ゴキ研

ゴキゲン中飛車研究ノート

定跡の基本から最前線まで詳しく紹介。

ゴキゲン中飛車▲3七銀急戦【郷田流vs△4四銀型・美濃囲い】

2010年02月20日 22時02分20秒 | ▲3七銀急戦(旧型)
随分、久し振りの更新になりますね。^^;

実は引越しをした為、今はインターネットが使えない状態です。

今日はインターネットカフェで更新しています。^^

私がインターネットを使っていない間に、
棋界ではゴキゲン中飛車が猛威を振るっていますね。^-^

戸辺誠さんがB級2組への昇級を決め、同時に新六段に。^-^
同い年の棋士なので、大変うれしく思います。^^

そして、女流では里見香奈倉敷藤花がストレートで女流名人を奪取。
久保棋王も、A級への昇級を決め、王将戦でもあと一勝で奪取と迫っています。

この3人は、先手では石田流、後手ではゴキゲン中飛車を主軸にしているのが共通していますね。
これが、現代の振り飛車党のスタンダードと言えるのかもしれません。

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さて、前回の▲3七銀急戦対△4四銀型の記事に関して美濃囲いではダメかというご質問を頂きました。

今回はその疑問にお答えすべく、美濃囲いでの戦いを取り上げたいと思います。

今週の週間将棋に載っていた実戦例が教材として適していたので、それを用いたいと思います。

第18期銀河戦▲中村太地四段vs△遠山雄亮四段です。

テーマ図は後手が美濃囲いに組んだところ。

前回の第1図から端歩の突き合いを消して、△6二銀を△7二銀にしたものです。

銀が上がる位置がひとつ違うとどの様に変わるのか注目頂ければと思います。



テーマ図からの指し手
▲3七桂△5一飛(途中図)▲5八金右△9四歩▲9六歩△8四歩(第1図)



◇銀冠を目指す

▲3七桂と跳ねて先手は攻撃準備完了。
いつでも▲4五桂や▲4五銀の仕掛けを敢行できる体勢です。

▲3七桂に△5一飛はワンセットと記憶して下さい。

例えば、先に△3二金と上がれば▲4五銀△同銀▲同桂に対して、

(a)△2二角▲2四歩△同歩▲4一銀(A図)
(b)△5一角▲5三銀(B図)でどちらも必敗級です。



しかし、これが△6二銀型(C図)であった場合は、

C図から△5一角▲4一銀△4二飛▲3二銀成△同飛▲5五銀(D図)で、

劣勢ながらも先に△3二金と上がった罪は軽く済みます。



▲5八金右では▲2四歩(E図)の仕掛けも考えられます。



これは△同歩と取れません。
つまり、▲4五銀△同銀▲同桂不成△4二角▲5三銀(F図)といきなり打ち込む手が成立するからです。

以下、△同角▲同桂不成△同飛▲2四飛(G図)と突破されてしまいます。



E図では△2四同角と取るしかないのですが、▲5五銀左△同銀▲同角(H図)で先手好調です。

以下、△同飛▲同銀△5七角成▲6六銀△4七馬▲4八銀△3六馬▲2三飛成(I図)が一例。



この仕掛けは、△6二銀型であれば▲5三銀の打ち込みが無い為不成立です。

まずは、この桂跳ねから▲5三銀を気にしなくて良いのが△6二銀型の第1の長所です。

先手も仕掛けを見送ったので、後手は片銀冠への組み替えを狙います。

無事に片銀冠に組めれば良いのですが…。

第1図からの指し手
▲1六歩△1四歩▲2九飛△3二金▲6八金上△1二香(第2図)



