入試に出る!!時事ネタ日記

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アルゼンチン完勝!!天才メッシデビュー。

2006-06-17 19:40:14 | 世界史

世間はワールドカップ一色ですね。我らが日本代表は明日、いよいよクロアチアと戦います。今からテンション上がってきました(笑)。

さて、日本以外の試合も見ているのですが、昨日は衝撃的でした。ユーゴ時代からセルビアを応援していた私とて、アルゼンチンのあまりの強さに目を奪われました。

攻撃陣は、サビオラ、メッシ、アイマール、リケルメ、テベスなど、ことごとくスター選手。守備もアジャラやソリンを中心に手堅い。中盤には「心臓」カンビアッソも好調で、もしかしたらブラジルを凌ぐかもしれません。

世界史を教えていると、ついヨーロッパや中国が中心になってしまいがちですが、今日はアルゼンチン完勝にかこつけてアルゼンチンの歴史もちょっと紹介したいと思います。

サン=マルティンを中心に、スペイン人の南米支配から独立したアルゼンチンは、しばらくは政情不安に悩まされます。が、1862年のバルトロメ=ミトレ大統領のもと大きな成長を遂げます。その移民や外資の積極導入や教育重視の姿勢で経済が飛躍的に伸びていきます。特に牧羊業は19世紀末に冷凍船が発明、実用化されるにおよび、ヨーロッパやアメリカなどへの輸出が好調で、第一次世界大戦期は特需に沸き、世界有数の経済大国となりました。

しかし、このような中で、所得の再分配は公正に行なわれず、そのため労働者の不満が爆発し、それを後ろ盾としたファン=ペロンがクーデタを敢行、軍事政権を樹立しました。ペロン大統領は、夫人のエヴァ=ペロン(「エヴィータ」という愛称でアルゼンチン国内では聖母マリアに準ずる存在として崇める向きもあり、以前マドンナがアントニオ=バンデラス共演の「エヴィータ」でエヴァ役を演じた時にはアルゼンチン国内で強い反発を招きました。)とともに今でも国民に支持者を持つほどの大統領です。

彼は「弱きを助け、強きを挫く」という政策を打ち出します。しかし外資の国有化がアメリカの怒りを買い、また「ばら撒き」福祉政策が財政を圧迫し、結局は経済の行き詰まりから失脚することになります。ポピュリズムの果てに経済が崩壊したわけです。これは経済大国アルゼンチンの転落の始まりとなりました。

その後しばらくの間、軍事政権が国を恐怖政治に陥れ、政府批判をした人々が大量に「行方不明」(その数3万人!!)になり、現在でも、あのピノチェトに匹敵する人権侵害があったと言われています。そのような中、地元で開催されたワールドカップでアルゼンチンは初優勝しましたが、政治的圧力を感じさせる大会となってしまいました(2次リーグでのペルー戦は疑惑の6-0でした)。なお、当時の映像を見ると、ふだんは公の場に姿を見せることのない女性が家族の写真をもってサッカーの応援に行くシーンを目にしますが、あれは国際的なイベントの場で世界に向けて人権侵害を訴えていたのでしょう。

このような中、政府に対する国民の募る反感を逸らす目的で、時の支配者ガルティエリは、イギリスとの外交上の懸案であったフォークランド帰属問題に実力行使、国際紛争となってしまいました。この戦争ではアルゼンチン、イギリスとも最新兵器を用いる壮絶なものとなりましたが、最終的には自力に勝るイギリスがアルゼンチンを駆逐して争いに幕を閉じました。

この紛争の過程で、アルゼンチン国内の富裕層は海外に亡命ないしは、その後1000%のハイパーインフレで没落し、債務超過で2001年には債務不履行となってしまいました。煮え湯を飲まされたアルゼンチン国民はその後、メキシコ・ワールドカップでのマラドーナの「神の手」によって溜飲を下げたそうです。イングランドはさぞかし歯がゆかったはずです。

そでにしても、絶望的な格差や貧困から抜け出す、あるいはそれを一時的にでも忘れるための手段の一つがサッカーというのは皮肉ですね。

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