ゴキ研

ゴキゲン中飛車研究ノート

定跡の基本から最前線まで詳しく紹介。

ゴキゲン中飛車vs丸山ワクチン【向かい飛車】

2010年05月30日 23時12分15秒 | 丸山ワクチン
有吉道夫九段が敗れて引退してしまいましたね。

有吉道夫九段が引退(日本将棋連盟)

プロ生活55年とは途轍もない数字で尊敬に値します。^-^

私達サラリーマンに置き換えた場合、中卒15歳で働いて定年60歳まで勤続しても
45年ですからね。^^;

20台前半の私には想像もつかない世界です。

本当にお疲れ様でした。^-^

さて、ゴキゲン中飛車関係の話題と言えば、王位戦挑決リーグの赤組で広瀬章人五段が優勝!
戸辺誠六段が白組のプレーオフに進出しました。^-^

どちらも私と同学年の棋士なのでうれしいばかりです。^^

戦形は共に先手中飛車で、高崎一生五段もゴキゲン中飛車vs▲3七銀急戦超速攻に勝っています。

6/1(火)はプレーオフが棋譜中継がされるようです。

最終戦の棋譜も観れるので、6/1(火)は以下の中継サイトを観て応援しましょう。^-^

王位戦中継

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さて、前回に引き続き対丸山ワクチンです。



丸山ワクチンでは、テーマ図28が最も一般的な局面で、ここから後手は向かい飛車への転換や、
真部流と呼ばれる片銀冠を急ぐ指し方があります。

最近は、先手の研究も進み向かい飛車からの逆襲も上手く行かない事が増えています。

まずは、向かい飛車に対する先手の工夫を見て行きたいと思います。

テーマ図28からの指し手①
▲4八銀△7二玉▲4六歩△8二玉▲4七銀△7二銀▲6八玉△3三銀▲7九玉△2二飛
▲5八金右(第1図)



◇振り飛車の速攻策

まず、テーマ図28から5筋の交換を狙えたらいいのですが、▲6五角問題があるので
△7二玉と寄るまで5筋は突けません。

その間に▲4八銀~▲4六歩が間に合って、△5五歩には▲4七銀で受かってしまいます。

5五の地点には、将来△5五銀と出る含みを残したいので、△5五歩と突く事はオススメしません。

後手も△3三銀はすぐに上がる必要はなく、▲2四歩には△同歩▲同飛△3三角の反撃があるのです。

極端な話、先手が▲6六歩や▲7七桂で角筋を止めるまで上がらなくても良い訳です。

第1図までの進行は、今まで当然の様に指されて来たもので、今でも指されています。

最近先手にも新たな工夫がされているのですが、それは後ほど解説します。

向かい飛車に振った後の構想は、①逆棒銀と、②4四銀・3三桂型で△2五桂ポン
というパターンに分類されます。

まずは①逆棒銀を見て行きます。

第1図からの指し手①
△2四歩▲同歩△同銀▲7七角△3三角▲同角成△同桂▲3六歩△2五銀▲3五歩(第2図)




◇逆棒銀には▲3六歩~▲3五歩

逆棒銀が成功するのには条件があり、▲6六歩と突いている事です。

本譜のように▲7七角△3三角▲同角成が細かいポイントで、▲3六歩に△2五歩(A図)以外は
▲3五歩で桂頭を狙われて激しくなります。



しかし、これを打ってしまうと銀が重くなってしまうのが悩みの種で打ち辛いでしょう。

第2図からは、

①△2六銀は▲1五角!△2七銀不成▲3三角成△2六飛▲4八飛
△5二金左▲1五馬△2一飛▲2五歩(B図)

②△2六歩は▲3七桂△1六銀!▲同歩△2七歩成▲2九飛△2八と▲5九飛△1九と
▲3四歩△2八飛成▲3三歩成△5二金左▲4五桂(C図)

③△2七歩は▲同飛△2六銀▲2八飛△2七銀不成▲4八飛△3六銀成▲同銀△2九飛成
▲3四歩△2四桂▲4七角!△1九龍▲3三歩成△3六桂▲同角△5二金左▲5四角(D図)

が研究手順です。



どれも後手の反動がキツイと思います。

先手の研究が進んだ現在では、逆棒銀は条件が良くないと成立しにくい仕掛けだと思います。

次は②4四銀・3三桂型です。

第1図からの指し手②
△4四銀▲6六歩△3三桂▲7七銀△8四歩▲3六歩△7四歩▲5六角(途中図)△5二金左
▲3四角△2一飛▲7八角△6四角▲2六飛△7三桂▲1六歩△8三銀▲1五歩△7二金
▲1四歩△同歩▲1二歩△同香▲2四歩(第3図)



