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トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

ゾロアスター教の聖典を初訳したフランス人 その④

2009-02-27 21:15:40 | 読書/欧米史
その①、その②、その③の続き パリを離れて8年、32歳の冬に祖国に戻ったデュペロンはその翌日、180点のペルシア語、サンスクリット、パフラヴィー語の写本を王立図書館に納めた。1763年、彼は金石・碑文アカデミーの会員に選ばれる。そしてアカデミーの紀要に「ペルシアの古代語の研究」、「マゴス(ゾロアスター教の神官)の神学体系」などの論文を発表する傍ら、写本資料の分析を進め、広範な大冊「ゼンド・アヴェス . . . 本文を読む

ゾロアスター教の聖典を初訳したフランス人 その③

2009-02-25 21:22:25 | 読書/欧米史
その①、その②の続き 弟と共にボンディシェリを発ったデュペロンは海路でスーラトに向かう。途中コーチンにも立ち寄り、ゴアからは陸路を辿り、エローラ石窟群にも立ち寄っている。石窟の見事な石彫を観察した後、ついにスーラトに着いた。17585月1日のことである。 当時スーラトは北インド最大の交易地だった。デュペロンは旅の疲れもあるのか、赤痢となりなお2ヶ月間療養を余儀なくされる。この地では18世紀に入り、 . . . 本文を読む

ゾロアスター教の聖典を初訳したフランス人 その②

2009-02-24 21:26:25 | 読書/欧米史
その①の続き 啓蒙時代の知識人らしく、未知の世界に挑むにはまず現場に行き、言語を学び、歴史と宗教を理解する必要性をデュペロンは認識していた。とりわけ宗教の歴史を知るには、原典の言葉をものにしてから原典を読まねばならない、というのが彼の信条だった。当時23歳の彼は後にこう述べているが、現代の学者でもこれほど真摯な姿勢の人は至って少ないのではないか。-原典の変形を知り、法を作った人々にふれている石造の . . . 本文を読む

ゾロアスター教の聖典を初訳したフランス人 その①

2009-02-23 21:23:15 | 読書/欧米史
 古代ギリシア、ローマ時代から西欧社会で開祖ゾロアスターの名は知られており、キリスト教化した後もギリシア語、ラテン語文献を通じゾロアスターの記憶は残った。しかし、古代の文献も正確さを欠いており、様々な伝説も絡み西欧の知識人の間では虚像が肥大化した。ゾロアスター教の聖典アヴェスターが西欧で翻訳されたのは18世紀後半になってであり、それを行ったのこそフランス人学者アンクティル・デュペロン(1731-1 . . . 本文を読む

もうひとりの海賊女王 その②

2008-10-02 21:28:44 | 読書/欧米史
その①の続き 結婚の1年後、グラニュエールは夫を城から追い出し、離婚を宣言した。女海賊らしく城を乗っ取るものの、この夫婦はまた結ばれ、1583年にリチャードが死ぬまで共に暮らしたという。愛が芽生えたのか、子供を身ごもったためか、理由は不明。彼女が3番目の息子を産んだのは船上であり、ティボット・ネ・ロング(船団のトビー)と名付けられる。臨月になっても海賊業を行っていた訳だ。出産の翌日、船はアルジェの . . . 本文を読む

もうひとりの海賊女王 その①

2008-10-01 21:23:21 | 読書/欧米史
 欧州史で海賊女王と呼ばれた女なら、大抵はエリザベス1世を思い浮かべるだろう。たが、同時代に英国の隣国アイルランドにも海賊女王と謳われた女傑がいたことを、私も最近知ったばかりだ。その名は、グラニュエール(またはグレイス)・オマリ。エリザベス1世が軍艦に全く乗らなかったのに対し、グラニュエールは文字通り船に乗り込み海戦を指揮した。 グラニュエール・オマリとは同時代の英国支配者から、「大いなる略奪者に . . . 本文を読む

ナチスとゾロアスター その②

2008-07-22 21:22:17 | 読書/欧米史
その①の続き アーネンエルベ(アーリア民族遺産研究協会)が研究題目として採用したのは、主に以下の4項目だった。①アーリア民族発祥の地としてのチベット探検(当時、中央アジアではなくチベットがアーリア民族の原郷と考えられていた)②キリストの聖杯のためのアイスランド探検(イエスの父がローマ軍兵士だとすれば、彼は半分アーリア人となる)③純粋アーリア人であるペルシア皇帝の血液を求めてのイラン高原探検④アーリ . . . 本文を読む

ナチスとゾロアスター その①

2008-07-21 20:46:02 | 読書/欧米史
 アーリア民族至上主義が唱えられたナチス時代のドイツで、一躍注目された東洋の宗教者があった。ゾロアスター教の開祖ザラスシュトラ(英語名ゾロアスター、独語名ツァラトゥストラ)こそその人物で、古代アーリア人の偉大なる神官と見た。それは正確な解釈ではあるが、ナチズムに利用され、果てはヒトラーと重ねられていった。 ペルシア(現イラン)がアラブ・イスラムに征服され、ゾロアスター教がイスラムに圧倒された後でも . . . 本文を読む

原作に見る大草原の小さな家

2008-06-08 20:24:14 | 読書/欧米史
 1975年~82年にかけNHKで、土曜18:00に放送されたアメリカのTVシリーズ『大草原の小さな家』は、日本でも人気番組であり、毎週楽しみにご覧になられた方も多いと思う。学生時代、このドラマの原作本を2冊ほど読んだことがある。私の見たのは福音館書店から出版された本であり、子供向けに書かれた作品だった。この本の著者こそ、ローラ・インガルス・ワイルダー、TVドラマでのインガルス一家の活発な次女で、 . . . 本文を読む

無敵艦隊

2008-02-21 21:52:05 | 読書/欧米史
 軍事や海戦史に詳しくない方でも、無敵艦隊やアルマダの海戦ならご存知だろう。その後の世界史の流れを変えた戦のひとつであり、大艦隊が完璧なまでに壊滅させられた海戦でもある。ある日本人作家はこの艦隊を「戦わない間だけ無敵だった」と酷評しているが、それでも侵攻されるイギリス側には最大の国難だった。  スペインが大艦隊を送り、イギリス侵攻を企てた要因は主に2つある。第一にイギリスの度重なる海賊行為。スペイ . . . 本文を読む