日本シリーズを「楽しむ」ロッテと対照的な中日
■「開き直った」千葉ロッテナイン
人間は開き直ったときほど強い、とよく言う。11月4日の第5戦を10対4で快勝し、5年ぶりの日本一に王手をかけた千葉ロッテは、それを体現している。
例えば、第3戦の4回、2死満塁から新人の清田育宏はノーストライク2ボールから、中日の先発・山井大介の直球をたたいた。この回、山井がすでに2つの四球を与えていたことを考えると、普通なら1球見てもよかった場面だ。しかし、清田は心に一片の迷いもないかのように、高めのボールにも見える球を豪快に振り抜いた。結果はセンターオーバーの勝ち越し3点三塁打。一気にチームへ流れを引き寄せることに成功した。
第5戦では、サブローが4回に2ランを放ち、大きな追加点を挙げた。この時は逆に2ストライクノーボールと追い込まれていたが、「安打の確率が高くなるように、投手の足もとを狙いセンター方向へ打つ意識」でバットを振り抜くと、打球は左翼席へと吸い込まれた。冷静の中にも思い切りよく、といった感じの打撃だった。
この2人の打席、清田はノーストライク2ボール、サブローは2ストライクノーボールとカウントは対照的だったのだが、共通して言えることは「開き直って」バットを振り抜いたということではないか。
2人だけではない。投手も含めた今の千葉ロッテナインは実に思い切りよくプレーしているように見える。野手は全体的にバットがよく振れており、それが結果にもつながっている。清田のここまでのシリーズ打率3割6分8厘・6打点、井口資仁が4割7分8厘・4打点、今江敏晃が4割7分1厘・5打点と、“シリーズ男”と呼べるような選手が何人もいる。また、序盤不調だったサブローや金泰均にも当たりが出てきた。西岡剛や里崎智也が調子を崩しているものの、前後の選手の調子が良いだけに、打線が途切れにくくなっているのである。3試合連続で2ケタ得点を挙げて阪神相手に4連勝で日本一に輝いた5年前のチームにますます似てきた感がある。
■頼りの投手陣も試合をつくれなかった中日
一方の中日は、森野将彦と和田一浩がともにここまで打率4割7分4厘と好調ではあるが、他の野手のバットは冷えたまま。3、4番打者が打っているだけでは、打線は機能しない。投打ともに層の厚さでは千葉ロッテを凌駕(りょうが)しているはずだが、「調子のいい者を使う」と断言していた落合博満監督の選手起用も当たっているとは言いにくい。日本シリーズ開幕戦でスタメン起用した藤井淳志は3三振、井端弘和は初戦から4試合連続で先発出場したもののすべて無安打、第2戦からスタメン入りした野本圭も仕事らしい仕事は何もしていない。第5戦では井端を下げ、堂上直倫をセカンドで起用するも、初回にいきなり失策を犯し、逆転されるきっかけを与えてしまった。
頼りにしていた投手陣も、先発の吉見一起、山井、中田賢一が試合をつくることすらできなかった。第4戦で見せたように、浅尾拓也や高橋聡文ら救援陣は相変わらず良い(岩瀬仁紀の調子がいまひとつ分からないが)。しかし、好調な千葉ロッテ打線を相手に、リード、あるいは最低でも接戦の状態で試合の後半につなげられるか。もう一つも落とせない中日としては、ここからは多少のビハインドでも浅尾らを投入してくるだろうが、今の千葉ロッテ打線を止めるのは容易でないことは、言うまでもない。無論、中日は残る2試合での先発が予想されるチェンと吉見が抑えないと、勝利は遠のくだろう。
■対照的な両チーム どちらが正しいのか?
