ゴキ研

ゴキゲン中飛車研究ノート

定跡の基本から最前線まで詳しく紹介。

ゴキゲン中飛車対超速▲3七銀急戦【菅井流の思想】

2012年01月10日 22時54分47秒 | 超速対菅井流
1/8(日)と1/9(月)の二日間にわたり開催された王将戦第1局。

その大盤解説会に両日参加してきた。

そこでプロの解説で得た知識、私自身が考えた変化をここで還元したいと思う。

振り駒の結果、久保利明王将の後手番となりゴキゲン中飛車を採用された。

先手番佐藤康光挑戦者の初手が▲7六歩であり、2手目△3二飛という選択肢もあったと思うが、
そこは相手が佐藤流△4二銀の創始者であり採用し難いだろう。

ところで、王将戦は1、3、5局が静岡県で行われる。

並行して行われる棋王戦の第3局も静岡県開催が決まっている為、第1局の振り駒の結果によっては
静岡開催は全てゴキゲン中飛車となる可能性がある。

そうなれば面白いが、佐藤康光挑戦者が3手目▲6六歩を採用するかに懸かっているだろう。

さて、第1局は佐藤康光挑戦者が超速▲3七銀急戦で対抗した。

ゴキゲン中飛車には様々な超速対策がある中で、
久保利明王将はつい最近登場したばかりの菅井流を選択した。

この選択の背景には、最大12戦(後手番最大7局)に及ぶ王将・棋王W防衛戦と、
間に行われる順位戦3局(後手番2局)を見据えたものだと推測できる。

つまり、大舞台で採用する事により周囲のプロ棋士による採用・研究が進み、
タイトル戦後半にある程度の結論が出る事を目論んで第1局に持ってきたものと考えられるのだ。

希望としては△4四銀型相穴熊を観たかったが、長いシリーズでそのうち採用される事だろう。

個人的には先日、久保利明棋王・王将宛に研究を送ったので、それの採用も期待している。

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初手からの指し手
▲2六歩△3四歩▲7六歩△5四歩▲2五歩△5二飛▲4八銀△5五歩▲6八玉△3三角▲3六歩(基本図)



基本図からの指し手①
△3二銀▲3七銀△4四歩(テーマ図1)

基本図からの指し手②
△6二玉▲3七銀△4四歩(テーマ図2)



菅井流とは、2011.11.15が初登場の最新の超速対策で、
超速出現当初からある銀挟み型(テーマ図1)からの派生である。(テーマ図2)

銀挟み型(テーマ図1)は次に、▲4六銀△4五歩▲同銀△4三銀(A図)を狙いとしている。



菅井流の思想をご理解頂く為に、まずは銀挟み型が何故指されなくなったかを解説しよう。

テーマ図1からの指し手
▲3五歩△同歩▲4六銀(第1図)



テーマ図1では単に▲4六銀ではなく、
▲3五歩△同歩の突き捨てを入れてスピードアップを図る仕掛けがある。

△3五同歩と取らずに△4三銀▲3四歩△同銀▲3八飛(B図)という進行もあり、
実戦例では振り飛車も勝っているが、角道が止まっているので△5六歩の反撃が甘く
居玉で戦いになるのでまとめるのは大変だ。



第1図で振り飛車側から考えられる手は以下の2通りだ。

(1)△4五歩
(2)△3六歩

順に考えて行きたい。

第1図からの指し手①
△4五歩▲3五銀△5六歩▲同歩△8八角成▲同銀(途中図)△5六飛▲4四銀
△4六歩▲6五角△5七角▲7八玉△5二飛▲5八金左(第2図)



△4五歩には3筋を突き捨てた流れから▲3五銀と出る。

△5六歩は▲同歩と取らないと△5七歩成が王手の先手になるのが超速における基本だ。

△5六飛の銀取りには▲4四銀が銀を逃がしつつ△5五角を防いで味が良い。

以下第2図となり、次に▲5三歩からの角取りと、▲2一角成を見せられて居飛車優勢。

角交換となった途中図からは▲4四角の王手香取りを見せられて△6二玉と上がれないのが痛い。

振り飛車は別の手段が必要だ。

第1図からの指し手②
△3六歩▲3八金(第3図)



