その①の続き 自分の息子や孫がスルタンとなり、ヴァリデ・スルタン(母后)としてハレムの女主人となっても、それで生涯安泰とは限らない。30年ちかくに亘り宮廷支配を行ったキョセム・スルタン(1589?-1651.9.2)は、息子ムラト4世とイブラヒム1世を皇帝に就け、孫のメフメト4世(イブラヒム1世の子)も皇帝にすることに成功している。にも拘らず、ハレム内での権力闘争に敗れ、暗殺された。 キョセムの幼 . . . 本文を読む
前回に続き、オスマン帝国のハレムの世界について書いてみたい。男子禁制のハレムでは、スルタンの寵愛を巡り熾烈な女同士の葛藤が常態化しており、殊に後継者争いとなれば権力闘争に拍車がかかった。 この辺りは日本の大奥と同じでも、規模では極東の島国など比べものとならないハレムゆえ、権力闘争や権謀術数もまた凄まじかった。皇帝の母だけではなく妻や側室、女官たちが政治に口ばしをはさむのはごく当り前、これを以って . . . 本文を読む
ハレムの話題となると男性はもちろん女性も関心があるのか、2006-10-26付にも関わらず、「オスマン・トルコの後宮事情」は時々拙ブログの人気記事となる。記事のネタとなった『イタリア遺聞』(塩野七生 著、新潮文庫)を久しぶりに読み返したら、「後宮からの便り」の章で興味深い箇所があったので引用したい。「彼女たちの「固定給」は、日給制で1日4アスプロ。同時代のヴェネツィアの国営造船所の未熟練工の給料 . . . 本文を読む
その①の続き オスマン帝国末期の思想家・知的指導者にズィヤー・ギョカルプ(1876-1924)がいる。彼は20歳の時、故郷である東南アナトリアのディヤルバクルからイスタンブルに出たが、すぐに「青年トルコ人」運動に対する一斉捜査で逮捕される。逮捕・収監されたのち、首都追放となって帰郷、そこでフランス社会学をほぼ独学したという。 1908年の憲法復帰後にギョカルプは、「統一と進歩委員会」の本部があるサ . . . 本文を読む
国を持たない最大の少数民族、と言われるクルド人。最も多く居住しているのはトルコだが、分離独立を求めるクルドの武装組織PKK(クルディスタン労働者党)とトルコ政府軍との間では長年戦闘が続いている。もちろんトルコ国内のクルド人がこぞってPKKを支持しているのではないが、長期に亘る戦いでトルコ人とクルド人双方に憎悪や不信感を抱いても不思議はない。 対立はトルコ国内にとどまらず、他国でも行われることもあ . . . 本文を読む
その①の続き 祖国解放運動の第一歩となったサムスン上陸時(1919年)にもケマルは体調不良、ハウザ(現サムスン県)に立ち寄り腎臓病の治療を受けている。解放運動指導者としての地位を確立したエルズルム会議、シヴァス会議時にあっても、腎臓病に苦しんでいた。さらに1925年と27年、冠状動脈血栓を起こしている。36年11月は肺炎となり、37年に入って肝硬変と診断された。しかし、彼は大統領としてハタイ併合な . . . 本文を読む
『ケマル・アタテュルク:トルコ国民の父』(設樂國廣著、世界史リブレット086/山川出版社)を先日読んだ。全108頁の薄さが気になったが、昨年8月初出版ということもあり、最新情報を期待して購読する。次は表紙裏にある紹介。
―ムスタファ・ケマル・アタテュルクは第一次世界大戦で敗北し崩壊寸前のオスマン帝国でアナトリアとルメリー(注)のトルコ人を救済すべく祖国解放運動を展開し、新たにトルコ共和国を樹立し . . . 本文を読む
その一、その二、その三、その四、その五の続き「イスラム世界はなぜ没落したか?」(原題:What Went Wrong?)という問に、バーナード・ルイスの回答は極めて率直だ。「イスラム世界が高度な発展により唯我独尊状態になり、他文明から学ばなかったから」、というのが結論である。著者は最盛期のイスラム世界を称賛しつつも、近世、殊に現代のイスラム世界には厳しい言及を重ねる。終章からその一部を抜粋したい。 . . . 本文を読む
その一、その二、その三、その四の続き イスラム世界といえば、この地域に無関心な人の間でも女性の地位が極端に低い処として知られている。対照的に女の地位が高く、社会進出が著しいと思われているのが西洋。しかし、“暗黒の中世”時代の西洋と、同時期には全盛期のイスラム世界は違っていたことを知る人は意外に少ない。 現代のような男女平等の概念こそないが、女児も男児と共に教育を受けることが . . . 本文を読む
その一、その二、その三の続き 対照的にムスリムの経験と歴史は、キリスト教徒とのそれとはまるで異なっていた。スンナ派、シーア派が典型で、ムスリムの間にも宗教的不一致があり、宗派対立や抑圧に繋がることはあった。しかし、ムスリムは欧州キリスト教徒のように宗教改革、異端審問所、16~17世紀における激しい宗教戦争、魔女狩りなどを体験しておらず、時代に区切りになるような事件は全く起きていない。バーナード・ル . . . 本文を読む