それにしても、クライマックスシリーズから見ている人にとっては「今さら」ではあるが、この大舞台での千葉ロッテの伸び伸びとしたプレーぶりと落ち着きには驚かされる。第5戦後、05年の日本シリーズに続いて再度MVPを狙えそうな今江は、日本シリーズでも力を発揮できるのはなぜかという問いに、「こうやって注目されることが大好きだから。楽しいのもあるし」とにこやかに答えた。清田も笑顔が絶えないし、他の面々も一様にそうである。「俺の中で野球を楽しむというのはない」と言う落合監督の中日に、そうした空気はない。
現役時代同僚だった両監督のつくり上げたチームは、至極対照的である。どちらが正しいか? 結果が問われるプロの世界では最後に勝った方が正解ということになるのだが、今の両チームを見ていると、たとえ舞台が得意のナゴヤドームであると言っても、中日が雰囲気をさらに良くした千葉ロッテから連勝するというのは、容易ではないように感じられる。
日本シリーズ ロッテ5年ぶり4回目Vに王手 6日第6戦
中日とロッテの日本シリーズは6日、中日の本拠地・ナゴヤドームに戻って第6戦(午後6時10分開始)を行う。ここまでの対戦成績はロッテの3勝2敗で、5年ぶり4回目(前身の毎日時代の1回を含む)のシリーズ制覇に王手をかけている。移動日の5日はナゴヤドームで午後2時ごろから中日、ロッテの順でそれぞれ約2時間程度、軽めの調整を行った。
第6戦の先発は中日がチェン、ロッテは成瀬が有力だ。
◇見どころ 両左腕エース、先発が濃厚に
レギュラーシーズン3位のロッテがシリーズを制するか、中日が地の利を生かして踏みとどまるか。中日・チェン、ロッテ・成瀬の両左腕エースの投げ合いが予想され、勝負のカギは打線になりそう。ロッテは第5戦で先発全員安打。サブローや金泰均も複数安打で、全員に本来の振りが戻った。中日は森野、和田がともに19打数9安打。それだけに得点の足場になる荒木、大島といった、上位の出塁が勝負の流れを左右する。
◇ロッテ決めるか 成瀬「役割を果たす」
打線好調のロッテ。5戦でチーム打率は3割超と下位までムラがない。5日のフリー打撃で各選手が鋭い打球を外野席に落とした。
日本一になった05年MVPの今江は、今回も4割7分1厘と短期決戦で力を発揮。清田、井口が振れており、5番今江で走者を還すのが勝ちパターンだ。
今江をはじめ各選手が迷いなくファーストストライクから振る。今江が打ち損じてファウルし、苦笑いしていると、捕手谷繁に「お前、楽しそうやな」とつぶやかれたそうだ。
今江は言う。「僕はタイミングが合えば、どんどん振る。データは全く通用しないでしょう。谷繁さんは経験豊富で、データもたくさん頭に入っているでしょうが、何か困っていた感じを受けた」。来た球を打つシンプルさが迷いも力みもなくし、相手を脅かす。
第5戦で金泰均、サブローに当たりが戻ったのも好材料。この打線が背後に構えれば、先発濃厚な成瀬も気楽に投げられる。
◇中日並ぶか チェン「速球で押す」
中日が負けられない一戦のマウンドは、チェンに任されそうだ。第2戦で先発し6回1失点で勝利投手になった。中日の他の先発はロッテ打線に捕まっている中、ただ一人試合を作って大黒柱の役割を果たした。
5日のナゴヤドームでの練習でキャッチボールやランニングで汗を流したが、その後の行動が他選手と少し違った。みんなが次々と引き揚げる中、谷繁と2人、1時間を超えて球場から出て来ず。「体のケアをしていた。いつ登板してもいいように備えた」とチェン。大事な局面で調整に余念がなかった。
初挑戦の日本シリーズで2回目の登板。「負けられないと考えるとおかしくなる。いい投球だけを考える」。前回は抑えられたが、ロッテ打線は持ち前の連打がさえている。「向こうも自分のことを知った」と警戒を強めながらも「自分を信じて投げるだけ」。対策などは明かさず「速球で押していく」と意気込みだけを語った。
