政治家「又市征治」という男

元政治記者の私が最も興味を持った政治家、それが又市征治だった。その知られざる人物像に迫る。

本当の敵

2007年07月03日 | Weblog
 平成13年正月、又市征治が初めて比例代表候補として参院選への出馬を決意したとき、自治労の内部は上を下への大騒ぎとなったという。「民主党の現職がいるのに、又市が社民党から出るとは何事か。」というわけである。

 自治労本部は又市らを抑え込もうとした。社民党から又市に出馬要請に行った当時の渕上貞雄幹事長に対して「要請を取り消せ」と激しく抗議した。そして又市は「異端」扱いだった。

 経歴を比べてみれば、民主党の現職だった朝日は医者であり労働運動とは縁遠い人物である。一方、又市は40年近い歳月を労働運動に費やし、30歳の頃から書記長として活躍し、貢献してきた「たたき上げ」である。どちらが組合員を守ってくれる人間であるかは一目瞭然だと思うが、だからこそ自治労本部は、支持を集めかねない又市という男の存在に神経を尖らせていたのかもしれない。

 走り出したら止まらないのが又市である。腹をくくった以上、期待を裏切るわけにはいかない。とにかく駆け回って支持を訴えるしかなかった。
 200日間、又市は休む間もなく日本中を飛び回った。1人や2人の職場から1万人の集会まで、その訪問先は6千8百余りにのぼったという。何しろ日本中、移動だけでも大変である。交替で受け持つ二十代、三十代の随行者でも一週間が限界という強行スケジュールを、又市は気力で乗り切った。もとより、小学生の頃から不眠不休で働き続けてきた又市である。使命感を糧として、正に東奔西走を続けた。

 ある組合を訪ねて行ったときのことである。民主党支持者たちが又市を入れさせまいと入口を塞ぎ、又市は足止めをくった。こうしたことは、あちこちであった。当然、周囲の者は怒りをあらわにしたが、又市はこうなだめたという。

 「同じ組合員、同じ働く仲間じゃないか。いがみ合ってどうする。彼らだってそれだけ一所懸命なんだ。いいじゃないか。本当の敵は別のところにいるだろう。」

 そして又市は、行く手を阻む相手に「ご苦労様です。」と言って立ち去ったという。

 又市は豪胆で喧嘩の仕方も知っている。しかし同時に大局を見ることができる男である。
 又市にとっても、民主側についた人々にとっても、本当の敵は政権与党だった。又市は福祉や平和、そして仲間のことを考えたとき、その「本当の敵」である与党と本当に対決することができる社民党を選んだだけだ。

 そこで又市を排除しようと頑張る人々も、又市にとっては「守るべき仲間」だったのである。

 そうした又市の思いをよそに、又市は自治労「たたき上げ」でありながら、いまだに「異端」扱いされ、自治労から「公認(協力議員)」扱いされず、そのために連合からも推薦されていないという。

 彼らは自分たちの「本当の敵」を見誤っていた。又市の動きに神経を尖らせるあまり、「本当の敵」がすぐそこまで迫って来ていることを見落としていたのだ。
(敬称略)

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