◇離れ駒が出来て危険

第1図から第2図に至る手順のどこにおいても、先手はすぐに仕掛け狙えます。

その為、離れ駒のできる△8三銀は指しにくいのです。

△1四歩のところで△8三銀は前述の▲2四歩の仕掛けがあります。

これは▲5八金右が入って△5七角成を消していて、より万全の仕掛けになります。

先手は▲2九飛で第2戦備体制完了です。

例えば△8三銀には▲4五桂と跳躍し、

(c)△4二角▲5五銀左△同銀▲同角(J図)の仕掛けが脅威ですし、
(d)△2二角▲2四歩△同歩▲同飛△3二金▲2三歩△1三角▲2九飛(K図)で、

次の▲5五銀左の仕掛けがあって支えきれません。



また、△1二香に替えて△8三銀でも、

▲4五桂△2二角▲2四歩△同歩▲同飛

(e)△2三歩(▲2三歩の防ぎ)▲3四飛△4二金▲2四歩△同歩▲同飛△3二金▲2三歩(L図)
で1歩損して(c)の仕掛けに合流してしまいます。

(f)△3三桂の受けは本譜の進行に合流するのでそちらで解説します。



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【番外編】

後手はカウンター狙いでひたすら手待ちに徹するのですが、先手も手待ちに付き合うのも有力手段です。

第2図の後手はこれ以上駒を動かしようがありません。

例えば、▲1八香の手待ちに

(i)△1三香は▲4五銀△同銀▲同桂△1一角▲2四歩△同歩▲1二銀△4四角▲2四飛(M図)
(ii)△6四歩は勿論▲7五銀
(iii)△4二金は▲4五銀△同銀▲同桂△1一角▲2四歩△同歩▲同飛△3二金▲2三銀
ただ、(iv)△9二玉の手待ちは有力かもしれません。

これは、ひたすら△9二玉~△8二玉~…を繰り返して、千日手を狙う構想。

先手が打開するなら▲4五桂が考えられる仕掛け。

以下、△1一角▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲3四飛△4二金▲2四歩△3三桂▲2三歩成
△4五銀▲2四飛△5四飛▲同飛△同銀▲1二と△6四桂▲7七銀△2八飛▲1一と
△1八飛成▲1二飛△5二金寄(N図)が一例です。



角桂交換の駒損でも、自玉は鉄壁で△7四香の攻めもあって、
先手は壁角がほぐし様の無い格好で後手が指せるでしょう。

これなら美濃囲いの顔も立つでしょう。

この△9二玉~△8二玉の手待ちはちょっとした発見かもしれません。^-^

第2図を金美濃囲いにしたO図の場合ですが、これは展開がガラリと変わります。



▲1八香に対して

(v)△6四歩が木村美濃への発展を狙った一着で、それでも先手が手待ちを繰り返す場合、
▲6九金△6三銀▲6八金上△5四銀(P図)と力強く繰り出せば、先手は仕掛けの糸口を失います。



これは、片美濃囲いと金美濃囲いの大きな差でしょう。

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第2図からの指し手
▲4五桂△2二角▲2四歩△同歩▲同飛△3三桂▲同桂成△同角▲2九飛△2三歩▲3五歩△同歩▲3九飛(第3図)



◇先手、快調な攻め

▲4五桂の仕掛けに本譜は△2二角と引きました。

▲2四歩△同歩▲同飛は当然で、ここで△2三歩は前述の(e)の展開になるでしょう。

本譜は、先程説明を省略した(f)△3三桂の反発。

以下、▲同桂成△同角▲2九飛に△2三歩は、▲2四桂を防いだものでしょう。

しかし、▲3五歩~▲3九飛で先手の仕掛けが受かりません。

△2二角に替えて△1一角なら番外編(iv)△9二玉の変化と同じ様な進行となってこれも指せると思います。

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【考察】

≪片美濃囲いと金美濃囲いを比較した結論≫

・駒組が飽和状態になってから仕掛けられた場合、後の変化にそれほど差は認められません。
片美濃囲いは左金を寄せやすいですし、金美濃囲いは端攻めに耐久性があるので一長一短。

・E図~F図に現れた▲5三銀の打ち込みがあるのが片美濃囲いの難点。
この変化に自身があれば問題ないが、金美濃囲い(早囲い)ならこの打ち込みが無いので
無難に駒組ができる。

・相手がひたすら手待ちに徹してきた場合、片美濃囲いでは△9二玉~△8二玉の
千日手狙い以外有力な手が無いのに対し、金美濃囲いは△6四歩~△6三銀~△5四銀と
積極的に打開できる。

