3月25日に放送されたNHK BS世界のドキュメンタリー「人身売買 子どもたちの再出発」は考えさせられる。以下は番組HPでの紹介。
―ガーナにある世界最大の貯水湖、ポルタ湖の周辺に点在する村では、子供の人身売買が普通に行われている。施設に保護され、生まれ故郷へ戻ってゆく子供たちの成長の記録。
ポルタ湖での漁業で生計を立てている村人たちは、人身売買で手に入れた子供たちに、絡まった網を素潜りして元に戻す危険な作業を強要、命を落とす子供たちも多い。そんな子供たちを保護しリハビリ施設で生活させた後、生まれ故郷へと戻していく活動を行っている団体がある。この施設に保護された2人の子供に密着。本来の姿を取り戻し、施設を旅立つまでの過程を描く。原題:The Rescue List/アメリカ 2018年
番組HPではポルタ湖と書かれているが、番組では一貫してボルタ湖と呼称しており、wikiにもヴォルタ湖(Lake Volta)と解説されている。ボルタ湖は水力発電用のダムで生まれた世界最大の人口湖であることを番組で初めて知った。
湖が形成されたのは1965年だそうで、まだ半世紀ほどしか経っていない新しい湖なのだ。しかしここで横行する児童労働は、古くから世界各地で行われてきた。
ボルタ湖ではどんな種の魚をとっているのか、番組では詳しくは触れなかったが、人買いが子供たちを連れてくる。標的にされるのは貧困家庭で、作業は短期労働と偽ることも多いようだ。実の母が人買いに子供を売ることもあり、売られた先で子供たちは奴隷同然の重労働を強いられる。
ガーナでも一応子供は義務教育を受けることになっているが、ボルタ湖で漁業させられる子供たちは学校に通わせてもらえず、船主やその息子から暴言や暴力を浴びせられることは珍しくないという。ボルタ湖で労働させられている子供は約2万人に上ると見られている。
番組では施設に保護された2人の子供を取り上げており、その1人ピーターは3歳で売られ、17歳まで働かさせていたという。たった3歳児でも売られるのか?と思った視聴者も多かっただろうが、第三世界では子供が働くのは当たり前である。家にいても農業などの作業はさせられるし、それ拒むことは考えられない。家父長制の強いアフリカでは家長に逆らえないのだ。
もう1人の少年エダムは見たところ10歳くらいだが、子供らしくない暗い目と悲しげな表情が印象的だった。心身ともに虐待を受け続けると、表情にも出てくるのはやり切れない。
NGOスタッフが連絡を取り合い、エダムの母が施設に息子を引き取りに来る。他の子供たちが言うように、「エダムのお母さん、きれい」だった。顔立ちだけでなく、細かく編んだ髪型や鮮やかな衣装もきれいだった。
子供を手放すほどだから、ボロ服姿で来るかと思いきや、日本人から見ればかなりオシャレ。エダムの母に限らず、総じて番組に登場したガーナ人は漁師さえ小奇麗な服を着ていた。
人身売買された子供を保護するNGO職員クワメは、子供時代に同じ体験をしている。無事保護されたが、学校に初めて通うことになった時、既に十歳を過ぎており、同級生から「おじさん一年生」とからかわれたそうだ。それでも負けず勉学に励み、今の職に就く。施設では読み書きや算数を教えているが、同年代の子供たちと比べ学力が大幅に劣るのは書くまでもない。
クワメは人身売買された子供を再び親元に返すのはリスクがあるという。親が再び売りかねないし、そうでなくとも親子関係が上手くいかないこともあるようだ。
NGOはこれまで千人近くの子供を救助、子供を人身売買した者は15年の禁固刑になるそうだ。但しこの種の問題は根が深く、根絶は極めて難しいだろう。
ガーナと言えば、チョコレートを連想する日本人は多いだろうが、英連邦加盟国でもあり、国民の68.8%がキリスト教徒(wiki)という。英国の植民地だったためか、英語が公用語となっている。かつてガーナは奴隷貿易の拠点であり、内陸部にあったアシャンティ王国は奴隷貿易により繁栄した歴史を持つ。