本譜は2011.2.2 順位戦A級 ▲郷田真隆九段△森内俊之九段戦の進行だ。

△3六歩には▲3八金が好手で、単に▲2六飛では△4五歩▲同銀△5六歩▲同銀△8八角成
▲同銀△4四角(C図)となり振り飛車優勢。
また、▲5五銀には△3七歩成▲同桂△3六歩(D図)で振り飛車優勢。



△3六歩でどうやっても振り飛車が良い様だが、▲3八金が唯一の好手。

まず、△4五歩▲同銀△4三銀(E図)は銀挟みになっていない。

△5六歩の反撃が利けば良いが、▲同歩△同飛▲3四歩(F図)と反撃されてしまう。



第3図から△4三銀▲2七金△5六歩▲同歩△同飛▲3六金という形が手厚く、
先手が指しやすいと認識されている。

これらを踏まえた上で菅井流で同様の進行を辿るとどうなるか見て頂きたい。

テーマ図2からの指し手①
▲3五歩△同歩▲4六銀(第4図)



第4図の進行は第1号局と同一である。

(2011.11.15 順位戦C級2組 ▲長岡裕也五段△菅井竜也五段戦)

ここからの進行に銀挟み型との違いが出る。

第4図からの指し手
△4五歩▲3五銀△5六歩▲同歩△8八角成▲同銀△7二玉(第5図)



△4五歩と反撃するのがここでは勝る。

△3六歩では前述の▲3八金で良くならない。

本譜の△5六歩は次に△5七歩成が王手の先手になるのは前述の通りだ。

△8八角成▲同銀と先手が角を持ったタイミングで△7二玉と寄れるので、
▲4四角がないのがこれまでとの違いだ。

銀挟み型の途中図では△6二玉と出来ないのを今一度確認頂きたい。



第5図からの指し手
▲7八玉△5六飛▲6五角△5七飛成▲2一角成△5五角▲2六飛△3二銀(第6図)



第1号局は▲7八玉としたが、王将戦第1局の様に▲5七玉(テーマ図3)もあるかもしれない。



3筋の歩が切れているので△6五角に▲2六飛と受けやすい意味がある。

次回以降に検討してみたいと思う。

本譜は▲2一角成と桂馬を取って成功の様だが、△5五角(飛車取り)~△3二銀で第6図は馬が死んでいる。

こうして、銀挟み型で痛い目に遭った▲3五歩~▲4六銀には対抗する目途が立った。

もう1つ、テーマ図2から単に▲4六銀はどうか調べて行こう。

テーマ図2からの指し手②
▲4六銀△4五歩▲同銀
△3二金(テーマ図4)または△3二銀(テーマ図5)



テーマ図2から単に▲4六銀には、△4五歩▲同銀として
△3二金(テーマ図4)または△3二銀(テーマ図5)と後から選択する事が出来る。

つまり、参考図の様に△3二金で銀挟みを狙う場合は▲3五歩△同歩▲4六銀と変化が生じる。



参考図から単に▲4六銀とした変化に限定している意味があるのだ。

ただし、この形は次に△4三銀(金)として銀挟みなので▲3四銀(G図)と攻められる変化を覚悟しなければならない。



この変化は3歩損でゆっくりとした展開にはできないので、振り飛車を持つ側は『不退転の覚悟』が必要だ。

石田流の鈴木流急戦や久保流急戦などの急戦を得意とする人に向いている作戦と言える。

以上を要約すると、

(1)角交換したタイミングで△7二玉とできるので、安定した玉型で戦える。
(2)△4五歩▲同銀と呼び込んだ時に、△3二金と△3二銀を選択できるので手広い。

この2点が銀挟み型にはない菅井流の思想である。

これにて基礎変化は終了とし、
次回以降に詳しい変化を調べて行きたいと思う。

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