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以上が、美濃囲いにおける戦いの一例です。

参考になれば幸いです。^-^

そういえば、コメント欄を承認制にしました。
不愉快な書き込みの対策ですのでご了承下さい。


【参考棋譜】

先手:中村太地四段
後手:遠山雄亮四段

▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △5四歩 ▲2五歩 △5二飛
▲4八銀 △5五歩 ▲6八玉 △3三角 ▲7八玉 △6二玉
▲6八銀 △7二玉 ▲3六歩 △4二銀 ▲3七銀 △5三銀
▲4六銀 △4四銀 ▲7七銀 △8二玉 ▲6六銀 △7二銀
▲3七桂 △5一飛 ▲5八金右 △9四歩 ▲9六歩 △8四歩
▲1六歩 △1四歩 ▲2九飛 △3二金 ▲6八金上 △1二香
▲4五桂 △2二角 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △3三桂
▲同桂成 △同 角 ▲2九飛 △2三歩 ▲3五歩 △同 歩
▲3九飛 △4二金 ▲3四歩 △2四角 ▲5五銀左 △6四桂
▲4四銀 △同 歩 ▲同 角 △3六歩 ▲同 飛 △7六桂
▲6九金 △4五歩 ▲3五銀 △5六歩 ▲同 歩 △4三金
▲2二角成 △3五角 ▲同 飛 △5六飛 ▲5七歩 △2六飛
▲7七銀 △3三歩 ▲4五飛 △2九飛成 ▲4三飛成 △8八銀
▲5九桂 △7七銀成 ▲同 玉 △4九銀 ▲4八金 △3八銀成
▲5八金寄 △4九銀 ▲4二龍 △5八銀不成▲同 金 △4八成銀
▲7六玉 △5二金打 ▲3一龍 △5八成銀 ▲4四角 △5三金打
▲5五角 △6四歩 ▲7五銀 △5九龍 ▲8四銀 △5一桂
▲7五桂 △5四金 ▲8三銀打 △7一玉 ▲8二金 △6二玉
▲7二銀成 △同 金 ▲同 金 △同 玉 ▲8三銀不成△6二玉
▲7二金 △5三玉 ▲3三龍
まで117手で先手の勝ち


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ゴキゲン中飛車▲3七銀急戦【郷田流vs△4四銀型】

2010年02月01日 22時35分14秒 | ▲3七銀急戦(旧型)
トランスポーター3 アンリミテッドをレンタルして観ました。^-^

Amazonのカスタマーレビューでは賛否両論の様ですが、私は楽しめました。^-^

車に同乗するラリった女にはイラっと来ましたが、フランクが敵に囲まれて
車で湖に飛び込むシーンがとても良かった。

どうやって脱出するのかと観ていたら、そんな方法が!!と驚きました。

ジェイソン・ステイサム演じるフランクは危機的な状況でも、
いつでもアメリカンジョークを飛ばしてクールでカッコいいです。^-^

私にもそんな余裕が欲しいものです。

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さて、2連続で▲5八金右超急戦を解説しましたがどうでしたか?

今回はコメントが頂けなかったのですが、興味の無い戦型だったのか…。

プロの主流ではないマイナーな△7二玉型なので仕方の無いところでしょうか。^^;

皆様がどういった戦型に興味があるのか是非伺ってみたいです。^^


ところで、木金に行われた王将戦第2局は、この間狙い筋を紹介した
▲3七銀急戦の超速攻でしたね。

残念ながら先手が勝ちましたが、後手もやれそうに思いました。

この形は正直あまり研究していませんが、朝日杯将棋オープン戦佐藤和俊五段が見せた浮き飛車から
銀バサミの構想はその後指されていませんがどうなのでしょう。

この超速攻については、研究してそのうち載せたいと思います。

今回は、▲3七銀急戦の郷田流を解説します。

以前、△4四銀型は後手苦戦と言ってしまったのですが、現状は郷田流対策の1番手に
なっています。

私の見る目の無さには呆れます。T-T

では、以前示したテーマ図12を起点に解説していきます。



テーマ図12からの指し手
▲7七銀△6二銀▲6六銀△8二玉▲3七桂△5一飛▲9六歩△9四歩(第1図)



◇美濃より中央志向

▲7七銀は次に▲6六銀の増援を見た手。
対する△6二銀は何気ないようで、先手が▲5八金右等ならば△5三銀▲6六銀△5四銀(A図)で、
中央の位が安定してしまいますし、△6四歩~△6五歩と銀を追い返される形になっています。



