手術の立会い

2008-06-29 22:40:45 | Weblog
 さあ立ち会ってきましたがな身内の癌手術。ドラマやら
なにやらでこの手のシーンは腐るほど見てきたが、自分
の身の上に降ってかかるとやっぱり衝撃っすよ。

 午後1時半手術開始という話が、前の手術が押したと
かで30分ほど遅れ、いやお袋と3人なんかこぉイライラ
イラと。2時になってやっと呼ばれ、移動式のベッドに載
せられてそのまま手術室。麻酔が効くまで1時間、手術
3時間、麻酔さめるまで1時間の計5時間が普通と聞か
されており、家族控え室に5時間ほど詰めておりました。
控え室には他の家族がもう一組、話を漏れ聞くとあっち
は午前10時から手術を始めているとか。パンチパーマ
のオッサンふたりと、小太りのオバサン、そして30代は
じめと思えるこれまた小太り女性の四人組。テーブルの
上には塩煎餅の袋とお茶の2ℓのペットボトル。準備万端
怠りのないあちらの家族に引き換え、こっちはお袋とふた
り徒手空拳、せめて飲み物でも持ってくるべきだったと後
悔いたしましたが時すでに遅し、であります。

 本もなく雑誌もなく新聞もなく、致し方なくついているTV
をぼんやり見ているだけであります。水戸黄門の再放送な
ど見るのはガチで数年ぶり、しかも佐野浅夫が黄門さまで
伊吹次郎とあおい輝彦が脇を固めており、ゲスト出演の若
侍役でルー大柴、その叔父役で長門勇が出ているという、
いったいいつ制作したんだかわけがわからなくなるほどの
浮世離れ、親父が癌であろうとなかろうと、少なくともいま
の日本は平和だな、と実感したわけであります。その後は
ニュース系の番組がはじまり、世田谷の公園で烏に大量
にエサを与えている変なオバサンが登場、インタビュアー
の直撃受けて「地球が生み出したのは人間ばかりではな
いんですよ」と頭いっちゃった持論を展開、でも他人に迷惑
かけているんですからとたたみこむインタビュアーに向かっ
て、「もう、わかってくれない人とは話したって仕様がない」
と見事な逆ギレ、父親の手術待ってる中年男には実にふさ
わしい映像かもしれんと思うたわけであります。要するに、
いまの日本は平和だがいろいろとどうしようもなく、それはひ
とりのジジイの生死とはまったく無関係に進行していくと。

 このような悟りを開いた後も時は進行していき、ついにTV
では「志村けんのバカ殿様」がはじまり、同じ階の手術室で
父親が腹裂かれている最中であるにもかかわらず思わず大
笑いをした脂ハゲであります。やっぱ志村は偉大だわ。そし
てまた、ストレスの最大の妙薬はお笑い。これはもう間違い
のない話だと考える次第であります。

 午後7時過ぎ、手術も一応終了しカンニング竹山似の執刀
医に呼ばれ、手術自体は難しいものではなかったが腹の脂
肪が多くてまいった、てなことを聞かされ、思わず自らの出腹
を見つめた脂ハゲでございました。摘出された前立腺も見せ
ていただいたわけでありますが、これがどう見てもホルモン焼
き屋のネタにしか見えない。「さわってみる? この部分の感
触がたぶん癌」と言われたのですが、そうでなくとも気の弱い
脂ハゲ、丁重に辞退させていただきました。

 そしてまた麻酔が覚めるまで数十分、やっと意識が戻ったと
いうことで看護師のひとによばれ、集中治療室に行くとお袋と
俺の顔を見て開口一番、「大宮の鉄道博物館行くまでは死ね
ん」

 どこまで鉄オタなんだこのジジイはと思いつつ、ややほっとし
たのもまたたしかであります。いつもと変わらない平凡な日常。
この大切さがやっぱり身に沁みたわけでございます。平凡こそ
がやはり幸福でございます。

2 コメント

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Unknown (あゆみ)
2008-07-02 19:56:04
無事で本当になによりです。
よかった。
Unknown (もと743)
2008-07-02 20:51:10
ありがとです。