ゴキ研

ゴキゲン中飛車研究ノート

定跡の基本から最前線まで詳しく紹介。

ゴキゲン中飛車の急所と超急戦【最新型の実戦】

2011年12月23日 01時44分50秒 | ▲5八金右超急戦
今年も終わろうかと言う師走の真っ只中だが、唐突にゴキゲン中飛車関連の興味深い書籍が2冊も発売された。


久保利明の最強振り飛車戦略―角交換振り飛車の久保システム

まず1冊目は、来月の王将戦を皮切りに棋王戦とのW防衛戦を控える久保利明二冠の書籍。

先手、後手ゴキゲン中飛車と、先手石田流、その他角交換振り飛車として2手目△3二飛と先手向かい飛車を扱っている。

まだ今日買ったばかりだが、出版社の木本書店の経営理念である「ベストセラーよりロングセラー」に沿ってか、
今後何年も普遍的な常識として通用するであろう基本的な変化に終始している様に感じた。

石田流1つに絞るのであれば、久保の石田流と大差ない内容であるので、こちらを買った方が良いかもしれない。

しかし、これから石田流、ゴキゲン中飛車の現代振り飛車を中心にスタイルチェンジを考えている人にはとても良い教材であると私は考える。

基礎をしっかりと学べ、棋界最強の振り飛車の名手の実戦譜で感覚を養えるからだ。


            ゴキゲン中飛車の急所

ゴキゲン中飛車の急所は、後手ゴキゲン中飛車に対する

(1)▲5八金右超急戦
(2)超速
(3)その他(▲7八金型、居飛車穴熊、丸山ワクチン)

を扱った書籍。

どの章も重ねられてきた工夫を古い順に紹介されており、
「どうして現在の定跡はこうなっているのか」、「なぜ指されなくなったのか」
がわかる様に構成されている。

ゴキゲン中飛車の歴史を感じる事が出来る一冊だ。

そう遠くない過去に速攻!ゴキゲン中飛車破りという書籍も販売されているが、内容は重複する部分があるものの、
超急戦、超速ともにゴキゲン中飛車の急所が詳しい。


            速攻!ゴキゲン中飛車破り

遠山流中飛車急戦ガイドの超急戦部分と速攻!ゴキゲン中飛車破りの超速部分を合わせてもまだお釣りが来る程の出来だ。

超速においてゴキゲン中飛車の急所が勝る理由として、現在主流となっている△4四銀型相穴熊を解説している点を挙げたい。

正直、まだ実戦例も多くない▲7七角~▲6八金寄が紹介されているとは思わなかった。

また、当ブログで超力戦として紹介した変化も見事に先手有利の順を示してくれている。

文句ナシでゴキ研推奨の一冊だ。

ただし、△4四銀型における先手の急戦策は扱われていないのでゴキゲン中飛車を使う人には注意が必要だ。

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さて、11月の事になるが、私の実戦において超急戦の最新型を指す機会に恵まれた。

対局場所は将棋の国際対局サイト81dojoで、月間の成績上位者に与えられるBig-4の称号を得る強豪が相手だ。

第1図はゴキゲン中飛車の急所でも紹介されていた局面で、ここから▲3六歩(第2図)と指された。



書籍によると、奨励会の三段リーグ最終日に指されていたと言うから驚いた。

この手は▲6三桂を△同角成と取れない様に角筋を遮断している。

しかし、△同角成は先手玉への脅威が緩和されるのでこの2手の交換は後手の損になる。

書籍では第2図以下、△6六飛▲7九玉△8七銀成(A図)が一例として示され難解とされている。



私は少考で別の手段を選択した。

第2図からの指し手
△6六飛▲7九玉△6八歩(第3図)



実はこの△6八歩は速攻!ゴキゲン中飛車破りで紹介されている手なのだ。

その後の進行は考えていなかったので、ここからが本当の闘いだ。

第3図からの指し手
▲5九金△6二金!(第4図)



第3図では本譜の▲5九金の他に(1)▲6三桂、(2)▲5三角、(3)▲7八金が考えられる。

(1)▲6三桂は、△同飛▲同成香に△6九歩成(B図)と、ボロっと金が取れるのが大きい。
以下、▲同玉△3六角成(C図)と成る手が、成香に当てつつ、△4七馬を見せつつ、持ち歩二枚を持てば
▲7四香と▲5三角に歩合いが利く一石三鳥の好手で後手相当だろう。



(2)▲5三角には△6二金打(D図)とガッチリ受ける。
▲同成香△同金▲3一角成なら△6九歩成▲8八玉△6八飛成(E図)以下、送りの手筋で詰む。



(3)▲7八金なら△6九歩成▲8八玉△6八と(F図)で手順にと金で攻める事が出来る。
以下、▲6三桂くらいだが、△同飛▲同成香△7八と▲同玉△8六桂▲同歩△8七金▲6九玉
△6八歩▲同玉△6七金(G図)で一枚も駒が余らずに詰む。