これは▲5八金右~▲7七銀の手順前後でも狙えるので、後手としては見逃したくない隙です。

▲3七桂は油断ならない手で、後手が不用意な手を指すと一気に攻め込まれます。

例えば、△3二金は▲2四歩△同歩▲4五銀△同銀▲同桂△5一角(*)▲4一銀△4二飛▲3二銀成△同飛▲5五銀(B図)

(*)△2二角は▲4一銀△4二飛▲3二銀成△同飛▲2三金(C図)。



これは、△7二金でも▲6一銀の割り打ちから同じ様な攻めを浴びてしまいます。

この変化は、銀の割り打ちによって、後手の飛車を5筋からずらす事が急所です。

それは、これから紹介するカウンターがなくなっているからです。


第1図からの指し手①
▲2四歩△同歩▲4五銀△同銀▲同桂△4二角▲5五銀△3三桂(第2図)



◇左桂を捌く

第1図からは2通りの仕掛けが考えられます。

まずは先程と同じ仕掛けですが、△3三桂と強く反発するのが定跡化された一手。

▲同桂成は△同角(D図)でカウンターが決まります。



D図から▲6六銀は△6五銀が王手飛車を見て強烈ですし、
▲5六歩も△6五銀~△7六銀で端攻めが脅威になります。

同じ様で、第2図から▲4六歩△4五桂▲同歩△3三角は▲4四歩(E図)で失敗します。

ここは▲4六歩△6五銀(F図)とするべきです。



先手は△7六銀を防ぐ事ができませんし、▲7七歩と追い返したくても5五銀が浮いています。

また、F図から▲2四飛は△4五桂が厳しい切り返しになります。

以下、▲2七飛△5七桂不成▲同飛△5六歩▲2七飛△5七桂(G図)で駒得確定です。



よって、▲2四歩~▲4五銀は難しいのです。


第1図からの指し手②
▲2四歩△同歩▲4五桂△4二角▲5五銀左△同銀▲同角△同飛▲同銀△3七角
▲2九飛△5五角成(第3図)



◇桂跳ねも失敗

▲2四歩~▲4五桂が第2の仕掛け。

しかし、結論から言えばこれもうまく行きません。

ここは△4二角と引いて▲2四飛と走られるのを防ぎましょう。

対して▲5五銀右は△4五銀と桂馬を取られてしまいます。

なので、▲5五銀左ですが、△同銀▲同銀では先程と同じ展開になるので▲同角と変化しますが、
バッサリ△同飛~△3七角で銀得になります。

更に、桂馬か香車が取れる展開で後手良しは明らかです。

しかし、これは▲2九飛・▲5八金右の二手が入ると先手が良くなります。

これについては、次に紹介する変化で紹介します。

第1図からの指し手③
▲2九飛△7二金(途中図)▲5八金右△1二香▲2四歩△同歩▲4五桂(第4図)



◇少しの形の違いが成否を変える

まず、▲5八金右を省いた途中図で仕掛けると、▲2四歩△同歩▲4五桂△4二角
▲5五銀左△同銀▲同角△4四銀▲8八角△4五銀▲同銀△3三桂▲3四銀△3七桂
(H図)で損します。



そこで、▲5八金右も必要なのですが、△1二香が大事な一手。

これは、あらかじめ角筋を避けているだけに見えて、重要な狙いがあるのです。


第4図からの指し手
△1一角▲2四飛△3二金▲3五歩△2三歩▲3四飛△4二金▲2四歩△3三桂
▲5五銀左△4五銀▲同銀△同桂▲5六歩△3三銀▲5四飛△5三銀(第5図)



◇辺境に角を引く

直前の△1二香は、△1一角の逃げ場を作る為のものでした。

私が知る限りでは、最初に指したのは里見香奈倉敷藤花です。

これは、二枚銀急戦でも出てくる手筋ですね。

▲2四飛と走られてしまいますが、△3二金で受かっています。

▲3五歩に△同歩は▲5五銀左△同銀▲3三歩△同桂▲5五角で(I図)大変なので気を付けましょう。



そこで、△2三歩と打ってしまってから△4二金で駒が使いやすくなります。

先手は▲2四歩ですが、取れば▲同飛~▲2三飛成でうるさくなります。

ここは△3三桂から左桂を捌くのが好着想で、▲2三歩成は△4五銀▲同銀△同桂
▲1二と△4四角(J図)で、左辺がきれいに捌けた後手が指しやすいでしょう。



▲5五銀左にも、△4五銀から自然に桂得してから飛車を詰まして後手良しでしょう。

以上で、▲3七銀急戦・郷田流対策の解説を終わります。

今回は、かなり体系的で理論的にまとめられたのではないかと思っています。^-^

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次回は未定ですが、▲7八金型も超急戦も中途半端なところで中断しているんですよね。