“打ち出の小槌”阿部バット、清田の新人MVPへ“爆振”
日本シリーズは4日の第5戦(千葉マリン)でロッテが大勝。3勝2敗とし日本一へ王手をかけた。第6戦は6日にナゴヤドームへ舞台を移して行われる。現在、日本シリーズ史上4人目の「新人MVP」へ向かって驀進しているのがロッテのドラフト4位、清田育宏外野手(24)。この日も5回に中前2点適時打を放って今シリーズ通算打点を6とし、新人記録に並んだ。まさかの大活躍の裏には、昨年の日本シリーズでMVPに輝いた巨人・阿部慎之助捕手(31)の意外な“アシスト”もある。
日本シリーズの大舞台で快打を連発する清田の白木のバットには、「慎之助」の3文字が刻印されている。
実は、西武とのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージで涌井、岸ら好投手を相手にバットを折りまくり、愛用していたミズノ社製のコーヒーブラウンのバットが足りなくなった。そこでソフトバンクとのファイナルステージから、同じメーカー、偶然同じタイプの、阿部の白木のバットを本人の承諾のうえで回してもらったのだ。
するとどうだ。ファイナルステージ第5戦の9回に貴重な2ランをヤフードームの左翼席にたたき込む。日本シリーズに入ると、第1戦のバックスクリーン弾、第3戦の満塁走者一掃の決勝3点三塁打を含め19打数7安打、打率・368。6打点は日本シリーズ新人タイ記録である。阿部は昨年の日本シリーズで打率・304、2本塁打と活躍しMVPを射止めているのだから、まさにシリーズMVPを呼ぶ魔法のバットだ。
阿部と清田には交流戦以降に親交がある。清田が所属していたNTT東日本で昨年までヘッドコーチを務めていた関口勝己さん(45)が、NTT東日本の前身である電電東京OBの阿部の父、東司さん(55)と旧知の仲。関口さんに促され、清田は阿部のもとへ挨拶に出向いた。
6月1日に千葉マリンで行われたロッテvs巨人。ロッテが大量9点をリードして迎えた5回、それまでヒットが出ていなかった清田が打席に立つと、阿部がマスク越しに「おい、きょうは関口さんも見に来ていることだし、打たせてやるからよ」とささやいたという。それ以上はどんな会話がかわされ、どんな配球だったか定かでないが、結局清田は力み過ぎたのか左飛に倒れた。試合中のアシストは実らなかったが、ポストシーズンで清田は阿部から思わぬ恩恵を受けたというワケだ。
社会人を代表する長距離砲としてプロ入りした清田だが、左脇腹肉離れの負傷もあり開幕2軍。それでも終盤に活躍し、公式戦64試合出場で打率・290をマーク。2番に定着している。東洋大3年のときに投手から野手に転向し、社会人でももっぱら主砲だったため「アマチュア時代にはやったことがなかった」という送りバントも、「われながらだいぶうまくなったと思います」。
「それもこれも、金森打撃コーチのおかげ。朝から晩まで指導していただいています」という。
また、新人でシリーズ6打点をマークした選手は過去に3人。1962年の東映・岩下光一、81年の巨人・原辰徳(現巨人監督)。そして残る1人、82年の中日・上川誠二(50)は、現在ロッテの1軍内野守備走塁コーチを務め、清田と一緒に戦っている。
上川コーチは「僕が新人記録を持っていたなんて、最近の新聞で初めて知りましたよ。清田の活躍のおかげです」と感謝。そのうえで「当時の僕は、新人ならではの“こわいものなし”。第3戦で逆転3ランを打ってから調子に乗りました。結局西武に2勝4敗で敗れましたが、僕は敢闘賞をいただき、賞品としてフィリピン・マニラへの往復航空券10人分をもらい、親孝行ができたうえに親戚にもプレゼントできてうれしかったことを覚えています。清田もいい度胸をしている。あいつも“こわいものなし”でしょう。今回はウチが日本一になれば、敢闘賞どころかMVPも狙えますよね…」と笑った。
