TVを見ていたら、ニュース報道とワイド・ショーで、木造アパートの2階がこわれて1階の居住者の頭の上に落下したという出来事を報道し、またゲストが議論していた。幸い死傷者は出なかったようであるが。
私はこの番組を我が奥方(我が家の環境大臣)が見ないかとヒヤヒヤしていた。
この2階の50歳半ばの住人が、長い間雑誌を捨てないでためこんだために、2階の床がその重さに耐えかねて落下したというのである。そのためてしまった雑誌の重量は数字では正確に覚えていないが、象1匹の重さに相当するとのことである。
コメンテーターは当然のことながら批判論と同情論に分かれていた。「大事なもの」はなかなか捨てられないものだ、という同情論とそれにしてもちょっとやりすぎという批判論。この古雑誌はごみというべきでない、資料と言うべきだという同情論。高名な元参議院議員の女権擁護論で有名な女性コメンテーターが同情論をのべていた。(よし、よし。今度また彼女が立候補したら投票してやろう。)彼女の自分の経験でも、大学院の学生だというとなかなか部屋を貸してくれない貸主が多くて苦労をしたと言っていた。大学院の学生はやたら本を沢山持ってくるので貸主が心配するというのである。床が抜けてしまうなどという心配は昔の貸主もしていたのかも知れない。
総じてコメンテーターは笑いながらも同情的な発言であった。
法律的には?と問われて弁護士さんは「これが借家契約で予想される通常の使用方法と考えられれば契約違反にはならないが、そう考えられない場合は契約違反にあたり、生じた損害は債務不履行として損害を家主にしはらわないといけない。」と答えていた。象1匹の重さになるまで古雑誌(資料)をためて借りた部屋に入れておくのは、契約違反になるのだろう。
法学部の学生なら、もしこのことにより床が抜けてしまうかもしれないということを、借主が予想していた場合または当然予想できたはずなのにうっかりと気がつかなかったというのなら、故意または過失による不法行為としても貸主は借主に損害賠償を請求できる。しかし、その場合は故意過失の立証責任は請求者の側にあるから、不法行為として請求するよりも契約違反として請求する方がいい、などと説明してくれるのであろう。
これが、死傷事故をおこしていなかったから、笑いながら話ができるのだが、その下に住んでいる住人がけがをする可能性もあっただけにゆゆしき問題として考えておかないといけないのだろう。
木造のアパートの1階の部屋を借りる時には、その2階に大学院の学生や、私のような本を捨てられないでためてしまっている人間が住んでいないかどうか確かめてから契約すべきであろう。(この部分は冗談が入っているので誤解頂かないよう。誤解されると大学院生の方に申し訳ない。)
40歳の私が漫画「のらくろ」の本を何故買ったのか、何故持っているかと聞かれるとつらい。身近に持っていたかったからと答えるしかない。内容は幼い頃に何度も何度も読んでいるのでよく覚えている。今さら読むこともない。それなのに何故本を買いたいのか。
この「のらくろ」は文庫本の小さいものだ。戦後講談社は複刻版のような、昔と同じ装丁の「のらくろ」を売り出した。その時心が動いたがさすが買わなかった。文庫本ならと思って買ったのだ。
(という言い訳は用意している。)
それにしても私たちの世代には「のらくろ」は懐かしい。
「心のふるさと」といえばちょっと大袈裟かもしれないが。
(つづく)
田河水泡画 「のらくろ漫画集」 講談社 少年倶楽部文庫 昭和50年(1975年)
10月16日第1刷発行 同年11月16日第6刷 198ページ 定価280円
私はこの番組を我が奥方(我が家の環境大臣)が見ないかとヒヤヒヤしていた。
この2階の50歳半ばの住人が、長い間雑誌を捨てないでためこんだために、2階の床がその重さに耐えかねて落下したというのである。そのためてしまった雑誌の重量は数字では正確に覚えていないが、象1匹の重さに相当するとのことである。
コメンテーターは当然のことながら批判論と同情論に分かれていた。「大事なもの」はなかなか捨てられないものだ、という同情論とそれにしてもちょっとやりすぎという批判論。この古雑誌はごみというべきでない、資料と言うべきだという同情論。高名な元参議院議員の女権擁護論で有名な女性コメンテーターが同情論をのべていた。(よし、よし。今度また彼女が立候補したら投票してやろう。)彼女の自分の経験でも、大学院の学生だというとなかなか部屋を貸してくれない貸主が多くて苦労をしたと言っていた。大学院の学生はやたら本を沢山持ってくるので貸主が心配するというのである。床が抜けてしまうなどという心配は昔の貸主もしていたのかも知れない。
総じてコメンテーターは笑いながらも同情的な発言であった。
法律的には?と問われて弁護士さんは「これが借家契約で予想される通常の使用方法と考えられれば契約違反にはならないが、そう考えられない場合は契約違反にあたり、生じた損害は債務不履行として損害を家主にしはらわないといけない。」と答えていた。象1匹の重さになるまで古雑誌(資料)をためて借りた部屋に入れておくのは、契約違反になるのだろう。
法学部の学生なら、もしこのことにより床が抜けてしまうかもしれないということを、借主が予想していた場合または当然予想できたはずなのにうっかりと気がつかなかったというのなら、故意または過失による不法行為としても貸主は借主に損害賠償を請求できる。しかし、その場合は故意過失の立証責任は請求者の側にあるから、不法行為として請求するよりも契約違反として請求する方がいい、などと説明してくれるのであろう。
これが、死傷事故をおこしていなかったから、笑いながら話ができるのだが、その下に住んでいる住人がけがをする可能性もあっただけにゆゆしき問題として考えておかないといけないのだろう。
木造のアパートの1階の部屋を借りる時には、その2階に大学院の学生や、私のような本を捨てられないでためてしまっている人間が住んでいないかどうか確かめてから契約すべきであろう。(この部分は冗談が入っているので誤解頂かないよう。誤解されると大学院生の方に申し訳ない。)
40歳の私が漫画「のらくろ」の本を何故買ったのか、何故持っているかと聞かれるとつらい。身近に持っていたかったからと答えるしかない。内容は幼い頃に何度も何度も読んでいるのでよく覚えている。今さら読むこともない。それなのに何故本を買いたいのか。
この「のらくろ」は文庫本の小さいものだ。戦後講談社は複刻版のような、昔と同じ装丁の「のらくろ」を売り出した。その時心が動いたがさすが買わなかった。文庫本ならと思って買ったのだ。
(という言い訳は用意している。)
それにしても私たちの世代には「のらくろ」は懐かしい。
「心のふるさと」といえばちょっと大袈裟かもしれないが。
(つづく)
田河水泡画 「のらくろ漫画集」 講談社 少年倶楽部文庫 昭和50年(1975年)
10月16日第1刷発行 同年11月16日第6刷 198ページ 定価280円