どちらかを紹介したいのですが、実は週末に引越しを控えているんです。^^;

すぐに更新できないかもしれませんが、ご了承下さい。

ご要望もお待ちしています。^-^

ちなみに、明日は私の誕生日です。^-^

恐らく残業ですが、順位戦C級2組を楽しみに頑張ります。^^;


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ゴキゲン中飛車▲3七銀急戦【郷田流の思想】

2009年12月12日 17時45分23秒 | ▲3七銀急戦(旧型)
先日のC級2組順位戦では、ゴキゲン中飛車が4局登場しましたね。

佐藤天彦五段-遠山雄亮四段 ▲3七銀急戦 先手勝ち
川上猛六段  -大石直嗣四段 ▲3七銀急戦 後手勝ち
村田顕弘四段-佐藤和俊五段 丸山ワクチン 先手勝ち
長岡裕也四段-豊島将之五段 丸山ワクチン 後手勝ち

勝率だけ見れば5割ですが、▲3七銀急戦の序盤はどちらも後手が良く見えました。
逆に、丸山ワクチンの2局は先手が良い将棋でした。

丸山ワクチンは、最近▲4七銀型を急がない構想が出てきて(参考図)
先手に手の選択肢が広がってきたようです。
▲3八銀と出れるので、後手も向かい飛車からの逆襲が難しくなっています。
これから再ブレイクするかもしれません。



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今回は郷田流の思想と題しまして、プロ棋界で流行中の▲3七銀急戦の狙いを見ていきます。

そもそも、▲3七銀急戦はゴキゲン中飛車が登場した頃に指されていた急戦策です。
他の対策が注目を浴びて指されなくなる中で、郷田真隆九段は指し続けました。
そして、独自の研究を加えていき郷田流と呼ばれる様になりました。

初手からの指し手
▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩▲2五歩△5二飛▲4八銀△5五歩▲6八玉
△6二玉▲7八玉△3三角▲6八銀(基本図)



◇郷田流の意思表明

先手の▲4八銀は、急戦なら▲3七銀急戦、持久戦なら居飛穴の含みを持たせています。

△5五歩にすぐ▲2四歩は△同歩▲同飛△5六歩▲同歩△8八角成▲同銀△3三角で、
直前に指した▲4八銀が悪手になってしまいます。

また、▲6八玉△6二玉▲2四歩では、△同歩▲同飛△5六歩▲同歩△3五角(A図)で、
王手飛車で後手大優勢。

ただし、▲7八玉△7二玉は今度こそ▲2四歩が成立します。
以下△同歩▲同飛△5六歩▲同歩△8八角成▲同銀(B図)となると、銀に紐が付いていて
△3三角は無効です。△2二飛ぐらいしか受けがなくて1歩損では後手面白くありません。

そこで、△3三角と受けます。

先手は▲6八銀として急戦の意思を見せます。
これで持久戦は無くなり、郷田流の意思表示になります。



先手は▲2五歩を保留する指し方もあり、二枚銀急戦も含みにできますが、
後手もそれを拒む手段があります。

初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩▲4八銀△8八角成▲同銀△2二飛
▲7七角△1二飛(変化図)という佐藤(康)新手です。



今回は郷田流の思想と趣旨が違いますので割愛させて頂きますが、
2009.7.4に行われた第3回朝日杯プロアマ戦では、類似局が3局も登場するなど、
大変有力な戦法になっています。

詳しく知りたい方は、角交換振り飛車 応用編 (最強将棋21)を参考にされると良いでしょう。


角交換振り飛車 応用編 (最強将棋21)

