奈良ホテルから裏口を抜けると、「ならまち格子の家」並みがある。
伝統的な町家が残っている。家々を挟んだ道は狭く、小型車がやっとすり抜けられる道幅だが、昔の伊勢街道である。当時は商店が並び、華やかかりし面影はない。近鉄奈良駅方面から観光客が三々五々行きかう。私は逆コースを辿っていた。
町家は間口が狭く、奥行きが深い。京の町家と同じだ。店の間、中の間、奥の間に次いで中庭があり、さらに其の奥に離れの間がある。二階へは箱階段をトトと~んと上る。黒光りの床・柱・調度品。朝8時半過ぎに訪れたため、女の子が掃除をしている最中だった。「見せてもらえますか?」申し訳なさそうに話しかけると、ニコッと「いいですよ。どうぞ、観ていってください。」
そこは、奈良市の展示館になっている。東京だったら、「今掃除中ですから、待っててください。」だろうが、そういう返事ではなかったので、うれしくなった。
アーケード街にはない徳島の品や濃厚な水あめや変わった、なつかしい品目をちょこっと売っている店では、よーしゃべりはるおばちゃんの薀蓄をしばらく聞かされる羽目に。でも、これがいいのだ。また、訪ねたくなる。
蚊帳屋も一軒ある。麻布なので、布巾として手ごろな値段だ。白髪の品のよさそうなおばちゃんが一人店番をしていた。「懐かしいですね、蚊帳。どんな人が買っていくんですか?」「今は、若いお嬢さんに人気で、ベッドに上からつるして使ってるんですよ。」「へえー」
買い物してレジをみると、なんとDELLのパソコンを慣れた手つきで使っていた。その店と蚊帳とパソコンとおばちゃんのアンバランスのバランスがいい。
ならまち格子の家に興味のある方、どうぞ。http://www46.tok2.com/home/arc/nara/nara_21.htm