私はニッポン放送の携帯情報サイトで、毎週その週に起こったことを中心にコラムを書いています。一週間遅れで、その記事を公開しています。世の中の流れが速いので、だいぶずれてしまうこともありますが、ご容赦ください。なお、最新版は携帯電話からニッポン放送のサイトに行ってください(こちらは有料です)。
順調な景気回復は続くのか
IMF(国際通貨基金)は、毎年、春と秋に世界経済見通しを発表しているが、今月19日に今春分の世界経済見通しを発表した。それによると、今年の世界全体の経済成長率見通しは4.9%と、昨年9月発表の4.3%から0.6ポイント上方修正された。これは、先進国の成長が堅調であるうえに、中国、インド、ロシアといった新興国の成長率が非常に高いためだ。また、日本の実質成長率も2.8%と、昨年秋の見通し(2.0%)から大幅に上方修正された。
ただ、IMFは今後世界経済が抱えるリスクとして、原油価格の高騰と長期金利の上昇を指摘し、特に原油価格に関しては、今年半ばまでに1バレル=80ドルを超える可能性があるとの懸念を示した。
実際、4月21日のニューヨーク原油先物市場では、テキサス産軽質油(WTI)の6月渡し価格が、一時、1バレル=75.35ドルとなり、83年の取引開始以来、最高値を更新している。先進国の景気拡大や中国の急速な経済成長という需要拡大要因に加えて、イランの核開発問題やナイジェリアの政情不安などで石油の供給体制にも不安が広がっているからだ。
特に、イランのアフマディネジャド大統領が、4月11日に原発用核燃料にもなる低濃縮ウラン製造に成功したと述べたことで、イラン国内にナタンツの濃縮施設とは別のウラン濃縮施設が存在する可能性が浮上している。これに対して、ライス米国務長官は4月19日の外交問題評議会で、「イランの核兵器開発を阻止するため、政治、経済など様々な手段を講じる」と発言している
アメリカがイランに対して取りうる手段は、①圧力をかけながら対話を進める方法と②軍事攻撃を仕掛ける方法に大別される。もちろん、例えばイラン沿岸に米海軍を展開して経済封鎖を行うということも可能だが、イランは沿岸部でミサイル発射の軍事訓練を行っており、もし米軍が沿岸封鎖をすれば戦争につながってしまうだろう。
昨年、日本は原油の90.2%を中東から輸入した。そのうち、13.8%がイランからの輸入だ。それだけではない。もしアメリカとイランが全面対立すれば、日本はアメリカを取るかイランを取るのかという選択を迫られることになるだろう。日本は大金を投じてアザデガン油田の開発権益を獲得した。だが、もし日本がアメリカにつくことになったら、当然この権益も失うことになってしまうだろう。
問題は、アメリカがイランに攻撃をしかけるようなことがあるかどうかだ。もしそうなれば、原油価格は1バレル=100ドルを超え、世界経済が失速するほどの悪影響がでるだろう。当然、アメリカも巻き込まれるから、イラン攻撃は現実的な政策ではない。しかし、何人かの専門家に話を聞くと、アメリカがイランの核施設を破壊するような攻撃を行う可能性は、「ブッシュ大統領の場合は、否定できない」ということだった。他の大統領なら絶対やらないことでも、ブッシュ大統領はやりかねないのだ。世界経済の命運はブッシュ大統領の気分にかかっていると言っても過言ではないのかもしれない。
そして、IMFが掲げたもう一つの懸念材料は、金利の上昇だ。IMFは、日本の物価見通しについて、今年の消費者物価が0.3%、来年は0.6%上昇と、日本のデフレ終結を予測する一方で、同時に、「IMFスタッフの過去の予測実績を基にすると、今年の消費者物価上昇率がマイナスになる可能性はいまだ3分の1程度あり、デフレから完全に脱却したと結論づけるのは時期尚早。金融政策は当面極めて緩和的な運営が期待される」と、日銀による早期のゼロ金利解除を牽制した。
原油価格が高くなっても、航空運賃や電力料金、プラスティックなどの大企業型製品は値上げが行われているが、トラック運賃、タクシー料金、クリーニング代、公衆浴場料金などの中小企業型の物価は一切上がっていない。また、日銀が4月17日に発表した2005年度の製造業部門別投入・産出物価指数でみても、交易条件指数は前年度比3.8ポイント減の92.4となっていて、下げ幅、指数ともに90年度以降で最低を記録しているのだ。製造業全体としてみても、原油価格の上昇を製品価格にほとんど転嫁できていないことが統計にも表れている。こうした状況で金利引き上げを行えば、中小企業の経営がめちゃくちゃになってしまうのは明かだろう。