◇自陣角からの端攻めが脅威

この進行は、2010.2.18に行われた銀河戦▲豊島将之五段vs△北島忠雄六段のものです。

▲7七銀が好手で、自陣角から桂頭や端攻めを狙っているのです。

ここで慌ててすぐに△2五桂ポンは、▲4五歩△3三銀▲2五飛△2四歩▲2八飛△4二銀
▲3六銀(E図)で受かってしまいます。



細かいところですが、▲3六歩を保留してきたのがポイントで、▲4五歩に△5五角を消しています。

△2五桂ポンは2一飛・4二金型でないとまず不可能です。

ちなみに、△2五桂ポンの成否は変幻自在!! 窪田流3三角戦法が詳しく、
第1章のP10~62のほとんどがこの仕掛けについて述べられています。



本譜は、▲5六角の自陣角から3四歩を掠め取り、その一歩を利用して2筋を破っています。

実戦は、第3図から最後まで2筋は膠着状態のまま終局しましたが、先手が勝っています。

向かい飛車の攻防については、アマの知らない最新定跡が今のところ最も詳しい著書です。



興味のある方は参考にしてみて下さい。^-^

と言うわけで、後手の向かい飛車からの逆襲は難しくなっているのが現状です。

特に▲豊島将之五段vs△北島忠雄六段の進行は、我々アマチュアには後手を持って勝つのは
容易ではありません。

しかし、ゴキゲン側に万策が尽きている訳ではありません。

次に紹介する真部流は、シンプルでとても使いやすくバランスが良い。

私は真部流こそが丸山ワクチンに対する本筋だと考えています。

しかし、今回も書いていたら載せたい事が増えて長くなってしまいました。^^;

真部流の解説は次回に載せますので、ご期待下さい。^^

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ゴキゲン中飛車vs丸山ワクチン【多彩な後手の選択肢】

2010年05月23日 19時14分13秒 | 丸山ワクチン
今日のNHK杯で有吉道夫九段が敗れましたね。

火の玉流で知られる有吉九段ですが、本局は相矢倉から一方的に攻められる展開になり
その攻めは影を潜めてしまいました。

しかし、引退前にその勇姿を目に焼き付ける事が出来て良かったです。^-^

勝ち残っている棋戦は、棋王戦予選を残すのみとなりました。

しかも、明日なんですね。^^;

相手は振り飛車党の矢倉規広六段。

最後の棋戦となっても「矢倉」に縁があるのですね。^^

有吉九段の誕生日は7月なので、もう少し勝ち残って現役最高齢記録を伸ばして貰いたいです。

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さて、丸山ワクチンを取り上げてほしいというご要望がありましたので、
今回と次回の2回に分けて記事にしたいと思います。

まずは、丸山ワクチンと言っても歴史がありますし、後手側にも個性豊かな対策が多くあります。

その中には皆様に知られずに埋もれているものもあると思います。

今回は、丸山ワクチンの発展の歴史と、後手側の対策を広く扱っていこうと思います。

「知らなかったけど、これは自分の棋風に合いそう。」と言うのを見付ける手助けになれば幸いです。^^


初手からの指し手
▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩▲2五歩△5二飛▲2二角成△同銀(第1図)
▲9六歩(第2図)



◇丸山ワクチン開発の歴史

第1図の角交換が丸山忠久九段が流行させた指し方で、当時注目されていた新薬の名前と掛けて
丸山ワクチンと命名されたとか。
(この当時、私は将棋から離れていたので詳しくは知りません^^;)

出始めの頃は、▲8八銀~▲7七銀~▲6六銀として、5筋の交換を逆用して
中央に拠点を築く狙いだったようです。

しかし、今では当たり前となっている向かい飛車への転換が有効で、
位を相手にされないと苦しくなりました。

そこで、第1図では▲7八銀から美濃~銀冠へと組むのが主流になりました。

これまたしかし、▲6五角問題で無理と見られていた△5五歩と突く手が成立していたのです。

第1図以下、▲7八銀△5五歩▲6五角△3二金▲8三角成△8八角(A図)



この為、居飛車党はまたも頭を悩ますのですが、これを解決したのがかの有名な
佐藤(康)新手の▲9六歩(第2図)でした。

第2図からの指し手①
△9四歩▲7八銀(第3図)



◇深謀遠慮

端歩の交換が入ると何が変わるのか。

そう、先程のA図の変化に進んだときに▲9七香!(B図)と香車を逃げる事が出来て
評価が180度入れ替わってしまうのです。



端歩の交換を入れると、一度▲6五角問題を消してからでないと△5五歩が突けない
というのが常識となりました。

しかし、ちょっと待って下さい!!