従って、本譜の▲5九金は最善だろう。

ノータイムで応じたあたり、研究があったと容易に想像できる。

しかし、5分(310秒)の考慮で捻り出した△6二金が強烈な受け。

後手の持ち駒が金香歩であれば先手玉に△7八金▲同玉△6七飛成▲7九玉△7八歩▲8八玉
△8七龍▲9九玉△9八香の詰みが生じるので、香車はわたせない。

しかし、ここで後手を引く訳には行かないので、先手はここで一気に攻め切るしかない。

第4図からの指し手
▲7四香△7三金▲同香不成△8二玉▲7二香成△同玉▲7四香△6一玉▲4三角△5二香
▲5三桂△6二玉▲4一桂成△7二金(投了図)



▲7四香と繋いで先ずは後手の応手を問う。

持ち駒が金と歩では先手玉に迫れないので△7三金▲同香不成△8二玉。

ここで▲7二香成△同玉▲7四香と香を一段下げる手筋で先手は迫ってきた。

△8二玉は▲5五角の王手飛車で飛車を抜かれて大逆転してしまう。

△6一玉▲4三角には△5二香と、先程の成捨てで得た香で合駒が出来て
後手玉の不詰めがはっきりした。

最新型で強豪を破ったと言う事で私自身とても印象に残る一局であるとともに、
超急戦最新型の後手有利の変化が示せたのではないかと思う。

【参考棋譜】

#KIF version=2.0 encoding=UTF-8
開始日時:2011/12/10
場所:81-Dojo (ver.2011/12/20)
手合割:平手
先手:
後手:mus_musculus
手数----指手---------消費時間--
1 2六歩(27) ( 0:2/)
2 3四歩(33) ( 0:2/)
3 7六歩(77) ( 0:1/)
4 5四歩(53) ( 0:1/)
5 2五歩(26) ( 0:1/)
6 5二飛(82) ( 0:1/)
7 5八金(49) ( 0:1/)
8 5五歩(54) ( 0:2/)
9 2四歩(25) ( 0:1/)
10 同 歩(23) ( 0:1/)
11 同 飛(28) ( 0:1/)
12 5六歩(55) ( 0:1/)
13 同 歩(57) ( 0:1/)
14 8八角成(22) ( 0:1/)
15 同 銀(79) ( 0:1/)
16 3三角打 ( 0:1/)
17 2一飛成(24) ( 0:1/)
18 8八角成(33) ( 0:2/)
19 5五桂打 ( 0:1/)
20 6二玉(51) ( 0:1/)
21 1一龍(21) ( 0:1/)
22 9九馬(88) ( 0:24/)
23 3三角打 ( 0:5/)
24 4四銀打 ( 0:2/)
25 同 角成(33) ( 0:1/)
26 同 歩(43) ( 0:1/)
27 6六香打 ( 0:1/)
28 7二銀(71) ( 0:2/)
29 8二銀打 ( 0:2/)
30 2七角打 ( 0:1/)
31 9一銀成(82) ( 0:1/)
32 5三香打 ( 0:1/)
33 8一成銀(91) ( 0:1/)
34 5五香(53) ( 0:1/)
35 同 歩(56) ( 0:1/)
36 8一銀(72) ( 0:1/)
37 6五香打 ( 0:1/)
38 7一玉(62) ( 0:1/)
39 6三香成(65) ( 0:2/)
40 5五飛(52) ( 0:3/)
41 7三成香(63) ( 0:1/)
42 6六馬(99) ( 0:34/)
43 同 歩(67) ( 0:2/)
44 5七歩打 ( 0:5/)
45 6七金(58) ( 0:1/)
46 5六香打 ( 0:7/)
47 同 金(67) ( 0:1/)
48 同 飛(55) ( 0:4/)
49 6八玉(59) ( 0:1/)
50 7五桂打 ( 0:59/)
51 同 歩(76) ( 0:2/)
52 7六銀打 ( 0:3/)
53 3六歩(37) ( 0:3/)
54 6六飛(56) ( 0:9/)
55 7九玉(68) ( 0:2/)
56 6八歩打 ( 0:9/)
57 5九金(69) ( 0:1/)
58 6二金(61) ( 5:10/)
59 7四香打 ( 3:47/)
60 7三金(62) ( 0:48/)
61 同 香(74) ( 0:6/)
62 8二玉(71) ( 1:31/)
63 7二香成(73) ( 6:11/)
64 同 玉(82) ( 1:10/)
65 7四香打 ( 0:3/)
66 6一玉(72) ( 1:56/)
67 4三角打 ( 0:16/)
68 5二香打 ( 0:32/)
69 5三桂打 ( 0:39/)
70 6二玉(61) ( 0:10/)
71 4一桂成(53) ( 0:19/)
72 7八金打 ( 0:8/)
73 投了 ( 0:11/)

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3 コメント

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質問 (774)
2011-12-24 11:10:12
71手目▲7六角成はないですか?
返信する
Unknown ()
2011-12-24 14:22:58
ゴキ中の急所は、超速対△3二銀型における郷田流に触れられていなかったのがちょっと残念でした。それでも十分すぎるくらい内容の厚い本でしたが。
返信する
Unknown (mus_musculus)
2011-12-24 23:01:26
▲7六角成はあるでしょうね。
私も実戦で考えましたが、以下、△同飛▲7七銀△4五角
くらいで十分でしょう。

豆さん、コメントありがとうございます。
郷田流が先手の最善で△7二玉・△3二銀型は苦しいですね。
詳しく知りたい場合は将棋世界11,12月号の久保さんの講座を読むと良いでしょう。
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