この佐藤(康)新手を解説している本はこの一冊だけです。
二枚銀急戦に苦しめられている方には、戦法の引き出しを増やす為に覚えておくといいでしょう。
他にも丸山ワクチン鈴木大介八段の解説付き棋譜が載っていて良書ですよ。^-^

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ここからは、従来の▲3七銀急戦(A)と郷田流(B)の違いを見て頂くために、
新旧2つの指し方を同時進行で見て行きたいと思います。


基本図からの指し手

(A)
△7二玉▲5八金右(1-A図)

(B)
△7二玉▲3六歩(1-B図)



◇一手省いて足早に

▲5八金右を省くのが、郷田真隆九段の工夫です。
一長一短がありますが、後手の迎撃態勢が整う前に攻めれるのが魅力です。

郷田流の▲5八金右省略の特徴を以下に示します。

メリット
・1手早く攻める事ができる。
・角交換からの△3九角が無い。

デメリット
・5筋の守りが弱い為、△5六歩と突かれた時に手抜けない。応援が遅れる。
・飛車交換になると△2八飛が王手になる恐れあり。

わかりやすくする為に、ここから後手は△5四銀を目指す方針で進めていきます。

1図からの指し手

(A)
△4二銀▲3六歩△5三銀▲3七銀△5四銀(2-A図)

(B)
△4二銀▲3七銀△5三銀▲4六銀△5四銀(2-B図)



◇銀の進出速度の違い

▲5八金右を省略した効果で、従来に比べて銀が1段早く進出できているのがわかります。
結論から言うと、2-B図の△5四銀は疑問で△4四銀が良く指されています。(テーマ図12)
このテーマ図12を次回以降の課題としたいと思います。

ここでは、以前も紹介した△6二銀引も有力だと思っています。(前回第2図)



2図からの指し手

(A)
▲4六銀△6五銀▲4五銀△5六歩(3-A図)

(B)
▲3五歩△同歩▲同銀(3-B図)



◇先手の主張通る

従来の▲3七銀急戦では▲5八金右が入っていた為、後手の銀の応援が間に合っています。
▲4六銀の瞬間に△6五銀がゴキゲン中飛車独特の捌き。
ここは本譜の進行以外に▲7七銀などもあります。
ここでは割愛させて頂きますが、後手が良くなります。
詳しくはゴキゲン中飛車戦法 (パワーアップシリーズ)を参照されると良いでしょう。


ゴキゲン中飛車戦法 (パワーアップシリーズ)

発行されて9年が経ちますが、今でも使える手筋が載っていますし、
次の一手問題14題と、参考棋譜10本があり充実の内容です。
私が9年前にゴキゲン中飛車を指し始めた思い出の1冊でもあります。^-^
12/12現在、上記リンクから中古で83円で購入できます。(!)

本題に戻り、従来の定跡に比べ郷田流では▲3五歩と攻める事ができます。
郷田流の長所が前面に出ています。

3図からの指し手

(A)
▲3三角成△同桂▲5六銀△同銀▲同歩△同飛(4-A図)
まで、後手良し。

(B)
△6五銀▲2四歩△5六歩▲3三角成△同桂▲5六歩△同銀▲7七角△6四角
▲4六歩△3四歩▲同銀△4六角▲2六飛△1九角成▲3三角成(4-B図)
まで、後手不満の進行。



◇1手の省略で大違い

旧定跡では後手の駒がきれいに捌けています。

4-A図では次に△5五角や△3九角、△4九角といった狙いがあります。
これを全て消すには▲5七歩と受けるしかないのですが、これでは先手悔しすぎますね。

冷静に△5一飛と引けば有効な攻めもありません。

対して、郷田流では4-B図から次に▲4三銀成~▲5三桂といった明確な狙いがあり、
後手の駒も捌けていません。先手有利の展開でしょう。

▲5八金右を省略して、後手の体勢が整う前に攻める…
郷田流の思想が分かって頂けたでしょうか?