あと1打点以上を加えれば、その上川コーチらを超えて単独新記録。清田も「その1打点が、勝利につながる1打点になるのなら、ぜひ」と色気を見せる。MVPの声には、「まず勝つこと。あとはオマケということで」と面はゆそうだった。
【それ行け!ヤスダ】球運は勢いのロッテにあり
日本シリーズ第5戦はロッテが圧勝して王手をかけた。第6戦からは中日が・754と考えられないような勝率を残している本拠地のナゴヤドームに戻るから予想は難しいけど、野球は運が左右するスポーツ。ここまでの5試合を見ると“球運”はロッテにあるような気がするな。
ロッテは第1戦で勝った成瀬。第3戦に97球で完投した渡辺俊介の2人で、6、7戦のどちらかを勝てばいいんだから有利なのは間違いない。
ただ渡辺俊介は風の全くないナゴヤドームでは、風の強い千葉マリンのようにはいかないだろうな。おれも変化球が得意だったから、アゲンストの風が吹くと、すごく投げやすかった。飛行機がアゲンストの風で離陸していく。あれと同じ感じになるから、ボールがよく動くんだよ。
中日の第6戦は、第1戦で3回3失点とひどすぎた吉見ではなく、第2戦で6回1失点と安定しているチェンが、中5日で出てくるだろう。第7戦は第4戦で2回2/3を抑えたネルソンを先発させて、早い回から高橋、浅尾、岩瀬でつなぐ総力戦に持ち込むしか勝機はないが、どちらにしても先発がカギを握っている。
打線はロッテの方が、どこからでも連打が出てつながっている。第5戦は中田賢一のスライダーを狙い撃ちしていたが全部甘い球だったとはいえしっかり捕らえていた。
中日は3、4番(森野、和田)に走者を置いて回さないと点が入らないんだから。5番のブランコは第5戦でタイムリー二塁打と2ランを打ったけど、「当たったらラッキー」だから、中日は厳しいな。
個人的には3位のチームが日本一になるのはどうかと思う。やはり優勝チームに勝ってほしいけれど、これはルールなんだからしようがない。勢いのロッテと経験の中日の戦いは、最後は勢いが上回るとみる。 (夕刊フジ評論家・安田猛)
ローカル色強い中日vsロッテ 日本シリーズ中継は視聴率惨敗
第1、第2、第5戦が全国地上波中継されない異例の日本シリーズとなっているが、これでは来季以降もテレビ局が日本シリーズに手を出しづらくなるかもしれない。
辛うじて第3戦はテレビ朝日が、第4戦がテレビ東京が全国地上波で完全生中継したが、関東地区では、ロッテが大差をつけて一方的に勝った第3戦が6・8%、延長11回で試合時間が4時41分(試合終了は午後10時57分)に及んだ第4戦は9・7%の惨敗に終わったことがビデオリサーチの調べでわかった。昨年、一昨年と比べてみると、中日vsロッテというローカル色の濃い対戦カードが全国レベルで注目されていないことが浮き彫りになる。
6日の第6戦、第7戦はフジテレビが全国地上波で中継する予定。ライバルのTBS関係者は「正直言って、日本シリーズは第7戦までもつれ込んでほしいのが本音です」と明かす。TBSは両日のゴールデンタイムには開催中「2010世界バレー女子」を中継することが決まっている。「裏番組でフジさんがバラエティーを放送した場合、世界バレーの視聴率がかなり食われてしまうでしょう。でも日本シリーズなら…。バレーボールを見たい人と野球を見たい人というのは重複しないと思いますし」というワケ。裏番組から「日本シリーズの方がくみしやすい」とみられてしまうのだから皮肉。野球全盛期からは隔世の感がある。
一方のフジテレビは地上波中継のゲストとして、第6戦にはソウル五輪で銀メダルを獲得したバッテリーでもある野茂英雄氏(42)&古田敦也氏(45)。第7戦には清原和博氏(43)という豪華な顔ぶれを用意。とりわけ野茂氏のテレビ出演は極めて珍しい。どこまで世間の注目を引くことができるか。
ロッテ社食に150人集結 テレビ観戦にも熱気