▲9六歩と突かれた第2図で端歩を受けない指し方が2通り存在します。

つまり、序盤早々の▲9六歩をいきなり緩手にしてしまえという構想です。

順番に紹介します。

第2図からの指し手②
△3二金(第4図)



◇近藤流

これを最初に見たのは昨年度のNHK杯▲村田顕弘四段vs△近藤正和六段でした。

この時の進行は、移転前のブログで書いているので以下を参考にして下さい。

NHK杯 ▲村田四段▽近藤六段【観戦記】

△3二金に端を詰めても、△7二銀(▲8二角は△5五角~△7四歩!)▲6八玉△7四歩
▲4八銀△5五歩(C図)となり、矢倉中飛車の理想形(D図)の様に組めば作戦勝ちです。



私の研究では、先手の最善は▲7八金(E図)で、こうされると5筋の交換が難しくなります。



左側・右側どちらに囲うにしても、交換したら△5一飛と形良く引きたいですよね。

しかし、一度▲6五角問題を防がねばならないのがネックになります。

E図以下、△4一玉▲4八銀△5五歩▲6九玉(F図)が一例ですが、最後の▲6九玉が
王手になるのを防ぐ好手で▲6五角問題をチラつかせて5筋の交換を防いでいます。



こうなっては、矢倉中飛車の理想形に組めません。

こうした複線があり、2009/9/1のC級1組順位戦 ▲西川慶二七段vs△近藤正和六段では、
E図から△9四歩▲4八銀△6二玉▲4六歩(G図)と進みました。



5筋が交換できていませんが、▲7八金型の将棋で先手から角を交換してくれたと思えば
得した気分にはなりませんか?

居飛車も指せる方には、積極的で面白い作戦だと思います。^-^

第2図からの指し手③
△3三銀▲6八玉△5五角▲8八角△7四歩▲4八銀△3二金▲5八金右△8二角(第5図)



◇星野流

この構想は、奨励会員の星野良生三段が一昨年の新人王戦第2局という大舞台で見せたもの。

第5図は、通常の相矢倉よりも後手が大分得をしているのがわかります。

角の睨みで▲3六歩が突けない為、飛銀桂が前に進めません。

これもやはり居飛車が指せる人向けの構想ですが、優秀だと思います。

では、次からは端歩を受けた第3図に移ります。

第3図からの指し手①
△7二銀▲4八銀△5五歩▲6八玉△6二玉▲6六歩△5六歩▲同歩△同飛▲6七銀
△5一飛▲7八玉△7一玉▲2四歩△同歩▲同飛(第6図)



◇誰流??

△7二銀の構想は、誰が最初に指したかわかりませんが、私が最初に見たのは谷川浩司九段。

本譜の進行は、第21期竜王戦1組 ▲中原誠十六世名人vs△佐藤康光二冠(当時)。

本譜の進行を順を追って解説します。

まず、△7二銀に▲8二角は△5五角▲7七銀△7四歩▲5五角成△同歩▲8二角△7三角
▲同角成△同銀(H図)で先手が手損しただけで終わります。



△6二玉に▲8二角も△8八角と打ち返して後手の馬の方が位置が良い。

▲6六歩は次に▲6七銀があるので、ここで5筋の交換を入れます。

▲7八玉は▲2四歩とした時に王手飛車にならないように受けたもの。

対して、△3三銀なら今度こそ▲8二角で、先手にだけ馬が出来てまずい。

したがって、△7一玉と受けて、先手も2筋を交換して双方不満のない戦いとなります。

しかし、私としては△7二銀に▲6六歩と突かれたら、△7四歩(I図)と受けなければならず、
どうも将来傷になりそうであまり面白いとは思えません。



第3図からの指し手②
△7二金▲6六歩△6一玉▲4八銀△3三銀▲6八玉△6二銀▲7九玉△7一玉▲4六歩
△8二玉▲3六歩△2二飛(第7図)



◇遠山流

△7二金は遠山流と呼ばれる指し方で、遠山雄亮四段考案の一手。

直接的な意味は、▲6五角問題を受けているという訳で、▲4八銀~▲4六歩~▲4七銀は
△5五歩~△5六歩には間に合わないという事です。

これを受けるには、▲6六歩が最善で△5五歩と来たら▲6七銀と受ければ良い。

後手も交換できない以上、△5五歩と突いても負担になるので止めましょう。

ここはおとなしく金美濃囲いに玉を納めるのが先決。

先手もゆっくり囲いたいところですが、△2二飛と向かい飛車からの逆棒銀が早く
あまり固くはできません。

専門的な話になりますが、向かい飛車からの逆棒銀は先手の▲6六歩を直接咎めています。

と言うのも、例えばJ図での逆棒銀は、▲7七角△3三角▲同角成△同桂▲3五歩(K図)
の反撃が筋で、△1二角には▲2三歩で受けになりません。



つまり、先手は▲6六歩と突く以上、向かい飛車から逆棒銀は警戒せねばなりません。

この遠山流は、本家遠山四段が遠山流中飛車持久戦ガイドにて解説しているので、
こちらを参考にして下さい。^-^




第3図からの指し手③
△6二玉(テーマ図28)



◇王道の進行

△6二玉と上がったテーマ図28が最も多い進行で、王道と言えるでしょう。

こちらは次回に詳しく取り上げていきますのでお楽しみに。^-^

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