
さて、前回に引き続き、ビジネス英語の話。あ、ビジネス英語と聞いて身構えないでくださいね。ビジネス英語(商業英文=ビジネスレターが主)も“日常英語”の一分野で、決して恐れることはない……通販で買い物をするのもビジネスですから。
もちろん、ビジネスでは特有の用語 technical terms や符牒(合言葉のようなもの)、スタイルがあるのも事実ですが、それはあくまで狭い意味のビジネス英語で、それを学ぶのなら実践の場での Practice makes perfect.「習うより慣れろ」が最善だと思います。
でも、ひるがえって、“ビジネス日本語”という言い方は聞いたことがありませんよね。私も“ビジネス日本語”を勉強した記憶もありません。つまり、世に言うビジネス英語は Social English とでも言い換えられると思っています。社会的なコミュニケーションにおける英語表現です。そのつもりで“ビジネス英語”の表現も参考にしていただければと思います。
●Dear Mr. ...: / Dear Ms. ...: / Messrs.:
日本では会社宛てのビジネスレターの表書きを“御中”とするように、宛て名(個人名)を特定しない手紙がありますね。
アメリカ式ですと、個人を特定しない手紙はダイレクトメールを除いてほとんどありません。国際社会で日本人はよく“顔が見えない”と言われますが、個人よりも組織で行動する日本人の特性がこのことからもうかがわれます。
アメリカですと、手紙の宛て先が個人に特定されていないと、その手紙は郵便係の判断でゴミ箱へ直行となりかねませんのでご注意。
手紙文は、日本語の“拝啓”にあたる Dear Mr. ...「~様」で始めます。Dear Mr. George W. Bush: というふうにフルネームできちんと書きます。男性は Mr.: で、女性ならば Miss(未婚)と Mrs.(既婚)の区別をつけない Ms.: (発音はミズ)の使用が定着しています。なお、ごくまれですが、個人名を特定せず「担当部署」宛てに書く場合は、Messrs.:(発音はメサーズ)で始めます。フランス語の Monsieur(ムシュー)の複数形 Messieurs から来ていますので、Sir の複数形だと思えばいいですね。
●We are writing in response to ... / We are sending you ...
日本語でもそうですが、ビジネス英語もていねいな書き方にはもって回った表現が多くなります。We are writing in response to your letter of Jan. 14, 2003.「2003年1月14日付けの貴下からのお手紙についてご返事いたします」とか、We are sending you a photo-copy of our contract.「契約書のコピーをお送りします」というように、現在進行形を使うのも特徴的です。
in response to ... は「~への返事として」。日本では複写の“コピー”は「コピー」で通りますが、英語で単に copy ですと「冊子・本」の意味にもなりますので、photo-copy と言わないといけません。
●May we take this occasion to remind you ...
ちょっと長いのですが、これももって回った英語表現。May we take this occasion to remind you that we have not received your payment yet. 直訳すると「当社が貴社からのお支払いをまだ受け取っていないことについてご留意たまわる機会を持たせていただいてよろしいでしょうか」……
ははは、これじゃ英語のほうがよほどこねくり回していますよね。occasion は「機会、折」で remind は「思い出させる」。平たく言えば「お支払いがまだですのでお忘れなく」ですが。でも、こういう表現がビジネス英語には多いのも事実です。
●Please let us know ...
Please let us know ... も短いのですがひとひねりしています。「お知らせください」ということで、ふつうには Tell us ... でいいわけですが、直訳的には「私たちに知らしめてください」。と、このように受動態も頻繁に使われます。
Your consideration will be greatly appreciated.「ご配慮たまわれば幸甚に存じます」。こういう“こねくり方”でもったいぶろうという下心は、洋の東西を問わないのでしょう。