東京都新宿区のロッテ本社で4日、佃孝之代表取締役社長以下、社員約150人が社員食堂に集結し、千葉ロッテマリーンズのユニホームに身を包んでテレビ観戦。熱い声援を送った。
1回表に1点を先制されたが、その裏、佃社長の「頑張ろう!」の掛け声に応えるように一挙4点を奪い返すと、応援は一気にヒートアップ。追加点のたびに大歓声に包まれ、社員食堂は大盛り上がり。その後も仕事を終えた社員が続々と詰めかけ、15安打で10点を挙げて大勝した試合に大喜びだった。
■「開き直った」千葉ロッテナイン
人間は開き直ったときほど強い、とよく言う。11月4日の第5戦を10対4で快勝し、5年ぶりの日本一に王手をかけた千葉ロッテは、それを体現している。
例えば、第3戦の4回、2死満塁から新人の清田育宏はノーストライク2ボールから、中日の先発・山井大介の直球をたたいた。この回、山井がすでに2つの四球を与えていたことを考えると、普通なら1球見てもよかった場面だ。しかし、清田は心に一片の迷いもないかのように、高めのボールにも見える球を豪快に振り抜いた。結果はセンターオーバーの勝ち越し3点三塁打。一気にチームへ流れを引き寄せることに成功した。
第5戦では、サブローが4回に2ランを放ち、大きな追加点を挙げた。この時は逆に2ストライクノーボールと追い込まれていたが、「安打の確率が高くなるように、投手の足もとを狙いセンター方向へ打つ意識」でバットを振り抜くと、打球は左翼席へと吸い込まれた。冷静の中にも思い切りよく、といった感じの打撃だった。
この2人の打席、清田はノーストライク2ボール、サブローは2ストライクノーボールとカウントは対照的だったのだが、共通して言えることは「開き直って」バットを振り抜いたということではないか。
2人だけではない。投手も含めた今の千葉ロッテナインは実に思い切りよくプレーしているように見える。野手は全体的にバットがよく振れており、それが結果にもつながっている。清田のここまでのシリーズ打率3割6分8厘・6打点、井口資仁が4割7分8厘・4打点、今江敏晃が4割7分1厘・5打点と、“シリーズ男”と呼べるような選手が何人もいる。また、序盤不調だったサブローや金泰均にも当たりが出てきた。西岡剛や里崎智也が調子を崩しているものの、前後の選手の調子が良いだけに、打線が途切れにくくなっているのである。3試合連続で2ケタ得点を挙げて阪神相手に4連勝で日本一に輝いた5年前のチームにますます似てきた感がある。
■頼りの投手陣も試合をつくれなかった中日
一方の中日は、森野将彦と和田一浩がともにここまで打率4割7分4厘と好調ではあるが、他の野手のバットは冷えたまま。3、4番打者が打っているだけでは、打線は機能しない。投打ともに層の厚さでは千葉ロッテを凌駕(りょうが)しているはずだが、「調子のいい者を使う」と断言していた落合博満監督の選手起用も当たっているとは言いにくい。日本シリーズ開幕戦でスタメン起用した藤井淳志は3三振、井端弘和は初戦から4試合連続で先発出場したもののすべて無安打、第2戦からスタメン入りした野本圭も仕事らしい仕事は何もしていない。第5戦では井端を下げ、堂上直倫をセカンドで起用するも、初回にいきなり失策を犯し、逆転されるきっかけを与えてしまった。
頼りにしていた投手陣も、先発の吉見一起、山井、中田賢一が試合をつくることすらできなかった。第4戦で見せたように、浅尾拓也や高橋聡文ら救援陣は相変わらず良い(岩瀬仁紀の調子がいまひとつ分からないが)。しかし、好調な千葉ロッテ打線を相手に、リード、あるいは最低でも接戦の状態で試合の後半につなげられるか。もう一つも落とせない中日としては、ここからは多少のビハインドでも浅尾らを投入してくるだろうが、今の千葉ロッテ打線を止めるのは容易でないことは、言うまでもない。無論、中日は残る2試合での先発が予想されるチェンと吉見が抑えないと、勝利は遠のくだろう。
■対照的な両チーム どちらが正しいのか?