ブッシュ大統領と日銀の福井俊彦総裁、この2人が暴走をしないということが、日本と世界の景気が持続する条件になっているのだ。
順調な景気回復は続くのか
IMF(国際通貨基金)は、毎年、春と秋に世界経済見通しを発表しているが、今月19日に今春分の世界経済見通しを発表した。それによると、今年の世界全体の経済成長率見通しは4.9%と、昨年9月発表の4.3%から0.6ポイント上方修正された。これは、先進国の成長が堅調であるうえに、中国、インド、ロシアといった新興国の成長率が非常に高いためだ。また、日本の実質成長率も2.8%と、昨年秋の見通し(2.0%)から大幅に上方修正された。
ただ、IMFは今後世界経済が抱えるリスクとして、原油価格の高騰と長期金利の上昇を指摘し、特に原油価格に関しては、今年半ばまでに1バレル=80ドルを超える可能性があるとの懸念を示した。
実際、4月21日のニューヨーク原油先物市場では、テキサス産軽質油(WTI)の6月渡し価格が、一時、1バレル=75.35ドルとなり、83年の取引開始以来、最高値を更新している。先進国の景気拡大や中国の急速な経済成長という需要拡大要因に加えて、イランの核開発問題やナイジェリアの政情不安などで石油の供給体制にも不安が広がっているからだ。
特に、イランのアフマディネジャド大統領が、4月11日に原発用核燃料にもなる低濃縮ウラン製造に成功したと述べたことで、イラン国内にナタンツの濃縮施設とは別のウラン濃縮施設が存在する可能性が浮上している。これに対して、ライス米国務長官は4月19日の外交問題評議会で、「イランの核兵器開発を阻止するため、政治、経済など様々な手段を講じる」と発言している
アメリカがイランに対して取りうる手段は、①圧力をかけながら対話を進める方法と②軍事攻撃を仕掛ける方法に大別される。もちろん、例えばイラン沿岸に米海軍を展開して経済封鎖を行うということも可能だが、イランは沿岸部でミサイル発射の軍事訓練を行っており、もし米軍が沿岸封鎖をすれば戦争につながってしまうだろう。
昨年、日本は原油の90.2%を中東から輸入した。そのうち、13.8%がイランからの輸入だ。それだけではない。もしアメリカとイランが全面対立すれば、日本はアメリカを取るかイランを取るのかという選択を迫られることになるだろう。日本は大金を投じてアザデガン油田の開発権益を獲得した。だが、もし日本がアメリカにつくことになったら、当然この権益も失うことになってしまうだろう。
問題は、アメリカがイランに攻撃をしかけるようなことがあるかどうかだ。もしそうなれば、原油価格は1バレル=100ドルを超え、世界経済が失速するほどの悪影響がでるだろう。当然、アメリカも巻き込まれるから、イラン攻撃は現実的な政策ではない。しかし、何人かの専門家に話を聞くと、アメリカがイランの核施設を破壊するような攻撃を行う可能性は、「ブッシュ大統領の場合は、否定できない」ということだった。他の大統領なら絶対やらないことでも、ブッシュ大統領はやりかねないのだ。世界経済の命運はブッシュ大統領の気分にかかっていると言っても過言ではないのかもしれない。
そして、IMFが掲げたもう一つの懸念材料は、金利の上昇だ。IMFは、日本の物価見通しについて、今年の消費者物価が0.3%、来年は0.6%上昇と、日本のデフレ終結を予測する一方で、同時に、「IMFスタッフの過去の予測実績を基にすると、今年の消費者物価上昇率がマイナスになる可能性はいまだ3分の1程度あり、デフレから完全に脱却したと結論づけるのは時期尚早。金融政策は当面極めて緩和的な運営が期待される」と、日銀による早期のゼロ金利解除を牽制した。
原油価格が高くなっても、航空運賃や電力料金、プラスティックなどの大企業型製品は値上げが行われているが、トラック運賃、タクシー料金、クリーニング代、公衆浴場料金などの中小企業型の物価は一切上がっていない。また、日銀が4月17日に発表した2005年度の製造業部門別投入・産出物価指数でみても、交易条件指数は前年度比3.8ポイント減の92.4となっていて、下げ幅、指数ともに90年度以降で最低を記録しているのだ。製造業全体としてみても、原油価格の上昇を製品価格にほとんど転嫁できていないことが統計にも表れている。こうした状況で金利引き上げを行えば、中小企業の経営がめちゃくちゃになってしまうのは明かだろう。
ブッシュ大統領と日銀の福井俊彦総裁、この2人が暴走をしないということが、日本と世界の景気が持続する条件になっているのだ。