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トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

エリザベスとメアリー・ステュアート

2008-02-20 21:49:40 | 読書/欧米史
 16世紀のイングランド女王エリザベス1世と、スコットランド女王メアリー・ステュアートほど対照的な女王もいないが、現代に至っても男性と女性の見る目が全く違う世界史上の著名人でもある。つまり、同性から高く評価される前者に対し、後者は異性から人気がある。学者や作家、漫画家でも女ならエリザベスを支持し、男ならメアリーを擁護したがるのだ。 作家・永井路子氏は著書でメアリー・ステュアートを「“男難”で身を滅 . . . 本文を読む

マキアヴェッリの民衆評価

2007-12-03 21:25:23 | 読書/欧米史
 マスコミによく登場する有識者の中には、今でも無知な民衆を啓蒙するのが己の使命と言わんばかりに、狭量かつ独善的な長広舌を展開する者がいる。学識者らしく異なる意見や見解には冷静に説得するどころか、門外漢は黙っていろとばかりに感情露わに捲くし立てる人物さえも。彼らに共通するのは民衆イコール愚かとの愚民思想である。自分自身も無名の民衆の一人に過ぎないのに、自分の気に入らない意見の持ち主やその支持者を愚民 . . . 本文を読む

トクヴィル-二重基準のフランス知識人

2007-10-28 20:28:17 | 読書/欧米史
 映画『シッコ』のエンド・クレジットに、19世紀フランスを代表する政治思想家、アレクシス・ド・トクヴィルの名が出てくる。おそらくアメリカやフランスに詳しい方でもない限り、日本では知られていない人物だろう。しかし、私がトクヴィルの名を知ったのは、中東近代史の本を読んだからだ。自由主義者であり、人道主義の実践を提唱したトクヴィルは第三世界、殊にイスラム世界においては祖国による植民地化を大胆に主張した知 . . . 本文を読む

ルネサンスの歴史オタク

2007-09-21 21:26:28 | 読書/欧米史
 一口にオタクと言ってもその定義は難しく、Wikipediaの冒頭にはこうある。「おたくとは、趣味に没頭する人の一つの類型またはその個人を示す言葉である」。趣味に没頭するにせよ、狭義と広義もあるそうだが、少なくとも趣味人と私は解釈している。  人の趣味は様々なので、自らはプレーはしなくともサッカーが大好きで、その知識が豊富ならサッカーオタクとなり、野球にも同類が大勢いる。楽器演奏が出来 ずとも . . . 本文を読む

リンチを慣習とした国

2007-07-20 21:23:39 | 読書/欧米史
 私刑という日本語より、同じ意味を持つ外来語リンチの方が馴染み深く、よく使われる。リンチの語源は諸説あるが、少なくともアメリカにおいてはそれを始めた者の名に由来すると一般に思われている。 アメリカが元来本国から離れた植民地だったゆえ、本国の支配が及びにくく、領地が西に向かい拡大していく上で権力の空白が生じる。そんなところには無法が蔓延りやすくなりがちだ。既に独立戦争時(1775-83年)、軍人とし . . . 本文を読む

ローマ世界の終焉-ローマ人の物語ⅩⅤ その②

2007-03-07 21:21:21 | 読書/欧米史
その①の続き 410 年のローマ劫掠後もしばらく西ローマ帝国は存続するが、第2部「ローマ帝国の滅亡」では476年までの出来事が記されている。東と違い西では皇帝が短期間で変わり、政局が安定しなかった。ただ、東西共に女が政治に介入するようになったのは面白い。女性である塩野氏は、このような現象を皮肉って書いている。「なぜか女が実権を握った国では、男が無気力になる…女が意欲充分だから男が無気力になるのか、 . . . 本文を読む

ローマ世界の終焉-ローマ人の物語ⅩⅤ その①

2007-03-06 21:18:36 | 読書/欧米史
 15年間毎年欠かさず刊行された『ローマ人の物語』 の、これが最終巻。この巻の末尾に著者の塩野氏も記しているように、ローマ史によく見られる何故滅んだかとの要因でなく、「「なぜ」よりも、「どのよう に」衰亡していったのか」に重点が置かれている。氏の感情を抑えた文体から、ローマのあまりにもあっけない最後が浮かび上がってくる。 15巻目は第3部に分かれている。第1部名は「最後のローマ人」、母はローマ . . . 本文を読む

鋼鉄の処女

2007-02-21 21:18:26 | 読書/欧米史
 昔、アタマを使わずとも聴ける上ストレス解消となるので、ハードロックやヘヴィ・メタルを結構好んでいた。類は友をよぶのか、友人にアイアン・メイデンのファンがいた。むくつけき男たちのバンド名に「鋼鉄の処女」とは、ずいぶん相応しくないと思ったが、同じ名の中世の拷問道具や、それで多くの少女を殺害した女がいたのを後で知った。 “鉄の処女”その他の惨い拷問で600人に上る少女を虐殺した女は、ハンガリーのエルゼ . . . 本文を読む

海賊キャプテン・ドレーク

2007-02-12 20:20:52 | 読書/欧米史
 有名な海賊で思い浮かべる人物は?と問われたら、大ヒットしたハリウッド超大作の影響で、ジャック・スパロウと答える人もいるかもしれない。実在の海賊ならば、私は英国海賊キャプテン・ドレークが真っ先に頭に浮かぶ。 海賊や海戦史に詳しくなくとも、英国女王から爵位を与えられた海賊としてキャプテン・ドレークは有名だ。大胆かつ命知らずの海賊であり、スペインの無敵艦隊を破り祖国を救った英雄…彼のイメージはこのよう . . . 本文を読む

娼婦から寵姫になった女

2007-02-04 20:23:09 | 読書/欧米史
 映画「マリー・アントワネット」や劇画“ベルバラ”でアントワネットの敵役として登場するのが、ルイ15世の寵姫デュ・バリー夫人。特に“ベルバラ”では罪もない小間使いを毒殺し、オスカルの母に濡れ衣をきせようとする冷酷な悪女に描かれているが、これはもちろんフィクション。とかく物語では国王の寵愛をほしいままにした悪女にされるが、実際はどんな女性だったのか。 デュ・バリー夫人の元の名はジャンヌ・ベキュと . . . 本文を読む