それにしても、クライマックスシリーズから見ている人にとっては「今さら」ではあるが、この大舞台での千葉ロッテの伸び伸びとしたプレーぶりと落ち着きには驚かされる。第5戦後、05年の日本シリーズに続いて再度MVPを狙えそうな今江は、日本シリーズでも力を発揮できるのはなぜかという問いに、「こうやって注目されることが大好きだから。楽しいのもあるし」とにこやかに答えた。清田も笑顔が絶えないし、他の面々も一様にそうである。「俺の中で野球を楽しむというのはない」と言う落合監督の中日に、そうした空気はない。
現役時代同僚だった両監督のつくり上げたチームは、至極対照的である。どちらが正しいか? 結果が問われるプロの世界では最後に勝った方が正解ということになるのだが、今の両チームを見ていると、たとえ舞台が得意のナゴヤドームであると言っても、中日が雰囲気をさらに良くした千葉ロッテから連勝するというのは、容易ではないように感じられる。
日本シリーズ ロッテ5年ぶり4回目Vに王手 6日第6戦
中日とロッテの日本シリーズは6日、中日の本拠地・ナゴヤドームに戻って第6戦(午後6時10分開始)を行う。ここまでの対戦成績はロッテの3勝2敗で、5年ぶり4回目(前身の毎日時代の1回を含む)のシリーズ制覇に王手をかけている。移動日の5日はナゴヤドームで午後2時ごろから中日、ロッテの順でそれぞれ約2時間程度、軽めの調整を行った。
第6戦の先発は中日がチェン、ロッテは成瀬が有力だ。
◇見どころ 両左腕エース、先発が濃厚に
レギュラーシーズン3位のロッテがシリーズを制するか、中日が地の利を生かして踏みとどまるか。中日・チェン、ロッテ・成瀬の両左腕エースの投げ合いが予想され、勝負のカギは打線になりそう。ロッテは第5戦で先発全員安打。サブローや金泰均も複数安打で、全員に本来の振りが戻った。中日は森野、和田がともに19打数9安打。それだけに得点の足場になる荒木、大島といった、上位の出塁が勝負の流れを左右する。
◇ロッテ決めるか 成瀬「役割を果たす」
打線好調のロッテ。5戦でチーム打率は3割超と下位までムラがない。5日のフリー打撃で各選手が鋭い打球を外野席に落とした。
日本一になった05年MVPの今江は、今回も4割7分1厘と短期決戦で力を発揮。清田、井口が振れており、5番今江で走者を還すのが勝ちパターンだ。
今江をはじめ各選手が迷いなくファーストストライクから振る。今江が打ち損じてファウルし、苦笑いしていると、捕手谷繁に「お前、楽しそうやな」とつぶやかれたそうだ。
今江は言う。「僕はタイミングが合えば、どんどん振る。データは全く通用しないでしょう。谷繁さんは経験豊富で、データもたくさん頭に入っているでしょうが、何か困っていた感じを受けた」。来た球を打つシンプルさが迷いも力みもなくし、相手を脅かす。
第5戦で金泰均、サブローに当たりが戻ったのも好材料。この打線が背後に構えれば、先発濃厚な成瀬も気楽に投げられる。
◇中日並ぶか チェン「速球で押す」
中日が負けられない一戦のマウンドは、チェンに任されそうだ。第2戦で先発し6回1失点で勝利投手になった。中日の他の先発はロッテ打線に捕まっている中、ただ一人試合を作って大黒柱の役割を果たした。
5日のナゴヤドームでの練習でキャッチボールやランニングで汗を流したが、その後の行動が他選手と少し違った。みんなが次々と引き揚げる中、谷繁と2人、1時間を超えて球場から出て来ず。「体のケアをしていた。いつ登板してもいいように備えた」とチェン。大事な局面で調整に余念がなかった。
初挑戦の日本シリーズで2回目の登板。「負けられないと考えるとおかしくなる。いい投球だけを考える」。前回は抑えられたが、ロッテ打線は持ち前の連打がさえている。「向こうも自分のことを知った」と警戒を強めながらも「自分を信じて投げるだけ」。対策などは明かさず「速球で押していく」と意気込みだけを語った。
“打ち出の小槌”阿部バット、清田の新人MVPへ“爆振”
