外出する度に思う・・・・・・・・・
絶えず下を向いて、アスファルトの冷たい感触を確かめるように歩いているのに、どうしても
幸せそうな家族、仲の良さそうなカップルが目についてしまう・・・・・・・
見るまい、或いは視線を遠ざけようとするのだけれど、俯き加減でのろのろと歩いていても、どうしても視界に入ってきてしまうんだ。
そんなとき思うんだ・・・・
「なぜ、お前たちはそんなに幸せそうなんだ?なんでそんなに笑っていられる?俺の、俺の最愛の人はもう居ないんだぞ!それなのになぜお前たちは・・・・・・・」
そう言いながら詰めよって、相手の襟首を掴みながら激昂したら少しは気が晴れるんだろうかと。
いや、家族連れやカップルだけじゃない。
一人で歩いている人にでも、楽しそうな人が居たら、「祥一郎はもう死んだんだぞ!」と言っていきなり殴ってやったらどういう気持ちになるだろう・・・そんなことも想像したりする。
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実際そんなことが出来るわけも無く、それほど自分を壊すほどの勇気もなく・・・
ひたすら俯きながら、そんな幸せそうな人々を横目で、上目遣いでやり過ごすしかないんだ。
いや人間だけじゃないんだ。
道端の歳ふりた野良ネコにさえ、「なんでお前はそんなに長く生きてるんだ!」なんて感情を抱くことも有る。
野良ネコだけじゃない、散歩中の飼い犬にも、公園の鳩にも、スズメ達にも、小うるさいカラスにも、梅の花にも、桜の蕾にも・・・・・・
この世の生きとし生けるもの全てが妬ましく、すべからず滅べばいいのにと思ってしまう・・・・・・
何故なら、私の最愛の、たった一人の最愛の家族伴侶パートナーで有った祥一郎は、もうこの世に居ないから・・・・・・・・・
この世で命を燃やすことは、祥一郎にはもうできないから・・・・・
祥一郎・・・・・・・・
おっちゃんの精神は、心は、こうやってどす黒く邪悪になっていくんだろうか。
それは確かに恐ろしいことではある。
でも、でもね、祥一郎。
そうやって自分が粉々に壊れて行ったとしたら、それはお前への愛がそれほど大きく深かったからなんだろう。
お前がそんなおっちゃんを決して望まないにしても、不器用なおっちゃんはそうすることでお前への愛を表現したい・・・・・・・そうせざるを得ない状況に自分を追い詰めてみたい・・・・・・
そんなことも思うんだ。
それはやっぱり不幸なことなんだろうか・・・・・・・
おっちゃんにとって、お前の死よりも不幸なことなんだろうか・・・・・・・