大駒の交換に持ち込まれない様に、好機に△5六歩と突かれない様に…と
先手も持ち時間の短い将棋では難しい作戦ではありますがゴキゲン党には難敵です。


今回は以上です。

次回は、テーマ図11か12を紹介したいと思います。



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マイコミから今月発売の棋書がアップされていましたので、リンクを貼っておきますね。^-^
写真などが掲載されたら掲載したいと思います。
今からどんな内容か楽しみです。^-^

阿久津主税七段の本は、定跡書ではなく感覚を磨くための本の様です。
高橋道雄九段の本は、横歩取り△8五飛戦法の本で、新山崎流も載っているようです。

必ず役立つプロの常識
最新の8五飛戦法

ゴキゲン中飛車▲3七銀急戦(郷田流)対策【新構想!?】

2009年12月03日 20時28分09秒 | ▲3七銀急戦(旧型)
今回は予定を変更して、▲3七銀急戦(郷田流)について書きたいと思います。

というのも、最近はプロの将棋でも最近よく現れるようになり、
第1図について考えていたときに、ふと面白い手が浮かんだからです。^-^

この▲3七銀急戦は、今月の将棋世界 2010年 01月号 [雑誌]によると、
なんと10月は居飛車が7連勝しているそうです。(!)



図から①△4四銀や②△5四銀と受ける将棋が多い(②は少ないかも…)のですが、
①△4四銀は▲3七桂と跳ねられて苦戦していますし、②△5四銀も従来と比べて
▲5八金右の一手を省略している分、後手の銀が立ち遅れています。



ここで△6四銀は▲6六歩で負担になりそうだしな…。

でも、何かありそうな…。

お?これって、この間読んだマイコミ将棋BOOKS 遠山流中飛車持久戦ガイド
新手が応用できないかな?面白いかも!?

そこで考えたのが、③△6二銀引(第2図)です。



これは一見、5五の位を安定させに行った銀が逆モーションで、
方針に反しているようにも見えますね。
しかし、飛車先を軽くしつつ、戦場になりそうな位置の銀を
手順に王様に引き寄せたと考えてはどうでしょう?

先手は当然、5五の位を負担にさせようと▲7七銀と来る事が予想されます。
思いついたばかりで、まだ研究できていませんが、以下の手順でどうでしょうか?

第2図からの指し手①
▲7七銀△5六歩▲同歩△同飛▲5五歩△同飛!(途中図)
▲同銀△同角(第3図)



◇捌き成功

どうでしょうか。
これは飛車角を捌いて、囲いは鉄壁。先手陣は横っ腹がスカスカで壁角です。
これがどこまで通用するかこれから調べて行きたいと思います。
また、途中で▲2四歩の突き捨てを入れるとまた違った展開になります。

第2図からの指し手②
▲2四歩△同歩▲7七銀△5六歩▲同歩△同飛▲5五歩△同飛▲同銀△同角
▲2四飛△2二歩▲6六銀△1九角成▲2二飛成(第4図)



◇王手にならない!

長手数進めましたが、先程と異なるのは先手の飛車が捌けている点。
しかし、△6二銀引の効果で▲2二飛成が王手になっていません。
以下、△3二銀と固めて▲1一龍△2九馬と進めてどうか。
これも検討課題です。

あと、3筋も突き捨てて攻める手段もありそうですね。

第2図からの指し手③
▲2四歩△同歩▲3五歩△同歩▲同銀△5六歩(第5図)
▲3三角成△同桂▲5六歩△同飛▲2四飛△4五桂(第6図)



◇天使の跳躍△4五桂

急戦志向である以上、早繰り銀で銀を五段目まで進出させるのは当然あるでしょう。
5七への利きが減ったこの瞬間に△5六歩と捌いてどうか。(第5図)

ここで▲同歩は△8八角成~△5六飛で次に王手飛車を見せられて厳しいので、
▲3三角成は必然でしょうが、△同桂で手順に左桂が躍動。
以下、▲5六歩△同飛でまた△5五角が見えているので、▲2四飛はこの一手でしょう。

そこで△4五桂(第6図)が気持ちの良い跳躍で、△3三角と△5七桂成を同時に受けられません。

なので▲2一飛成と攻め合ってくるでしょうが△5二金左で良いのか…。
△3一歩もありそうですね。
底歩が利くのが大きいので指せそうですが、これも要検討でしょう。

これらを研究したいので、▲5八金右超急戦はひとまず中断させて下さい。
これが通用したら面白い事になりそうです。^-^

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先程も述べましたが、今日は将棋世界 2010年 01月号 [雑誌]の発売日です。^-^



読んだらゴキゲン中飛車関連の記事について述べたいと思います。^-^