日本シリーズは4日の第5戦(千葉マリン)でロッテが大勝。3勝2敗とし日本一へ王手をかけた。第6戦は6日にナゴヤドームへ舞台を移して行われる。現在、日本シリーズ史上4人目の「新人MVP」へ向かって驀進しているのがロッテのドラフト4位、清田育宏外野手(24)。この日も5回に中前2点適時打を放って今シリーズ通算打点を6とし、新人記録に並んだ。まさかの大活躍の裏には、昨年の日本シリーズでMVPに輝いた巨人・阿部慎之助捕手(31)の意外な“アシスト”もある。
日本シリーズの大舞台で快打を連発する清田の白木のバットには、「慎之助」の3文字が刻印されている。
実は、西武とのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージで涌井、岸ら好投手を相手にバットを折りまくり、愛用していたミズノ社製のコーヒーブラウンのバットが足りなくなった。そこでソフトバンクとのファイナルステージから、同じメーカー、偶然同じタイプの、阿部の白木のバットを本人の承諾のうえで回してもらったのだ。
するとどうだ。ファイナルステージ第5戦の9回に貴重な2ランをヤフードームの左翼席にたたき込む。日本シリーズに入ると、第1戦のバックスクリーン弾、第3戦の満塁走者一掃の決勝3点三塁打を含め19打数7安打、打率・368。6打点は日本シリーズ新人タイ記録である。阿部は昨年の日本シリーズで打率・304、2本塁打と活躍しMVPを射止めているのだから、まさにシリーズMVPを呼ぶ魔法のバットだ。
阿部と清田には交流戦以降に親交がある。清田が所属していたNTT東日本で昨年までヘッドコーチを務めていた関口勝己さん(45)が、NTT東日本の前身である電電東京OBの阿部の父、東司さん(55)と旧知の仲。関口さんに促され、清田は阿部のもとへ挨拶に出向いた。
6月1日に千葉マリンで行われたロッテvs巨人。ロッテが大量9点をリードして迎えた5回、それまでヒットが出ていなかった清田が打席に立つと、阿部がマスク越しに「おい、きょうは関口さんも見に来ていることだし、打たせてやるからよ」とささやいたという。それ以上はどんな会話がかわされ、どんな配球だったか定かでないが、結局清田は力み過ぎたのか左飛に倒れた。試合中のアシストは実らなかったが、ポストシーズンで清田は阿部から思わぬ恩恵を受けたというワケだ。
社会人を代表する長距離砲としてプロ入りした清田だが、左脇腹肉離れの負傷もあり開幕2軍。それでも終盤に活躍し、公式戦64試合出場で打率・290をマーク。2番に定着している。東洋大3年のときに投手から野手に転向し、社会人でももっぱら主砲だったため「アマチュア時代にはやったことがなかった」という送りバントも、「われながらだいぶうまくなったと思います」。
「それもこれも、金森打撃コーチのおかげ。朝から晩まで指導していただいています」という。
また、新人でシリーズ6打点をマークした選手は過去に3人。1962年の東映・岩下光一、81年の巨人・原辰徳(現巨人監督)。そして残る1人、82年の中日・上川誠二(50)は、現在ロッテの1軍内野守備走塁コーチを務め、清田と一緒に戦っている。
上川コーチは「僕が新人記録を持っていたなんて、最近の新聞で初めて知りましたよ。清田の活躍のおかげです」と感謝。そのうえで「当時の僕は、新人ならではの“こわいものなし”。第3戦で逆転3ランを打ってから調子に乗りました。結局西武に2勝4敗で敗れましたが、僕は敢闘賞をいただき、賞品としてフィリピン・マニラへの往復航空券10人分をもらい、親孝行ができたうえに親戚にもプレゼントできてうれしかったことを覚えています。清田もいい度胸をしている。あいつも“こわいものなし”でしょう。今回はウチが日本一になれば、敢闘賞どころかMVPも狙えますよね…」と笑った。
あと1打点以上を加えれば、その上川コーチらを超えて単独新記録。清田も「その1打点が、勝利につながる1打点になるのなら、ぜひ」と色気を見せる。MVPの声には、「まず勝つこと。あとはオマケということで」と面はゆそうだった。
【それ行け!ヤスダ】球運は勢いのロッテにあり
