁でツアーメンバーになったのかな?1995年のツアーでのハイジャック事件はライダーズファンには有名。厚めのストリングスのイントロに導かれ、歌いはじめる加藤登紀子の凍てつく声に圧倒される。荘厳でドラマチックなアレンジは、ライダーズ色は薄め。奇を衒わず、曲の力をストレートに押し出すことに成功している。改めて、傑作。ところでアルバム未聴なのだが、もしかしてCD化されてないの?教授関連2作は再発されてるのに…

④歌いつづけて
作詞:J. Barnel、訳詞:加藤登紀子、作曲:M. Jouveaux、編曲:吉田健
アルバム『My Story』(1987)収録。このアルバムには①も入っている。オリジナルはダリダ「Mourir sur scène」、1983年。打ち込みアレンジはほぼオリジナルを踏襲している。

定価1399円、中古で100円。
おトキさん、バラ化。


右、中森明菜の19thシングル。

①難破船
作詞・作曲:加藤登紀子、編曲:若草恵
名作の名カヴァーと言ってしまえば簡単だけど、この鬼気迫る情念は、当時も今もエンターテインメントとして消費するには重すぎる。おトキさんのようにちょっと突き放した感じで歌うほうが曲には合うような気がするが、ここでの明菜のギリギリ感、歌の世界への制御不能のシンクロ率はやはりただ事ではない。エコー深めの声で「つむじ風に身をまかせて あなたを海に沈めたい」なんて歌われたら、もう気分は冥界。

②恋路
作詞:来生えつこ、作曲:林哲司、編曲:萩田光雄
悪くないけど、①の超ド級の迫力の前には分が悪い。

定価1000円、中古で50円。
この8cmは1988年の再発盤。1998年に難破船のライヴ・ヴァージョンを追加したマキシシングルが出ているようだ。





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2 コメント

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Unknown (通りすがり)
2012-10-04 04:12:30
加藤登紀子さん盤の難破船って白井さんのアレンジなんですか
これまた知らなかった、『最後のダンスパーティー』(1984)はライダーズ絡みなんですね。
明菜の難破船ってカバーなんですね、これも知りませんでした。
竹内まりやの駅は実は明菜がオリジナルだってことも最近知ったぐらいで
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Unknown (nakamura8cm)
2012-10-04 22:25:27
そうなんですよ~『最後のダンスパーティー』聴きたいなあ。
おトキさんが明菜に「これ歌ってみ?」と勧めたエピソードは、当時わりと有名だったと思います。

「駅」を活かせなかったのは、明菜プロデュースチームの失敗でしょうねえ。
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