朝鮮について知りたい

朝鮮について知りたいこと、書いていきます。

千年を責任、万年を保証

2012年12月30日 | 現代朝鮮、朝鮮半島

「千年の責任、万年を保証」。大きく掲げられたスローガンの下、清川江が湖を成した。熙川(フィチョン)発電所のダムである。自然の恵みから、止まることのない電気を創る。着工当初を振り返りながら、私は大きく一息ついた。人工の絶景を目の当たりにしながら、「無」から「有」を創造する人間の偉大さを思い知った。
4月、平壌を中心とした平安道一帯に熙川産の電気が届いた。親戚を含め、人びとは、「本当に電気事情がよくなった」と、自慢げに話す。それはそうだ。建設者は「自分たち」なのだから。建設現場に本を持って嘆願していった綜合大学の旧友が、帰ってきて大学院を無事卒業し、外務省で働くことになったと、興奮気味に話してくれた。
2012年、2度の訪問、約3か月の滞在期間、金日成主席の遺訓を背負い、金正日委員長とともに、「祖国」=自分の国を守るため、言葉にもできない艱難辛苦を甘受した偉大な彼らを見ながら、少しだけ過去を振り返った。
経済封鎖、社会主義経済協力体制の崩壊、自然災害、史上最悪とも言える状況に立った社会主義国家、朝鮮。国家予算は50%を下回り、食糧、電気、運送、住宅など、すべての問題に行き詰った。しかし、「自主と平等」のため、自分自身の生活、子供たちの未来のため、涙をのみながら選択した長い苦難の道。
あれから18年。朝鮮は思い描いた未来への切符を手にした。「強盛国家の大門」が開かれていっている。自立的民族経済の復興、最先端技術に土台される新しい経済的基礎の完成、やっと「人民生活」に全ての総力を向けられるときがきた。
とくに、めざましい発展を遂げたのは、経済のチュチェ化である。
電気問題でもってこれを説明するとこうなる。自然にそびえたつ山と河川が多く、石炭を無尽蔵に持つ朝鮮では、中小型の水力発電所、火力発電所をたくさん設け、電気を生産する。その土台の上で原油を使う。朝鮮に原油はないので、輸入する。といった方法で、産業に不可欠の部門では、まず自国のもので解決できるものは積極的にし、必要なものは輸入する「経済のチュチェ化」を奨励している。
農耕地にまく肥料にしても同じである。長いあいだ、抱えてきた肥料の問題で解決の目途が立ってきた。6.15以降、盛んに行われた化学肥料と鉱物、資源との南北交易は現在、閉ざされたまま。そもそも化学肥料は重油を原料とする形質ナフサを使うのだが、これには外貨コストもかかり、外国の影響をもろに受ける。よってこれは、朝鮮の経済路線に一致しない。そのようなことから朝鮮は石炭から出るガスを加工し、化学肥料を生産している。代表が興南肥料連合企業所(東海岸)、南興青年化学連合企業所(西海岸)などである。来年からは各地方の共同農場に「チュチェ肥料」が送られるだろう。肥料1トンによって10トンの米が生産される。昨年度、農業生産において約510万トン(5,132,870t、FAO・WFA発表、2011.11.24)の実績を残した上に、化学肥料まで加わってくると、当面の目標である600~700tには届く展望は明るい。
このように、これまで社会主義国、友好国との交易によって経済発展に少なくない影響を受けた朝鮮が、アメリカ式の「グローバル」化が進む中、自身の行く道、社会主義を掲げていくためには、新しい経済システムの構築が不可避の問題であった。
このような経済システムの構築、それに伴う生産の正常化と、モデル作りがまさに「強盛国家の大門」の具体的な目標であり、その門が開かれていっているのである。
2012年4月を転機に、朝鮮はいい意味で「変わった」。そして、いい意味で「変わっていない」。姿は変わり、またこれからも変貌しつつあるが、その政策は建国以来、一度も変わっていないのである。
特に朝鮮における政策の一貫性を表すものが9月25日、最高人民会議で定められた、「全般的12年制義務教育の実施について」である。
「教育は国の興亡と民族の将来運命を左右する根本問題のひとつである」。
この法令には育ちゆく新しい世代を責任的に育てる意志と、彼らに委ね、未来の挑戦を創っていく、またいかなければならないという、「後代観」が集約されている。
朝鮮は、1956年に初めて初等義務教育を始めたのち、教育においては一度も譲歩をしたことがない。1972年に世界で初めて、全般的な義務教育を導入しおさめた成果にもとづいて、これからは、12年ものあいだ、国家が子供たちの教育を請けおって全国家的・全人民的・全社会的なプロジェクトとして、進められる。教育は未来であり、子供の教育水準は国家の未来をそのまま展望する。
祖国の未来は、一番大切な子供たちが担っていく。
「強盛国家の大門」を開く年、2012年の終盤に、教育改革がなされたことは特筆されるべき意図があるだろう。
今、朝鮮におけるすべての建設、生産、物事の判断基準、価値尺度は「人民」・「未来」・「後代」にある。
「千年を責任持ち、万年を保証する。」
この人民観、未来観にこそ朝鮮が苦難を乗り越え、「大門」を開いた秘訣がある。今日もその先頭には、金日成主席と金正日委員長の遺志を継ぎ、自主の道をまっすぐに、人民とともに、スクラムを組んで歩んでいっている金正恩第1委員長がいる。人民に近く、慕われる指導者の姿に私にも笑顔がこぼれていた。