日本シリーズ第5戦はロッテが圧勝して王手をかけた。第6戦からは中日が・754と考えられないような勝率を残している本拠地のナゴヤドームに戻るから予想は難しいけど、野球は運が左右するスポーツ。ここまでの5試合を見ると“球運”はロッテにあるような気がするな。
ロッテは第1戦で勝った成瀬。第3戦に97球で完投した渡辺俊介の2人で、6、7戦のどちらかを勝てばいいんだから有利なのは間違いない。
ただ渡辺俊介は風の全くないナゴヤドームでは、風の強い千葉マリンのようにはいかないだろうな。おれも変化球が得意だったから、アゲンストの風が吹くと、すごく投げやすかった。飛行機がアゲンストの風で離陸していく。あれと同じ感じになるから、ボールがよく動くんだよ。
中日の第6戦は、第1戦で3回3失点とひどすぎた吉見ではなく、第2戦で6回1失点と安定しているチェンが、中5日で出てくるだろう。第7戦は第4戦で2回2/3を抑えたネルソンを先発させて、早い回から高橋、浅尾、岩瀬でつなぐ総力戦に持ち込むしか勝機はないが、どちらにしても先発がカギを握っている。
打線はロッテの方が、どこからでも連打が出てつながっている。第5戦は中田賢一のスライダーを狙い撃ちしていたが全部甘い球だったとはいえしっかり捕らえていた。
中日は3、4番(森野、和田)に走者を置いて回さないと点が入らないんだから。5番のブランコは第5戦でタイムリー二塁打と2ランを打ったけど、「当たったらラッキー」だから、中日は厳しいな。
個人的には3位のチームが日本一になるのはどうかと思う。やはり優勝チームに勝ってほしいけれど、これはルールなんだからしようがない。勢いのロッテと経験の中日の戦いは、最後は勢いが上回るとみる。 (夕刊フジ評論家・安田猛)
ローカル色強い中日vsロッテ 日本シリーズ中継は視聴率惨敗
第1、第2、第5戦が全国地上波中継されない異例の日本シリーズとなっているが、これでは来季以降もテレビ局が日本シリーズに手を出しづらくなるかもしれない。
辛うじて第3戦はテレビ朝日が、第4戦がテレビ東京が全国地上波で完全生中継したが、関東地区では、ロッテが大差をつけて一方的に勝った第3戦が6・8%、延長11回で試合時間が4時41分(試合終了は午後10時57分)に及んだ第4戦は9・7%の惨敗に終わったことがビデオリサーチの調べでわかった。昨年、一昨年と比べてみると、中日vsロッテというローカル色の濃い対戦カードが全国レベルで注目されていないことが浮き彫りになる。
6日の第6戦、第7戦はフジテレビが全国地上波で中継する予定。ライバルのTBS関係者は「正直言って、日本シリーズは第7戦までもつれ込んでほしいのが本音です」と明かす。TBSは両日のゴールデンタイムには開催中「2010世界バレー女子」を中継することが決まっている。「裏番組でフジさんがバラエティーを放送した場合、世界バレーの視聴率がかなり食われてしまうでしょう。でも日本シリーズなら…。バレーボールを見たい人と野球を見たい人というのは重複しないと思いますし」というワケ。裏番組から「日本シリーズの方がくみしやすい」とみられてしまうのだから皮肉。野球全盛期からは隔世の感がある。
一方のフジテレビは地上波中継のゲストとして、第6戦にはソウル五輪で銀メダルを獲得したバッテリーでもある野茂英雄氏(42)&古田敦也氏(45)。第7戦には清原和博氏(43)という豪華な顔ぶれを用意。とりわけ野茂氏のテレビ出演は極めて珍しい。どこまで世間の注目を引くことができるか。
ロッテ社食に150人集結 テレビ観戦にも熱気
東京都新宿区のロッテ本社で4日、佃孝之代表取締役社長以下、社員約150人が社員食堂に集結し、千葉ロッテマリーンズのユニホームに身を包んでテレビ観戦。熱い声援を送った。
1回表に1点を先制されたが、その裏、佃社長の「頑張ろう!」の掛け声に応えるように一挙4点を奪い返すと、応援は一気にヒートアップ。追加点のたびに大歓声に包まれ、社員食堂は大盛り上がり。その後も仕事を終えた社員が続々と詰めかけ、15安打で10点を挙げて大勝した試合に大喜びだった。
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